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フェイズ・ジョーカー  作者: ナイトレイド
次元放課後のワールドエンド
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六月十七日

急展開、かつ、新キャラ!

六月十七日 PM13:05 一年四組教室。



「ナイト君、どこか調子でも悪いの?」


 休み時間になり学食に向かう生徒やおいしいパンを確保する為にチャイムと同時に外に飛び出して戦場に向かった生徒達がいる中で、相馬はぼーっと黒板を見ていて、見かねた剣立が心配して尋ねる。


 彼の視線の先の黒板には何も書かれていない。


 既に授業が終わって委員長によって書かれていた内容は全て消えている。


 けれど、彼は机の上にノートを広げて手にはペンが握られていた。


 授業が終わったというのに授業中のような姿勢を保っている事に心配して声をかけたようだ。


「んぁ・・・あれ!? いつの間に授業終わったん」


「五分前に終わったよ・・・どうしたの? 授業中も上の空だったみたいだけど」


「・・・・色々あったんだ」


 げっそりした表情で相馬はちらりとカバンの中に押し込んである二枚目の手紙に目を向ける。


 翌朝、ポケットの中に入れていた手紙をどうするか考えながら下駄箱の中を見ると手紙が一通入っているのを発見。


 いやーな予感がしつつも中から取り出して封を開けた。


 中には手紙と数枚の写真らしきもの、昨日のよりも過激じゃないよなとびくつきながらまずは写真をみる。







 ピロリーン!








 相馬ナイトは『羽鳥天月のプロマイド』を手に入れた。




 いやいやいや!と首を横に振って浮かんだ考えを否定しつつもう一度、写真を見る。


 そこには羽鳥天月がむひょうじょうのまま腰の後ろに手を回して体を少し折り曲げながらカメラに目を向けていた。ご丁寧に本人の直筆サイン入り。


 手紙には一言だけ、“大事に持っていて”と。


 プロマイドって、アイドルか何かかと思いつつも写真を胸ポケットにいれているのは男のサガ。


 だけれど、どうして彼女がこんなことをしてくるのかわからず、戸惑ってばかり授業も禄に聞けていない。


 剣立に心配されるのも当然といえよう。


「何かあったの? 僕でよかったら相談に乗るよ!」


「いやー、相談にのって欲しいことではあるといったらあるんだけど・・・怒ったりしない?」


「僕が怒るような事なの」


 そういうわけじゃないんだが、と言葉を濁す。


 女の子について相談をしようとしているわけだが、剣立は相馬の口から女の子の話題がでてくるのをあまり好しとしていない。それどころか不機嫌になる。


 故に、この話題をしていいのか悩んでしまうわけで。


「もう一度いっちゃうけれど、怒らないでくれる?」


「わかったよ」


「じゃあ、早速言うけれど、昨日から女の子に奇妙な手紙を渡されてさ」


「殺す!!」


「どういう反応を・・・・って、待て!」


 外に飛び出そうとした剣立の腕を掴む。


 離してよ!と暴れる瞳には殺意という二文字がビシビシと伝わってくる。これは本気で相手を殺しかねない。


 しばらく掴んで外に飛び出さないのを確認して手を話すと、ふーふーと猫みたいな息をはきながらも視線は相馬に向けられたまま。


「・・・・・手紙の内容は?」


「これです」


 あまりの剣幕に相馬はポケットの中から手紙を差し出す。


 ひったくるように手紙を読む剣立は急にピキーン!とフリーズしたみたいに動かない。


「・・・・・ねぇ」


 唐突に、新月の夜に街灯がない街の一角のイメージが浮かんだ。


「ナイト君は、このどこの馬の骨とわからない女と結婚するの?」


「はい!?」


「これ!」


 剣立はばん!と机の上に叩きつけるようにして手紙を見せる。


 そこには婚姻届があった。


「しまったぁぁぁぁぁ! 出すほう間違えたぁ」


「うふふふふふふふふふふふふ、この僕を差し置いてナイト君に手を出すとはいい度胸をした泥棒猫もいるもんなんだね。いいよいいよいいよぉ! 草の根わけてでも見つけ出してこの手で塵芥にしてあげるよ・・いや、海の藻屑にしてみせる。さぁて、女の名前とクラスを教えてくれないかなぁ」


