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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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お兄ちゃんが来た 5

 ルピナスの指摘した通りだった。冒険者3人の内、ひとりは顔色が悪く、腕を押さえている。

 不審に思ったアセビ一行が近づくと、頭をかいて苦笑いをした。


「だせえところ見せちまったな! おめえたちには今度改めてお礼させてもらうぞ!」

「昼飯ぐらいは奢るからよ!」

「へへ……」

「いや、それよりも」


 シャガが言葉を遮り、腕を押さえている冒険者を指差した。


「そこのあなた。腕がどうかしましたか」

「ちょっと痛むっていうか……おかしいな……気分が悪いし吐き気もするぜ……」

「おかしいわね? あたし3人にヒールしたのに」


 マーガレットが首を傾げてステッキと冒険者を何度も見比べている。彼女のヒールがしっかりと効力を発揮したのは一目瞭然だ。

 流石のマーガレットも、生死がかかっているときに手を抜くほど性根は腐りきっていない。


「シャガ、お前の出番かもな」


 シルフは先ほどとはうって変わって、真剣な表情を浮かべていた。

 シャガは頷き、慣れた手付きで木箱を開ける。中から液体の入った瓶を2本取りだして混ぜ合わせ、冒険者に渡して笑顔で飲む仕草をした。


「飲んでください」

「こ、これをか?」

「はい!」


 冒険者は、毒々しい色を見て一瞬ためらったが、深呼吸をして一気に飲み干した。


「兄ちゃんこれは何だ? すごく苦かったが、気分はさっきより良くなったぜ。吐き気もましになったぞ」

「それはよかった。でもそれ根本的な解決にはなっていないんですよ。あくまでその薬は一時しのぎです」

「えっ……どういうことだ?」

「これからが本番ということです。さあ、腕を見させてもらいますよ」


 アセビ一行は、目を皿のようにしてシャガの行動を見守っていた。目の前で滅多に見られない召喚士による診察が行われようとしているのだ。

 シャガは瞬きせず腕をじっと見つめたあと、シルフを見上げた。


「……何か入ってるんじゃない?」

「あぁ、間違いないぜ。このおっさんこのままだとまずいかもな」

「えっ!? ちょっと待ってくれ! 入ってるだのまずいだのってどういうことなんだ!?」


 狼狽える冒険者。

 しかし聞こえていないのか、シャガは特に焦る様子もなく懐から静かに1冊の本を取り出した。

 茶色の表紙には引っかいたような傷跡。背表紙にはルミエールの文字。そう、契約の本だ。

 アセビは思わず声をかけた。


「シャガさん、もしかしてここで召喚するんスか?」

「うん。異物がどこにあるか調べたいんだ。そういうのを見つけるのが得意な子と契約しててね」

「お兄さん、シルフくん以外とも契約してたのね! でもどんなモンスターと契約しているのかしら?」

「今すぐお見せするよ。ただ、ちょっと恥ずかしがり屋な子なんだ。あまり人の多い場所では呼び出したくないんだけど。今回は仕方ないね」


 シャガはゆっくりと深呼吸をし、声高々に呪文を唱えた。


「全てを見通す千里眼! 内に秘めたる正義感! 患者にとっての羅針盤! 聞かせておくれよ解決案! 現れろ! イビルアイ!」

「おお!」


 シャガの詠唱に反応し、他の冒険者たちも注目し始めた。

 目を輝かせるルピナスだが、ふと頭上を見上げるとそこに、何かがいた。


「うぉ!? あれはなんだ!?」


 大男も気づいた。周囲の者たちも天井を見上げる。

 そこには羽の生えた大きな目玉のようなモンスターが浮かんでいた。シャガが呼び出したのは、イビルアイと呼ばれるモンスターだ。特徴的な大きな目玉には、様々な魔力が宿っているだけでなく、全てを見通す力もあると言われている。

 突如現れたグロテスクな容姿のモンスターに、冒険者ギルドは大騒ぎになった。


「なんだアレ!?」

「目玉が浮いてるぞ!?」

「ば、化け物!!」

「みんな落ち着け! あの目玉のモンスターはシャガさんが契約しているモンスターだ! みんなをどうこうする気はない……っスよね?」


 ギルドはしんと静まり返った。

 シャガはアセビに感謝しつつ、注目を集めてしまったイビルアイに向かって手を振った。


「もちろん! 皆さんお騒がせしました。ちょっと怖い見た目してるけど、本当は優しい女の子なんですよ。ほら、おいで」

「あっ女の子なんスね」

「チャームポイントは大きな目玉さ」

「フフフッ全身魅力的ということか」


 イビルアイはふわふわと漂いながらシャガの頭上に近づいた。指示を待っているのだろう。

 シャガはイビルアイの羽を優しく撫で、腕を押さえた冒険者を指差す。彼女はふわふわと漂いながら、目の前まで移動した。


「………………」

「おいおいおいおい!? 兄ちゃんこいつ俺を食ったりしないだろうな!?」

「はは、こう見えてこの子ナイーブなんで。大人しいし安心してくださいな」

「ナイーブなの? あたしといっしょじゃない!」


 アセビはマーガレットにツッコミたい衝動に駆られたが、無視することにした。バカを相手にしている場合ではないからだ。

 イビルアイは目を細めて冒険者を数秒見つめると、急いでシャガの耳元に近づき、結果を報告した。


「ふむふむ。あなたそういえばさっき、ニワトリがどうのこうのって言ってましたね」

「ああ、ちょっと油断しててな。一瞬だけしか見えなかったがニワトリみたいなモンスターに襲われてよ。それがどうかしたのか?」

「イビルアイが教えてくれました。そのニワトリくんのものでしょうね。腕の奥に爪が入ってるみたいです。しかもただの爪ではありません。強烈な毒が付着しているそうです。このままだと……間違いなく死にます」


 シャガの言葉に冒険者は青ざめ膝をつき、冒険者ギルド内は騒然となった。

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