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06話「ハルハフハンド強襲」

 無線通信が入る。エンジン音と空電音に加え、酒焼けしたカスれ声のせいで聞き取り辛いが、確かに聞こえた。

――こちら航空部隊。対空火器の破壊に成功。敵対空火力を殲滅した

 目標はハルハフハンド城。資料では、その西側には用水路があり防砂林の維持に回されている。用水路以東、ハルハフハンド周辺は鑑賞目的に植えられた木と花以外はほとんどない。灌木、雑草、野花がまばらに生える程度。防砂林の維持と、西の砂漠からくる馬賊対策のためにハルハフハンド城が存在する。周囲は荒地で乾燥しており、作物の生育は家庭菜園程度に留まっている。また砂漠化を防ぐため家畜の放牧はハルハフハンド周辺では許可されていない。軍馬の生育のみが限定的に許可されている、そうだ。

 何百年と続くこの伝統がハンダラット国を乾燥地帯の三流部族集団から二流小国に昇格させたのだ。その伝統を打ち砕く。次にまた異世界か何かへ行くとしたら、本当の地獄なんだろうな。

 ベルガント社空挺部隊第四小隊副長に任命されたソルがエンジン音に負けない大声で喋る。

「訓練の成果、我々の技量と勇気を見せる時が来たぞ!」

 ベルガント社並びに業務提携を結ぶ各社から供出された、貴重な元空挺部隊員を中心にした空挺部隊が編成された。中型輸送機四機、各機に歩兵一個小隊。大型輸送機には装甲工兵一個小隊と各種器材。

 我々ヴェルンハント連隊はその筋の隊員が多く、操縦士を除けばこの機内には同じ連隊の者だけ。それもほとんどがあの凶悪な人相のダルクハイド族だ。自分もだが、目立つ肌を隠すために顔料で顔を迷彩色に塗っているため、これから戦闘に赴く凶暴な蛮族にも見える。

「総員降下用意ッ! 隣同士で装備に異常が無いか最終点検を行え!」

 狭い機内、各隊員は立ち上がって装備を点検し合う。砂漠迷彩柄布カバー付きヘルメット、砂漠迷彩柄の野戦服、落下傘背嚢、化学防護用のガスマスク入りの袋、携帯食糧やサバイバルキット等々が入った背嚢、騎兵小銃、予備弾倉、銃剣、手榴弾、携帯無線機。これでも軽装。それでも全身タイツのような軽量型の化学防護服を着ているから暑い。ゴツい雨合羽のような物にくらべれば天と地の差があるが、暑くて蒸れるのには変わらない。股間部位にふくらみが設けられているが、そこも苦しい。こういう時だけ女が羨ましい。

 連一は隣席のサイと装備点検を行う。サイはヘルメットが嫌いなのか代わりに帽子を被っている。髪は短いし、髪型が崩れると嫌だとかいうふざけたこともないだろう。着地の時に頭を打ったらどうするんだ、と声を掛ける者もいないので何も言わないが。

「降りるだけで終りじゃないからな! 降りて勝って帰るまでが作戦だ。段取りの最終確認。降下して着地、信号弾、俺達第四小隊は黄色だ、それを目印に集合。高台にある西側の城壁を爆撃で崩してもらったら工兵に道を作ってもらい、宮殿区画へ突入して広場を制圧した後、宮殿内部へ突入して制圧。全ては演習通り、以上だ」

 サイに点検してもらった後、もう一度装具の付け忘れや締め忘れが無いか自分で点検する。ヘルメットの紐が緩んでないか確かめた後、なんとなく股間を弄る。日本刀は持ってこようかと考えたが、どう考えても落下傘降下には邪魔なので置いてきた。

「ノルグ=バキロイ小隊長から降下する。次にお前等、そして小隊副長の俺様ソルハージ=ダレシュだ。順番守れよ! 疑問があったら今の内に言え! カッコイイ俺に惚れたからどうしようかって相談でも乗るぞ!」

