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01話「修羅道へ」

 整然とした突撃準備ラッパが鳴る。曇天の黒々とした雲の下、横列隊形で並んだ騎兵隊、常歩で進む。重装騎兵が前列、軽装騎兵が後列。

 砲爆撃で瓦礫の山と化した街。今まで食い止めた敵、迎え討った仲間、巻き込まれた人々の死体が折り重なる。流れ出た血の溜りは乾き、赤黒い染みになる。カラスとハエ、我先に死肉へ集る。嗅ぎ慣れた腐臭は今更どうということもない。

 背後の、鉄筋コンクリートの城壁も古い石壁も崩れ落ち、山に持った土さえも穿り返された。遮る物は我々だけだ。

 自然に速歩へ。死体と石片を踏みつけ行く。死肉喰らいのネズミが驚いて逃げ出す。

 これで最後だ。敵が最後ではなく、こちらが最後だ。勝てる見込みも無く、脱出する手段も無く、屈服する気も無い。ではどうするか? 華々しく突撃して散ろう。

 小銃を構えながら前進。上下する馬の背と手元。照準をつける目標、前方の浅い塹壕から身を乗り出したばかりの敵歩兵の一団。暗褐色の軍服、軍帽、銃剣を付けた小銃。砲撃もせずに塹壕から身を出すとは油断のしすぎだ。

 騎兵隊は射撃を開始。撃たれる敵歩兵、一人膝を折っては、二人後ろに倒れ、次に次に射殺。一人頭五発程度を撃って突撃準備射撃とし、鞍の鞘に小銃を収める。

 苛烈な突撃ラッパが鳴る。抜刀、刀を肩に担ぐ。鼻の穴が開いて息が熱くなる。

 駆歩。身体が揺れる、装具がぶつかり合ってガチャガチャ騒ぎ、馬蹄が地面を揺らす。

 刀を前に突き出す。馬の腹に蹴りを入れて合図、襲歩に加速。更に装具と馬蹄が騒ぎ出す。

 突撃、目標前方の敵歩兵。撃たれるが、アルム合金の甲冑が銃弾を弾く。前列の、人も馬も甲冑に身を固める重装騎兵は盾になって敵の銃弾を受け止めるのだ。

 口を開け、下腹から気合を絞り上げる。

 体当たり、敵歩兵の一団、前列は岩に砕ける波のように弾き飛ぶ。

 倒れた敵歩兵を踏み潰しながら、右に刀を振って一人目が突き出す銃剣を打ち払い、返す刀で頭を割り、分け入って左に刀を振って二人目の頭を割り、分け入って右に刀を振って三人目の頭を割り、転びかけた四人目の肩を斬り、小銃を取り落とす五人目の顔を斬り、逃げ出す六人目を追って頭を割る。

 士気が崩壊し逃げ出す敵歩兵の一団。転んだ敵歩兵を踏み潰しながら後列の軽装騎兵が脇をすり抜け、追撃を始める。

 砲声が鳴り、それは次第に増え、間髪消えて連なり始める。

 軽装騎兵が逃げ帰ってくる。土と石片混じりの爆煙が壁になって彼等を追撃、次第に肉片が混じる。敵諸共味方を砲弾で吹き飛ばすとは下手糞な連中だ。勝ち戦なのに誤射で戦死なんて哀れすぎる。

 爆煙の壁が迫り、中に入り、鼓膜が音に耐え切れなくなる。幾つもの破片を甲冑が弾き返す、爆煙の壁を抜ける。先無き命が運良く助かった。落ち着き払う馬は兵器同然のシネイリャ種、度胸は人間の比じゃない。

 前方を見る、敵歩兵と軽装騎兵は肉片になって残骸に入り混じる。左右を見る、重装騎兵は一部が無事で他は直撃で粉砕か、大きな破片を受けて戦死か、致命箇所に破片を受け戦死。後方を見る、一部分を粉砕された友軍歩兵の集団。まだ旗を掲げ、挫けることなく前進中。