「より一段と濃くなった殺気を隠していってもらえると嬉しかったなぁ、お前が何をしようとしているのか一発であてれる自信があるぞ。てか、村雨を取り出そうとしない!」


 服の隙間から姿をだしている刀を見つけ少し慌てながら相馬は剣立を落ち着かせようとする。


 こういう場合の対処法を知っているけれど、緊急時以外は使いたくない。


 使いたくないのだけれど、周囲の視線が痛い。クラスメイトも剣立の雰囲気がヤミーレベルに匹敵していると感じ取ったのかもしれない、気づかれないように早く何とかしろという無言の圧力が篭った視線をぶつけてくる。


「・・・剣立」


「なにかな~」


「どんなことがあっても俺はお前の友達だしずっと傍に居続けるから少しくらい落ち着いてもらえると嬉しいな。でないと大事な話が出来ないんだ」


「え? やだよぉ、みんながいる前で」


「発想の転換だって、クラスメイトという大勢の人がいるまえでこんなことをいっているんだ。俺が他のヤツの所に走るわけがないだろ~」


 ハッハッハッハーと全部棒読みでいっていたのに剣立は夢見る乙女のように体をくねくねと動かして何かをしきりに呟いている。


「そうだよねぇ、どこの馬の骨とわからないヤツなんかにナイト君が走ることなんて絶対にないんだ、適正年齢になったら婚姻届を手に入れて僕がナイト君と―――」


 とても早くて聞き取れないが。


 その間に机の上に置かれている婚姻届を回収してポケットにねじ込む。


 羽鳥天月をみつけて早急に返す事を胸に誓って。


『緊急の呼び出しをします』


 剣立が早く現実に帰ってこないかなぁと待っていると頭上から放送がかかる。


相馬そうまナイト君、安倍彦馬君、剣立鳴海君、至急、四階にある生徒会室に来てください。繰り返します、相馬ナイト君、安倍彦馬君、剣立鳴海君、至急、四階にある生徒会室に来てください』