 ノルグが笑いながらドデカい手でソルの頭を引っぱたく。ヘルメットがあってもその衝撃は半端ではないだろう。

 ノルグは銀髪無精髭面の男前で、身体はデカく、身長は連一の一・五倍以上あり、体重はたぶん三倍以上。背中が分厚く広い。

「よし、後は何も無いな! 行くぞお前等、目にもの見せてやれ!」

 ブザーが鳴り、機内に設置された小型の信号機が赤から青に変わる。ソルは隊員の肩をバシバシ叩きながら最後尾へ行く。

 輸送機の後部ハッチが開く。遥か下にはハンダラットの地が広がっている。

「降下だ、行け! 行け! 行け! 行け! 行けェッ!」

 ノルグが飛び降り、そして順番通りに輸送機の後部ハッチから身を投げ出す。

 自分の番になり、早歩き気味に数歩進んで、不安定な姿勢にならないように飛び降りる。

 激しい空気の流れに揺さぶられ、落ち着いてから姿勢を制御し、先に降下した者との衝突がないように速度と位置を微調整。低高度降下なので直ぐに落下傘を開いて減速を始める。操縦索を使い、位置を調整して出来るだけ障害物の少なそうな位置を選ぶ。

 狙った地点へ落下傘を操作して降下する訓練を何度も行った。幸いこの世界には魔法による治療があったので骨折し放題。世話にもなった。自分の小隊からではないが死者も出た。しかしそんなもので訓練や作戦が中止されるほどこの世界は甘くない。テレビや新聞を見てもそうだが、この世界、どこでも人が露骨に消耗品扱いだ。

 頭の中で簡単に着地時の受身の取り方を思い起こす。怪我は何が何でも避けるように意識する。地面に足がつき、ワザと転がって衝撃を身体全体に分散しながら起き上がる。

 地面は乾いた栗色の土。あとはまばらに生える雑草。 

 落下傘を概略畳み、落下傘背嚢に押し込んでから地面に置く。回収は後だ。

 腹に抱えた背嚢を外してから背負う。騎兵小銃を取り外し、折り畳み銃床を開いて固定、担ぐ。騎兵小銃の装弾数はニ〇発。

 赤、緑、青、黄、紫の五色の信号弾が打ち上げられる。各小隊の集合地点だ。黄色を目指して走る。

 装甲工兵隊のニ脚工作車が三連の落下傘で降下し、減速用の使い捨てロケットブースターで爆音を響かせ始める頃には、黄色の信号弾に導かれて集まった第四小隊の面々が見え始める。

 そのニ脚工作車が地面を揺らして受身を取って着地し始める頃には、第四小隊と合流して仲間と手と手を打ち合う。

 装甲工兵隊の衝撃吸収材に覆われた機材が落下傘付きで着地を始める頃には、第四小隊員一人も欠けることなく集合を終える。隣の第二小隊も無事集合を終えたようだ。

 ハルハフハンド城が目前に迫る。西側は岩肌剥き出しの崖になっており、その上の高台には低い外壁に囲まれた宮殿。その外壁が爆発し、石片と土埃を撒き散らす。ジェットエンジンの爆音が響き、戦闘機が上空を通り過ぎる。外壁を飾っていたこの土地の神像らしき彫刻が崩れ落ちる。

 演習通り、装甲工兵隊のニ脚工作車は機材の梱包を解き、架橋機材を組み立てる。

 また戦闘機が上空を通過し、爆発音、煙が上がる。こちらからは直接視認できないが、第一小隊と第三小隊が陽動のために、航空爆撃で崩した城壁北側からハルハフハンド城に突入を開始したのだ。銃声も鳴り始めた。

――第ニ、第四小隊、ガスマスクを着用しろ

 装甲工兵隊から無線が入る。ノルグが大声で「ガスマスク着用!」と繰り返す。胸にぶら下げた袋からガスマスクを取り出し、装着。

 手作業をしながら二脚工作車は、ロケット発射装置に取り付けたロケット弾を数発発射、宮殿の上空で炸裂して白煙をばら撒く。煙幕弾と催涙ガス弾だ。

 そうしている間に架橋機材が組み立てられ、仮設橋が完成。攻城梯子に見たてたそれの手すりに第二、第四小隊各自が掴まり、二脚工作車が持ち上げる。訓練で何度も行ったが、未だに玉袋が縮み上がる。発想が無茶苦茶。傾斜は可能な限り緩くしてあるそうだが、そういう問題ではない。