 また前方を見る、敵の四輪装甲車が敵歩兵を伴って前進。車体の屋根から半身を出す機関銃手が射撃を開始。敵歩兵が使う口径の小さい小銃とはわけが違う。機関銃弾はアルム合金の甲冑でも金属板に当たれば凹んで中の肉が弾ける。鎖帷子に当たれば鎖と肉と骨を引き千切る。生き残りの重装騎兵は、発射された機関銃弾が火花を散らして血飛沫を飛ばすと同時に数が減り出す。

 刀を収め、小銃を抜く。常歩、前へ進んで自らが模範行動を取らねばならない。小銃で構えながら前進。上下する馬の背と手元。敵歩兵へ向かって射撃。生き残りの重装騎兵も小銃を構え、ほとんど当たらない銃撃を開始。お返しに撃ち込まれる機関銃弾で肉を潰されて死ぬ。

 一部の重装騎兵が装備していた対戦車ロケット弾発射器が使用される。一発一発が貴重な対戦車ロケット弾が発射炎を引いて飛び、何発か外れてようやく四輪装甲車に命中、爆発、装甲を溶かして中を焼く。

 小銃、対戦車ロケット弾発射器による騎乗射撃。多少の痛手は負わせても、手の届かない勝利には決して近づかない。

 散る火花、出所を見る。機関銃弾に左腕が潰された。痛みは感じるが気にならない。飛ぶ血飛沫、身体が傾く。他に痛みはない。馬が撃ち殺された、ゆっくり倒れ、身体に衝撃。

 戦死した愛馬の背を蹴りながら胴と地面に挟まれた脚を引き抜き、起き上がって刀を抜いて振り上げる。

 敵歩兵は前進を、四輪装甲車は後進を始め、左右から新たな敵歩兵の一団が前進してくる。

 最後の一人になっても前に進んで殺してやる。前へ一歩踏み出し、敵とも仲間ともつかない肉を踏み潰して更に一歩、歩き出す。

 横に人の気配。見れば、友軍歩兵を率いる指揮官。拳銃を振り上げている。その後ろに旗を掲げる旗手、そして後ろに散発的に小銃を撃ちながら進む友軍歩兵達。共に進む。

 敵歩兵が射撃姿勢を取ってから小銃で一斉射。胸にニ、三発、アルム合金の甲冑が弾き返す。後ろの友軍歩兵は、百人以上は死んだだろう。撃ち殺されても仲間の死体を踏み越えるのが我々だ。足を止めない。

 回復し始めた聴力が、歩兵指揮官の射撃号令を捉える。友軍歩兵が小銃で一斉に射撃し始め、敵歩兵がいくらか倒れる。

 歩兵指揮官の「突撃ッ!」号令。走る、叫ぶ。

 全力で走っているつもりだが、流石に軽装の歩兵に追いつかれる。歩兵指揮官と旗手が横から前へと行ってしまう。

 敵歩兵は射撃の合間を縫って銃剣を着剣し、迎撃態勢を取る。

 後ろにいた歩兵と肩を並べる。もっと気合を入れろと念じ、それが通じたか疲労が飛んで肩を並べる以上に下がらなくなる。

 肩を並べる歩兵は銃剣を前に突き出して槍衾をつくる。悲鳴と絶叫と怒号が混じる中、銃剣で作る槍衾がぶつかり、同時に刺し合う。

 刀を振り上げ切りかかる。銃剣が前歯を折って口内に刺さる。振り下ろした刀は相手に届かない。

 声にならない殺意を口に出して最後の一太刀入れんと振り上げる。悲鳴を上げる相手の小銃が銃声を上げる。


 道の脇に雪が残る林道を走って逃げる。冷たい空気で肺が冷え、熱い体は冷える暇がない。後ろから飛んでくる銃弾が樹皮を剥ぎ取り、枝を砕き、木を圧し折る。

 走り、蹴る地面の土はしっかりしたものだが、恐怖のせいで足元が掬われそうになる。銃弾は銃弾でも、一発で身体が千切れる機関銃弾。こちらに狙いをつけて撃っているわけではないのが不幸中の幸い。手に持つ、普段は頼れる小銃が玩具に感じる。