「・・・・呼び出し?」


 放送でこっちの世界に戻ってきたのだろう剣立が首をかしげて不思議そうにする。


 これには他のクラスメイト達も気にしていた。


 滅多なことがない限り放送で生徒が呼び出されることがない。


 理由としては余計な注目を集めるのを阻止する為となっている。


「ねぇ、二人とも生徒会室に呼ばれるようなことでもしたの?」


 気になる人代表として笹瀬川が尋ねてくるが、なにか問題をやらかした覚えがない剣立は否定のため首を横に振る。


 そこで二人は相馬の肩がぷるぷると震えていることに気づいた。


 あちゃーと笹瀬川は額に手を当てる。


「ナイト君? どうしたの」


 彼の震えている理由がわからない剣立はどこか体調を崩したんじゃないのかと心配して尋ねる。


「ちょっと、放送委員に抗議する」


「えっと」


「俺の苗字はそうばであってそうまじゃないんだよ! バカヤロー!」






















 暴れ牛みたいに放送室に突撃しようとする相馬を宥めるのに少しの時間を費やし彼らは四階にある生徒会室へと来ていた。


「静かだね」


「実験室とか、あまり利用されない部屋が集中しているからな」


 実験室や音楽室といった授業がないと人が限り訪れる事のない四階。


 沈黙が場を支配していて、人の気配がまるでしない。


「何で呼ばれたのかわからないけれど、さっさと終わらせるか」


「うん」


 人の気配がしない教室に怖気づきながら生徒会室と書かれているプレートのドアをノックする。


 どうぞ、という返事が聞こえて相馬はドアを開けた。






―――眼前に拳が見える。






「えっ」


 マヌケな声をだした直後、相馬の足は地面から離れて体は後ろに吸い寄せられるように壁に打ち付けた。


「ナイト君!?」


 目の前で友達が殴り飛ばされた事に驚きながらも地面に座り込んでいる相馬の下に駆け寄る。


「こんなのを避けられないとは拍子抜けにも程があるぜ!」


 きっ!と剣立は相馬を襲撃した相手を睨む。


 ドアの向こうには一人の少年が立っていた。


 髪を金髪に染めて、耳にはピアス、改造制服を纏っているその姿には不良という言葉がぴったりだろう。相馬を殴った手にはごつごつした指輪がいくつかついている。


 改造制服で手を拭いながら金髪の不良は馬鹿にしたような鼻音を鳴らす。


「何をやっているのですか?」


 不良がしてやったりという顔を崩して廊下に目を向ける。


「何をやっているのですか?と聞いているのですよ。長谷川君」


 黒の国友高校の詰襟の学生服を規律正しく首まで絞めている。整った顔立ちに切れ目はクールな印象がある。やってきた相手に金髪の不良は顔をしかめた。



「決まってんだろ?噂の魔法使い様の実力がどいういうものか測ったんだよ。期待はずれだったけれどな」


「キミは・・・すぐに保健室に運びましょう。鼻が折れているかも」


「・・・いや、大丈夫」


 心配している剣立達の前で鼻を押さえていないほうの手を挙げて問題ないという意思を表示する。


「しかし・・」


「ほら、折れてないからさ」


 そういって鼻をおさえていた手をどけて折れていないことをアピールする。少し赤くなってはいるが、鼻血もでていない。


「そのようですね、申し訳ありませんでした」


「・・・えっと、貴方は?」


「あぁ、申し訳ありません。自己紹介が遅れましたね。私の名前は火町塔志郎ひまちとうしろう、ここの生徒会のものです」


 名前を聞いて、相馬は思い出す。


 二年生の中で特進クラスに匹敵するほどの成績を有しているというのに通常クラスに席を置いている変わり者。


 成績優秀で、さらにスポーツ万能、だというのにそういうところを表に出さず相手が誰だろうと丁寧に接する事で上下の学年問わず人気の高い生徒。

火町塔志郎――という男。


「先輩でしたか、すいません。タメで話してしまって」


「いえ、私はそういうところは気にしないので大丈夫ですよ」


 小さな笑みを浮かべて火町は二人に中に入るように促す。


 生徒会室は通常教室と同じくらいの大きさだが学生が使う勉強机は置かれておらず長方形の机が中心を囲むようにして並ぶ。


「よぉ、遅かったな」


 並んでいるパイプ椅子の一つに腰掛けてだらんと机の上に足をのけている髪を真っ赤に染めて、紺色のブレザーのボタンを全開にしてだらしない格好をしている安倍彦馬がいた。


「お邪魔してるぜぇ」


 適当なところにお座りくださいといわれて相馬と剣立は安倍の隣が空いていたので着席する。


 金髪の不良も着席した。


「・・・火町先輩、隣の人って、誰ですか?」


 着席したところで相馬は彼の隣に着席している闇色のセミロングの少女が机の上に広げているポテトを頬ぼっていた。記憶が確かならさっきまで彼女はここにいなかったはず。


「彼女は曙リーサさんです。私と同じ生徒会メンバーです」


 ぺこりと会釈して曙はポテトを頬ぼる。


 会話に参加する気はないようだ。


「まずは、我々生徒会は普通ではありません」