「誰だよこんな作戦考えた奴」

 思わず独り言を言うと、連一のケツを叩いたソルが答える。

「お城の中庭に着地できるような名人がいればいいんだけどな」

 一言添えて屁をこいて応える。

「屁しか出ねぇ」

 ソルは連一のケツの割れ目に指先を突っ込む。

「今度お小遣いで社長さんにヘリ空母買ってやろうな」

 連一はケツを締める。

「そうだけどよ、これじゃ中世の攻城戦じゃねぇか」

 ソルは手を引っ込める。

「ここはそうだろ」

 仮設橋の端が静かに崖の上に乗る。手すりに掴まりながら城へ突入開始。

 崩れた外壁を踏み越え、白煙立ち込める宮殿へノルグが真っ先に突っ込む。肩に身の丈の両手剣を担いでいる。こちらも崩れた外壁を踏み越えて突入する。まずは慎重に広場の生垣へ一旦身を隠し、そして広場の様子を伺う。

 敵歩兵達は乾燥地域の民族衣装を軍服に改良したような服、そして赤い帽子を被っている。小銃を持っていなければ兵士なのか民間人なのか少し見分け辛い。その兵士達は白煙を吸って咳き込み、マトモに応戦出来る状態にない。それでも目を瞑った渋面で応戦しようとする者もいるが、ノルグが両手剣をブン回してあっという間に殺すのでどうということもない。

 顔を手で擦りながら悶える敵歩兵の一人を狙い、騎兵小銃を撃つ、倒れる。他の仲間も射撃を始め、激しくはないが銃声が途絶えることなく鳴る。

 不意の白兵戦闘に備えて騎兵小銃に銃剣を装着。生垣を越えて石畳を蹴って走り、敵歩兵の一団に向けて五発連続で射撃。自分が撃った弾が当たったかは分からないが何人か倒れる。

 真っ先にダルクハイド族達は敵歩兵に迫り、彼等の持つ山刀で斬り殺し、素手で縊り殺す。おもちゃみたいに腕を掴んで床に叩きつけて蹴り殺す。

 負けじと走る内、目前に迫ってきた敵歩兵。顔を掻き毟るそいつの腹を銃剣で刺し、一発撃って蹴飛ばす。

 その隣の敵歩兵、横面を銃床で殴る、後頭部を殴る、倒れたら首の後ろを二回踏みつける。

 咳き込み、涙と鼻水を流しながらこちらへ銃口を向ける敵歩兵へ騎兵小銃で射撃、腹に命中、身を折って倒れながら床を撃つ。

 宮殿の格子窓に敵歩兵。そこへ狙いを定めて騎兵小銃を撃つ。一発目、窓の縁に当たる。ニ発目、何処に当たったか分からない。窓に飛び込んだ?

 走って格子窓の下へ近寄り、安全ピンを抜いた手榴弾を投げ込む。爆発、格子窓から噴き出た爆風が白煙を掻き乱す。

 第二小隊が隣の区画へ移動するのを見やりながら、広場を見る。白煙は少し薄くなった。敵歩兵はほとんどが地に伏している。

 外壁の上を見ると、こちらへ銃の狙いをつける敵歩兵。

「あ」マズい。

 その敵歩兵を空から降りてきた甲冑姿の有翼人が蹴りを入れて倒す。そして手に持った剣で二回刺す。

 あの有翼人は各小隊には属していないが、この空挺部隊へ配属された情報部の奴だ。誰とも親しく口を利くような感じじゃないことぐらいしか覚えていない。

 手を振ってお礼をすると、外壁から飛び降りてこちらに近づき、そのまま素通り。アニメのロボットみたいな格好の奴で、全身を細身の甲冑、そして翼は何百何千枚も板金を重ね合わせたような鎧に覆われている。よくこれで空が飛べるものだ。

 肩に装着した携帯無線機から音声が入る。無線と、素通りをする奴の口から同時に同じ声が聞こえる。女か男か分からない声。

「第四小隊各員へ、ハルハフハンドの有力者とその家族と思しき人物等が宮殿の三階、宗教的な一室に護衛とともにいる。可能な限り生け捕りにすること」

 地面が揺れる。崖を登攀してきたニ脚工作車が広場に立つ。最初からこいつを突っ込ませればと思うが、背が高くて攻撃を受けやすい上に装甲が薄いとくればそれも仕方が無い。

 宮殿へ頭部を向けるニ脚工作車。その頭部に装備された回転式機関銃が唸り声を上げて機関銃弾を宮殿の窓という窓全てに撃ち込み始める。上からガラスや破片や何やらが降り始めたので建物から離れる。強烈な火力だ。おまけに肩には無反動砲を担いでいる。あんなのぶっ放す気か? 建物がぶっ潰れそうだ。