 予想していなかったとかいうふざけた対空砲火を受け、黒龍江での空挺作戦が失敗。その生き残りである日本軍の八十田連一は敗残兵となって満州を、ワルシャワ条約機構軍の勢力圏真っ只中を偶然出会った民兵の爺さんと逃走中。

 この爺との付き合いも一ヶ月程になる。馬の小便啜ったり、腐った野菜食って下痢したりと楽しい思い出ばかりだ。反共活動をしながら遥々タリム盆地からやってきたウズベク人らしいが、話せば話すほどインチキ臭い。

「糞爺ィ! てめぇが飯盗ろうなんてほざくからこうなったんだぞ!」

「ワシは偉大なるティムールの血を引く。つまりチンギスハンの血も引く。それは本能だ」

「じゃあ二十万のモンゴル軍でも連れて来いや!」

「いるだろ後ろに」

 というような会話は一度や二度じゃない。流暢な日本語を喋りやがるので、妄想癖のある日本兵の可能性も否定できない。

 逃げる内に、見るからに寂れた農村へ到着。この辺り一帯の住民は避難した後だから余計にそう見える。

「良い所に来た。肥溜めに隠れるぞ」

「ふざけんなアホか!」

 トタン屋根のボロ小屋の隙間を縫って進む。農具や籠が散乱しているので踏まないように音を立てないようにする。ぶっ放してきやがっているので気にする事でないかもしれないが、用心に重ねる用心が命を救う。たぶん。

 拡声器を通したロシア語で何か、たぶん投降を呼びかける声が響く。せめて英語使え、全く分からん。

「じゃあ心中か。その前に玉取れ、穴さえありゃいい」

「死ね糞っ垂れ」

 爺さんが指差す先、木の板が敷かれた肥溜めが一つ。

「若いもんに譲る。ワシは他探す」

「大丈夫か?」

「何とかなる。外に糞が跳ねないようにゆっくり入れ。蓋もちゃんと閉めろ」

 肩を一瞬、しっかり掴まれる。手の平から言葉が伝わって来る気がする。爺さんは去る。

 機関銃の連射音が再び鳴り始め、木とガラスと錆びた金属の破片が空中を舞う、急いで伏せる。機関銃弾がボロ小屋の壁をあっさりと貫通し、周辺の物を破壊。痛そうな弾ける音が鳴り続ける。これじゃ見えない位置にいようといまいと関係ない。あの破片の一部になるのはごめんだ。

 こんなに撃たれてまだ被弾していない自分が凄い。弾除けのおかげか?

 腹に手を当てる。中学生になったばかりの親戚の娘の、初めて生えた下の毛が入ったお守りつきの千人針。流行り病で亡くなって以来永遠の処女になった彼女の物だ。これ以上の弾除けは無い。

「糞っ垂れ」

 手から小銃を離し、その吊り紐を肩に掛ける。何か手に持ってないと物寂しい。降参しているようなものだ。見っともない。

 左手で蓋をそっと開ける。荷物も一緒に肥溜めに突っ込まなきゃならないか。生き残っても後が大変だ。

 背嚢をまず肥溜めに入れてから、見るのも嫌な糞溜りへ右手を突っ込む、と思いきや硬い感触。平らな石を触っている――おかしい――それに暖かいし湿っぽく、何より清潔っぽい。周りを見渡すと公衆浴場? しかも女の裸だらけ。

 支えていた木の蓋の感触も消えた。立ち上がり、お湯がついた手の平を撫で回す。直ぐに黒い泥が溶け出す。汚いもんだ。

 現状把握に努める。風呂、若干湯煙、裸の女達、みんながこちらを注目、キャーとかあと意味不明な言語。綺麗なもんだ。

 アラブ人みたいな少女が、こちらを指差して金切り声を上げて喚き立てる。そいつの耳は何故か直角三角形。ムスリムの天国か? 改宗した覚えはないが、肥溜めに入る直前に弾に当たったか?