 いきなりのことに剣立と相馬の二人は首をかしげてメンドくさそうに舌打ちをする。


 それらの反応を確認しながら火町は説明を始めた。


「このことを説明する前に、相馬ナイト君。私達はキミが五人目の魔法使いであるということを知っています」


「っ!!」


 火町からの告白に相馬は目を見開いて、椅子を少し後ろにずらした。


「そして、剣立鳴海君。六月の頭にキミが六文銭を使って事件を引き起こした事も知っている」


 六文銭という言葉に安倍がなにぃ!と身を乗り出す、隣の剣立の体が小さく震えていた。


 相馬はかばうようにして。


「その事件はもう警察の方で解決しているはずです。穿り返してなんのつもりですか!」


「不愉快に感じたのなら申し訳ない。ですが、私達がこちら側の人間だということを理解してもらう為にも貴方達が隠している事実を知っているという必要がありました」


「は! そんな既に終わった事を羅列せずに自分達の正体をさっさと説明したらどうだ?え?飼い犬さん達よぉ」


「おい・・」


 安倍の言葉に椅子にもたれて会話に参加していなかった金髪の不良が目の前の机を蹴り飛ばす。


「あまり調子にのってんじゃねぇぞ。陰陽師風情が俺らに勝てると思ってんのか?」


「はっ、“異世界帰り”だからって全員が最強というわけじゃねぇぞ」


 金髪不良と長谷川の二人が目の前でバチバチと火花を散らした。


 一触即発の空気が漂ってくる。


 今にも爆発しそうな雰囲気に火町は様子見なのだろう、介入する様子を見せない。


「あの・・・いま、異世界帰りって、変な会話が聞こえたんだけど・・」


 剣立がおそるおそる尋ねてくる。


 あ?と顔を向けて安倍が生徒会の三人を目で睨むようにしながら。


「この学園の生徒会に所属している奴ら全員、国の飼い犬で」








 忌々しそうに。









「異世界にいって帰ってきた連中だ」







「異世界から・・・帰ってきたって?」


「そのまんまの意味だ、こいつらは俺達が住んでいるところとは異なる世界に飛ばされて帰ってきた奴らばかりだ」


「安倍君の言うとおり、我々はそれぞれが全く別の世界に飛ばされて、帰ってきた人間です。そして、国友高校生徒会は異世界帰還者アナザーワールドサバイバーで構成されているのです。そして、我々の活動目的は異世界からこの世界にやってくる者を保護・・もしくは」


 途中で言葉を区切り、周囲の反応を確かめながら話を進める。


「本題に入りますが、先日、この世界に異世界から吸血姫が顕現したことが確認されました」


「それは本当の話か!?」


 火町の言葉に安倍が過剰に反応した。


「えぇ、顕現と同時に我々生徒会が確保しようとしたのですが、あまりの強さに撤退してしまう結果に終わってしまいました」


「あの・・・吸血鬼、って、映画とかにでてくる人の血を吸う吸血鬼ですか?」


 おずおずと手を挙げて剣立が質問する。


「いいえ、あれは人の血を吸って自身の腹を満たすという比較的自己満足の塊なので、我々のいっている吸血姫とは別の存在です。我々の言う吸血姫とは太古から存在するヴァンパイアなのですが、彼らは空腹を満たす為に血を吸うのではなく、力を使う為に吸血するといわれています。

 一般の人が知る吸血鬼は噛まれたら同じ吸血鬼になるとかにんにくが弱点とかいわれていますが、吸血姫にはそういった弱点は少ない・・強いて言うなら聖なる力に弱いというところです・・。奴らの力は強大、吸血して発揮した力は大陸一つを消滅させるほどのものといわれています。お恥ずかしい話しながら我々だけでは吸血していなくても歯が立ちませんでした。そこで、相馬ナイト君」


 火町は真っ直ぐに相馬の目を見ながら。


「キミの魔法使いとしての力を借りたい。人の死という根幹の理すら捻じ曲げるといわれている魔法使いの力があれば、吸血前のヤツをなんとかできると思うのです」


 真剣な表情の火町は心の奥を覗き込もうとするような瞳を向ける。相馬はその視線から目をそらす。


 話を聞いている限り、そんなおそろしい相手に自分が勝てるわけがない。


 巻き込まれた先で色々な相手と戦ってきたがあれは不意打ちに近いものだから次に戦ったら絶対に勝てるというものじゃないし、自分のような平凡には問題が大きすぎる。


「はん、魔法使いの力を借りたいなんざ、異世界連中の力の底が見えたな!」


「安倍彦馬君、剣立鳴海君」


「みなまでいうなって、俺の力を借りたいっていうんだろう?ほしけりゃな」









「我々のやる事に関わらないで下さい」










「・・・あ?」


「え?」


「確かに、貴方は優秀な陰陽師、剣立君は高ランクの剣使い《ソードマスター》、ですが所詮、その程度の実力です。我々が相手をする吸血姫は貴方達では赤子を相手にするようなものです」


 はっきりと、戦力外だからお前たちは関わるな、と火町は告げる。


 剣立はどうすればいいのかわからず相馬の顔を見て、プライドの高い安倍はというと椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。