 無線を使う必要もない声でノルグが呼びかける。

「宮殿に突入するぞ! レイヴが扉ぶっ壊して、俺が先頭になって突っ込んで目に付く奴等を片付ける。ソル! お前はケツについて確実に部屋とかその辺色々制圧しろ!」

「了解!」

 ソルが返事。演習でもそうだったが、これがノルグのやり方だ。俺が突っ込む、後はお前等何とかしろ。

「よしサイ、一人選んで来い!」

「ん」

 サイが呼ばれて前に出る。歩兵には珍しい女で、体格も大柄。一発で鼻圧し折って失神させるだけはある。そしてサイに連一は襟首掴まれて引っ張られる。一緒に来いってことらしい。

「よしいいぞ。レンイチは昨日ちゃんとセンズリこいてきたな」

 他の隊員含み笑い。ノルグは連一の頭、ヘルメットをグリグリ撫でる。

「ユナキとサイで二日分やってきた」

 他小隊員吹き出す。サイの反応を確認。無表情、微動だにせず。

「おいセンズリって知ってるか?」

「知らない、やって見せてよ」

 あの有翼人が鎚矛を手に持ち、弾薬を取り付けて重厚な扉をぶん殴る。砲撃を受けたように吹っ飛ぶ。こいつレイヴって名前なのか。それはさておきこの糞女め。

「おいそんなこと言って俺がビビると思ったか。ちゃんと見てろよ」

 両手剣を盾にしながら宮殿内に突っ込むノルグが叫ぶ。

「いいから来い!」

 重なる銃声、扉の破片を受けて負傷者が見られるものの、待ち構えた敵歩兵達による一斉射撃。ノルグの両手剣に銃弾がぶつかって弾ける。

 弾除けになったノルグに感謝しながら、敵歩兵へ一発射撃、肩に命中、ニ発目、顎に命中、崩れ落ちる。

 そのノルグを踏み台にして、片手に山刀を持ったサイが跳躍、敵の中へ飛び込んで、頭を蹴って、頭をカチ割って、顔を掴むついでに目に指を突っ込みながら体勢を立て直して格闘を続行。

 ノルグが両手剣で一閃、五人の頭を一振りで斬り砕く。

 小銃を捨て、刀を抜こうとする敵歩兵の腹へ銃剣を刺す、一発撃って蹴飛ばす。

 後続の仲間が次々に敵歩兵を射殺。隣の敵歩兵が振り下ろす刀を騎兵小銃で受け止め、お返しに股間を蹴り上げる。身を屈めたところで鎖骨の内側に銃剣を差し込んで一発撃って蹴飛ばす。

 次に腰砕けになって銃口をこちらに向ける敵歩兵を撃ち殺そうとすると、もう血塗れになったサイが山刀の柄でそいつの頭を殴る。頭が凹んで目玉が飛び出て耳から血が噴き出るのが良く見えた。類人猿みたいな筋力があるに違いない。

「後ろに任せて次二階だ!」

 ノルグに従って二階に続く階段へ足を乗せる。

――第四小隊、二階の動きが活発だ、再度制圧する。上には上がるな、上がってるなら下がれ。十秒待つ

「何だ?」

 足を止める。ノルグが肩に肘を乗せ体重をかけてくる。クソ重たい。

「おいサイ、待て」

「ん」

 二階へ上がろうとしたサイを止める。顔が不満で一杯。殺し足りないとかか?

「おいサイ、伏せ」

「あ?」

 睨まれる。おお怖い。

「おいサイ、お手」

「あ」

 手の平を差し出す。サイに手を引っぱたかれる。クソ痛い。

「良い根性して……」ノルグの声が建物、身体全体を震わす爆音にかき消され、粉塵と熱風が二階から一階へ吹き抜ける。ニ脚工作車が肩に担いでいた無反動砲を撃ち込んだらしい。