 夢ではないかと頬を何度か叩くが普通に痛い。あの爺はウズベク人らしいから、ムスリムの可能性がある。神が取り違えた? 地獄に落ちるよりいいが、天国に逝くような真似はしたことがない。

 着ている野戦服が蒸し暑くなる。嫌な事は忘れて風呂入っちまうか。ワーキャー騒いでいるが知ったことか。

 浴槽にそのまま入る。その浴槽に入っていた女達が一斉に逃げ出す。お湯に全身の汚れが一気に流れ出し、濁る。お湯なんて久しぶりに触る。顔を洗う、脂と泥がこびりついているのが分かる、気持ち良い。

 一人だけ逃げ出さず、顔はしかめているが、立ち上がるだけの女が一人。胸がデカくて腰がくびれていて脚が長い。鼻が高くて唇赤くて首が細い。黒い髪の毛も癖が無くて綺麗な上に長い。作り物か? こんな美女見たことないぞ。

 壁の穴からお湯が流れ出ている。まともな水を飲んだのは大分前、透き通った水は美味そうだ。美女の横を通ってお湯を飲む。美味い。

 ヘルメットの下、ボサボサに髪が伸びた頭が痒くなってきた。昨日は虱で痒くて寝られなかった。ヘルメットを外して放り投げ、浴槽に潜って頭を掻き毟る。髪の毛がかなり硬い。それが段々と柔らかくなる。

 息継ぎのために浴槽から頭を出すと、誰かが投げ返したヘルメットが頭に当たる。誰がやりやがった、と思いながら浴槽から出る。怯えたり逃げたりする女達の中、こちらを挑戦的に睨むのが一人。刺青が入っていて、かなり筋肉質。

 殺意。大したことじゃないが撃ち殺したくなったが、でも完全なる丸腰だ。脅かしてから一発ぶん殴るか。

 そいつは低い姿勢で迫る。一瞬身体が硬直、いい度胸、やっぱ殺す。

 肩に吊った小銃を構え、銃身を手でカチ上げられ失敗。小銃を手離しながら下段蹴り、避けられ、膝の裏を蹴られて尻餅。襟首掴まれ倒されて仰向け。

 目が合う。ニヤけたそいつの口から見えるのは獣のような牙。地獄の鬼か?

「あ、腋毛」

 眼前に迫る掌底打ちの一発。


 やられた。頭が痛い、脳震盪? あと鼻が痛い、折れた? 体の節々が痛い、間違いなく疲労だ。

 何時の間にかベッドの上にいる。しかもなんていうことか、奇跡か何かか、柔らかさすら感じられる清潔なベッドに横たわっている。状況が不連続だ。記憶が何度も飛んでいる。気絶しまくっているのか? 

 どうも寝た気分だが、夢でも見ていたか? どこからどこまでが夢だか分からないが、あの公衆浴場は臨死体験か?

 天井には蛍光灯という文明を感じさせてくれる物がくっついている。捕虜になったらしいが、電気が通っているよう病院まで丁重に運んでくれたとは嬉しい限りだ。鼻を触ろうとするとギプスか何かがついているし、怪我の処置もしてくれている。

 そしてベッドの脇で、分からない言語で二人が会話をしている。ロシア語っぽくはない、中国語でもない、韓国語でもなければ英語でもない。シベリア系のマイナーな言語か?

 身体を起こすと体中が更に痛む。片方を見ると、白い日よけの頭巾と口の覆いをつけた異国風の、目だけを見れば美女。もう片方は三つ揃えの背広を着た、先程の地獄の鬼にそっくりな男――言葉を話す度に開ける口からは牙が見える。臨死体験は今現在も進行中なのか?

 美女の方が何事か喋る。短い単語で胸に手を当てて頭を下げたので、挨拶?