「あの・・・・俺は遠慮しておきます」


 今にも飛び掛りそうな安倍の横で手を挙げたのは相馬ナイト。


「一応、理由を聞かせてもらってもよろしいですか?」


「俺は、はっきりいうとこの力を手に入れたのは偶然に過ぎませんし、進んでそういう厄介ごとに参加するとかできません・・なにより」


 立ち上がって生徒会メンバーを見渡して。


「人の過去をべらべら話すような連中を信用するのが出来ない。だから、俺は貴方達に協力するつもりはありません・・・行こう、剣立」


 剣立の腕を掴んで相馬は生徒会室をでようとする。


 ドアに手を伸ばした瞬間、相馬は顔を少し動かした、瞬間、壁にパイプ椅子がめり込んだ。


「おいおいおいおい、雑魚が偉そうに上から目線で語るんじゃねぇよ。いくらてめぇが世界で五人しかいない魔法使いだろうとなぁ、ここにいる以上は俺達のルールに従うしかねぇんだ、うだうだいってねぇで俺らに従えや!」


 金髪不良が拳を構えて顔面に放つ。


 普通の人が繰り出す拳よりもかなり速い。


 けれども。


 相馬は手を前に出してその拳を受け止める。


 ごつごつした指輪が掌にあたって激痛がくるけれど、表情を崩さずに。


 空気が一変、相馬は拳を握ると金髪不良の顔を殴り飛ばす。


 殴られた相手は声をださず反対側にあるホワイトボードに体を打ち付ける。


「人を暴力で屈服させようとするならぶっ飛ばすぞ」


「無理強いをするつもりはありません・・・ですが、我々の邪魔をしないように気をつけてください。邪魔をするならば私達も貴方を敵として認識しなければならないので・・・魔法使いと戦うのはデメリットが大きすぎるので」


「警告、どうも」


 ぺこり、と会釈して相馬と剣立の二人は生徒会室を出て行く。


 少しして椅子を蹴り飛ばし安倍も教室を出た。


















「国友高校・・・正確にいうなら、学校の土地にはゲートと呼ばれる代物が眠っている」


「ゲート?」


 生徒会室を後にした相馬は安部から国友高校の秘密を教えてもらっていた。


 彼らの説明でわからないところを補足してもらっている。


「ゲートに関してはわかっていないところが多い、はっきりしているのはゲートはこことは全く異なる文化、人々が生活している複数の世界と繋がっている。生徒会の連中はたまたまゲートに巻き込まれて異世界に飛ばされて帰ってきた奴らだ」


「さっきから、帰ってきたといっているけれど、ゲートで飛ばされた人たちが帰ってくる方法が確立しているの?」


「いいや」


 剣立の質問に安倍は首を横に振る。


「絶対に帰ってこれる方法は確立していない・・・戻ってきた奴らの話によ

るとだな契約するとこっちの世界に帰ってこれたそうだ」


「契約?」


 戻ってきた話によると彼らは飛ばされた先で何かと契約を結んだ事によりこの世界に帰ってくることが出来たらしい。そして。


「帰ってきた奴らはそれぞれが人外的な力を手にしていた。そういう連中で構成されたのがあの生徒会だ」


「そうはみえなかったけどな」


 人外といわれても正直、ピンとこなかった。


 相馬の中で人外というと外見幼女なのに百歳を余裕で超えていたり、気がついたら背後で現れるメイドなのがいい例だと思っている。だから、彼らが人外だとは考えられなかった。


「しかし、どうするつもりだ?」


「何がだよ」


 安倍の言葉に嫌な予感がした。


「吸血姫だ。探さないのか」


「探す必要があるのか? 生徒会の連中が探すのに俺達がやる必要はないだろう・・・いっておくけれど、金のために行動するつもりは毛頭ないからな」


「今回はそれだけじゃねぇよ!」


「じゃあ・・なんだよ?」


「奴ら、俺のことを雑魚扱いしやがった。そんな奴らに見返してやる・・・俺らを雑魚扱いしたらどうなるかってな!」


「・・・俺を巻き込むなよ。第一、剣立はそういうことやる気が」


「僕もやるよ!」


「あるぇ」


 おかしいなという顔をして相馬は隣の剣立を見る。


 さっきまでびくびくしていた筈の剣立鳴海は背後が燃えているような感じのオーラのやる気を放っていた。


「人外だからって、あいつらに隣にいることを決められてたまるか」


「お前、わかるヤツじゃねぇか!」


「奇遇だね!」


 ばしっ!と二人は互いに手を合わせる。


 え、どういう状況!? 戸惑っている相馬を置いてなにやら剣立と安倍の二人が盛り上がっていた。


「頭痛がしてきた・・・・」


 額を指でおさえながら相馬はその場に座り込みたかった。


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