「よし次二階だ!」

 ノルグに従って二階に続く階段を進む。何時でも撃てるように銃口を前に向けて。

 二階へ行くと、機銃掃射と砲撃で引き千切られた壁と敵歩兵の一部が散乱している。あとは鼓膜を破られてのたうっている者か、恐慌状態になって暴れている者か。

「ここも後ろに任せるぞ」とノルグがのたうち回る一人を踏み潰しながら言うので、適当に一人を狙って撃つ。脇腹に命中。

 サイは一人の頭を片手で掴んで持ち上げ、壁に叩きつける。手を離すと崩れ落ちるそいつの後頭部が見るからに変形している。

 次、三階へ向かい、上がりきる手前でノルグが腕を伸ばして制止。サイが壁を蹴って抗議。随分と血気盛ん。

「焦るな」ノルグは肩に装着した携帯無線機のボタンを押しながら「工兵、三階に機銃掃射。すぐやってくれ」

――了解

 三階へ改めて機銃掃射が加えられる。思わず身を屈めるほど機関銃弾が壁に撃ち込まれる音が響く。元の世界を思い出す。

――いいぞ。第四小隊進め

「了解」

 ノルグに続いて三階へ踏み出す。柱、壁の陰に隠れて機銃掃射をやり過ごし、憔悴し切った敵歩兵を狙って射撃。

 一人目、一発目外す、二発目肩に命中、三発目はこちらを向いた顔面。鼻が弾け飛ぶ。

 二人目、一発目胸へ命中、撃ち返されるがこちらに命中せず、二発目胸へ命中、倒れる。

 三人目、引き金を引いても反応無し。三人目の敵歩兵の銃口が確実にこちらへ向き、銃声、敵歩兵の腕から血が飛ぶ。敵の銃弾が床の絨毯を抉る。同じ銃声、敵歩兵の頭から血が飛んで倒れる。弾倉を取り替えながら身を低くする。

 サイは騎兵小銃を片手で撃って残りの敵を始末。拳銃じゃねぇんだぞ、何て腕してやがる。

 ノルグが剣や足で敵を吹っ飛ばして通過したあとを慎重に、花瓶や壷が置かれた台の陰に隠れながら進む。改めてみると、機銃掃射でボロボロだが、値が張りそうな物だらけだ。

 穴の開いた名画らしき物を踏み、千切れた敵歩兵の胴体からはみ出た内臓を踏んで進み、三階の敵の抵抗が無くなったと見て身を上げて歩く。

 ノルグは肩に装着した携帯無線機のボタンを押しながら「レイヴ、その宗教的な一室とやらの扉の前に来たぞ」

 レイヴの声が携帯無線機から流れる。

――こっちに合わせて。天窓から突入するから、ガラスが割れる音がしたら突入

「了解だ」

――第四小隊、一応言っておく。室内での発砲は厳禁。再確認する、有力者家族は捕虜とする。以上

 後続の隊員が到着する。頑丈そうな扉の両側、上下の蝶番へ一人ずつ銃口を向ける。ノルグは扉のまん前で屈伸。

 連一は何時でも扉が開かれて銃剣で突っ込めるよう待機。サイ、ダルクハイド族達も山刀を手に持って待機。

 ガラスの割れる音、蝶番を銃撃で破壊、ノルグがドロップキックで両扉を吹っ飛ばす。室内へ走り出す。

 降り注ぐガラスと陽光、影を落として剣を振りかぶるレイヴ、怯える敵歩兵と有力者家族。悪魔みたいだ。

 瞬発力の違い、あっという間に敵中に飛び込むサイ、後続のダルクハイド族。相手が反応する前に十数歩の距離を駆け、山刀で斬り殺し、掴みかかって首を圧し折る、引き倒して腕をねじ切る。

 こちらも負けじと一人目、銃剣を腹に刺し、一発撃って蹴飛ばす。発砲厳禁? だったかもな。

 二人目、突き出される刀を銃身で打ち払う。翻る刀身が迫る、後ろへ倒れながら銃口を向け、避けて、撃って腹へ命中、膝を突いて顔を連一の足にぶつけて倒れる。

 起き上がろうとすると頭を刀で殴られる。ヘルメットを被っているので斬られはしていない。

 騎兵小銃を手放しながらそのまま起き上がり、三人目の袖を掴んで引っ張り、胸倉を掴んで引き寄せ、上半身を振りながら足を蹴り払って投げ倒す。後は馬乗りになって顔を殴る。抵抗するそいつがガスマスクを掴んで引っ張り、ズレる。その手を掴み、指を一本ずつ、三本圧し折る。ズレたガスマスクを直しながら片手で目を狙って殴り、直してから両手で交互に殴り、赤紫に変色し、血が飛び散り始め、顔が惚けたような感じになったところで止める。

 周囲の戦闘も一頻り終り、泣き叫ぶ有力者家族とやらは見たところ怪我はない。その内の一人、男の子と目が合う。大層怯えていると思いきやそうでもない。こちらをしっかりと憎悪の目で睨みつけている。

 うるせぇ、こっちは仕事だ。

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