「何だ? えー、こんにちわ?」

 美女は口の覆いを取る。風呂場にいた作り物のような美女と確認。そして考えるような仕草をしながら別の言語で喋り、「分からん」「駄目」などなど返すが通じない。そして何回か言語を変えながら喋っている内に日本語を喋る。

「あー、言葉、言葉! これだ、この言葉なら分かるでしょ?」

「おお、うん、分かる」

「改めまして、私の名前はユナキ。通訳の仕事をしているわ。隣の彼はルドガー。傭兵部隊の隊長よ」

 ユナキという美女がこちらを見つめたまま黙り、首を傾げる。そもそも何人だこいつら? ルドガーという男は獣みたいな牙付きだし、ユナキの方は白っぽい民族衣装でその下には背広を着ている。どこの国の格好だ?

「通じてるかな? 彼方の名前を教えてくれるかしら」

「えー、俺は日本国陸軍第一〇五空挺連隊所属、八十田連一兵長。条約に則った扱いを要求する、って感じでもないか、な?」

 ユナキが不明な言語でルドガーに喋りかけ、それに対して長々と返事? 頷いてからユナキが日本語で喋り出す。

「彼の言葉を通訳するわ、ちゃんと聴いてね……初めまして八十田連一。未知の情報に囲まれて混乱するのは当然だが、君は現状を理解しなくてはいけない。寝ぼけているという言い訳は必要ない。事の始まりから教えよう。世界の崩壊とも創造とも言える、無数の個別の世界にあった人や物がある日突然一つの世界へ飛ばされる現象が発生し始めた。初めの混乱期には人や物が土地ごと、文明が丸ごと飛ばされてきた。その後の収束期に入ると土地ごと飛ばされることはなくなったが、集団や建造物規模のものはまだ断続的に飛ばされてきていた。現在の安定期とも呼べる時期に入ると、人や物が時折何気なく飛ばされてくる程度に収まっている。君はその一つということだ……分かるかな?」

 腕を組んで考える。嘘臭い、分からない、何だそりゃ? 考えても分からない。いやあれだ、漫画とか映画のように考えるんだ……現実味が無いとはこのことか。やっぱり死んだな。

 連一が持っていた小銃を持ってルドガーが喋り、ユナキが通訳。

「この小銃、生憎この型の銃弾は、ニ十年は前に在庫が払底して使用されなくなっている。工場か設計図がこの世界に飛ばされていたのなら量産されていたのだろうがね。これは悪いが頂く。技術研究所へ送れば良い値がつく。銃弾が無いから納得してくれ。売った金額の半分、君が我々の仲間になるというならその金額を君の銀行口座を開設してそこに振り込んでおく……あらお優しいこと」

 多少は現実味を帯びたことを喋ってくれる。それに仲間に誘っている?

 次に、連一が持っていた日本刀を持ってルドガーが喋り、ユナキが通訳。

「こちらは日本刀だな。ラパーナ刀に並んで古美術品としての価値があるものだが、これはそういう物じゃないな。そちらの世界の近現代の技術が使われた武器のようだ。これは返すよ……勿体無いと私は思うけどね。さ受け取って」

 ルドガーに差し出された刀を受け取る。手に取ると少し落ち着いてくる。

「身体、顔つき、使い込まれた装備の数々に惹かれる。君のような優秀な兵士を我々は欲している。面倒は見る、ともに傭兵として戦わないか? ただ野垂れ死ぬよりはいいはずだ。選択の余地はないと思っている。君は今、完全に独りだ。救えるのは我々だけだ……だって、どうする?」

 信じがたい。死んだと思ったらまた兵隊やれだと。地獄かここは?

 人差し指を立てて注目させる。

「一ついいか?」

 ユナキが指先を見る

「何かしら」

 人差し指でユナキの胸をつつく。

「あんたいいおっぱいしてるよな」

 パンッとお返しの平手打ち。たまんねぇな。天国かここは!

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