その四(影と姫の情報整理)
2014/1/3 ヴィルの年齢を17歳から21歳へと変更し、それに伴い文章を改変しました
ヴィル・アララギ。
フィアナ達の今いる王国の王子であり、フィアナ・カルラの主シャアラ・スウハの婚約者候補。
金茶の髪はさらりとしていて、その肌は外に出ないと聞いている割に褐色だ。これは国の人種的なもので、特にヴィル王子がその傾向が強いらしい。
その目が青い色合いをしていることは知っていたが、直接見ると絵姿よりも若干濃く思えた。
彼の話は隣国であるこの国にもあまり届かない。本人も国自体も彼の情報を余り流したくないようだからだ。
何でも幼い時に誘拐されたことがあり、それからというもの公務も厳重警備で行われているらしい。
絵姿は回っているが、大々的に会に出る等の積極行為は慎んでいる。だから実は昔フィアナがシャアラとして参加した会でも、フィアナは王子に直接会ってはいない。
元々身体の方も丈夫でもないそうで、その日は王子らしからぬ事に欠席だったのだ。
恐らくフィアナと同じ立場の影武者でもいるだろうとフィアナは思っていたが、そちらの方が出席することもなかった。
一言で言うなら美形である彼は今や21歳となり、本来ならとっくに婚約者がいてもおかしくない年齢であるが、今まで引き籠っていたこともあってか確定した婚約者はいなかったようだ。
正直身体も弱く、夜会などに出席しないという変わった王子だと聞いていたが、実際会ってみるとやけに気配りが利くし、完璧にもてなしをしてくれ、聞いた王子像よりずっと大人びている様子。
ただ、優しそうに見えるが、どことなく考えている事が読めない節がある。
次に寡黙な侍従、リュウ。
この人物こそシャアラ・スウハ姫が最も嫌っている人物である。
長めの黒髪と銀縁眼鏡というなんとも硬派すぎる出で立ちをしているそうで、その目はヴィルと似たような青らしい。
らしい、というのはまだフィアナは直接彼に会ったことがないからである。だからヴィルとも比べようがない。
シャアラの口調は忌々しげで「お綺麗な顔をして、あの口から出るのは罵詈雑言だけよ」とまでいう程である。
とりあえずシャアラが認める美形ということは分かった。やはり彼に関してもこれまた情報が少ない。彼のことに関しては、その絵姿すら見たことがないから完全にシャアラの記憶が頼りである。
「姫様、他に情報はありますか」
「終わりよ。アイツのことなんて知りたくもないし」
顔を歪めて足を組む姫に、フィアナは嘆息した。書き出した情報を見直すが、役に立ちそうにはなかった。
「情報は大切ですから、なんでもいってくださらないと」
「とにかく、やっぱりアイツの傍はいや!もし結婚とでもなったらアイツとは一生付き合っていかなきゃいけないかもしれないでしょ?!」
「それは王子つきの方ですから仕方ないです」
「絶対いやっ!」
姫にここまで言わせるとは、なかなかの猛者だとフィアナは考えながらも相槌を打った。
「分かりましたから。なら姫様も破談にする方法を考えてください」
「簡単よ。嫌われるように失礼なことをすればいいの!」
「するのは私ですよ。それに国の体裁もあるといったでしょう」
相手方の王子がもっと嫌な奴ならやりやすかったのにとフィアナは嘆息する。
それにフィアナはシャアラとヴィルをくっつけることを諦めていなかった。
初対面としては上々の印象だし、温厚そうだ。これならシャアラというじゃじゃ馬――いや、お転婆――いや少々気性が激しい姫を御せるかもしれないとまで思っていた。
なので姫の言う通りにさっさと破談にすることはしたくなかったし、難しそうだとも思っていた。
できれば今は様子見をしたいといえばシャアラは苦虫を潰したような顔になった。
「姫様、まだ時期尚早です。できるだけ波風立てずに終わらせたいでしょう?」
姫としてのシャアラの振る舞いは今フィアナに見せているほど粗暴ではない。だから上手くやればフィアナとシャアラが途中変わってもばれはしないだろうし、ばれたことはない。
なのでフィアナの中での最善の策は、まだ様子見であるうちはフィアナが姫としての役割をこなし、ある一定の時を見計らってシャアラと変わる。
王子とは段々会う頻度を減らし、王子に遠いものから本物のシャアラと会わせていく。様子次第ではリュウ。リュウにも怪しまれなければヴィルに会わせる。
そしてそのまま円満解決というのが最もいい策に思えた。
しかしリュウとこれからのヴィルの様子次第では本当に破談にするつもりである。
猫を被っている可能性は十分にあるからだ。
それはこちらにも言えることなのだけれど、とフィアナは苦笑する。
「とにかく、今は様子見ですね」
話は全てそれからだ。
動く時のために、情報を集めてほしいとシャアラにも頼み、フィアナは動き出す。