キラキラ 6
アセビとマーガレットは、フジフクシアコンビと別れて、みんなのお家を目指して走っていた。すでに日は沈み、周囲は薄暗い。ルピナスとサツキが帰りを待っていると思うと急がずにはいられなかった。
「ただいま!」
「遅くなってごめんなさい!」
アセビとマーガレットがみんなのお家に入ると、視線はテーブルに釘付けとなった。湯気が立ち上る炊きたての白ご飯。野菜がたっぷり入った味噌汁。絶妙な焼き加減の焼き魚が並べられている。
自室からサツキが現れた。テーブルの料理に心を奪われているアセビとマーガレットを見て、口許を緩めている。
「フフフッお前が一生懸命作ってくれたから、ふたりとも嬉しそうだぞ」
「……」
サツキの背中から、木製のトレイで顔を隠したルピナスが姿を現し、恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。
「……ほとんど……サツキに手伝ってもらったけど……」
「そうだとしてもすごいじゃないか! オレは手伝ってもらったとしても作れねえよ!」
「ゲロ女の作ったご飯だから……食べたくないなら……食べなくても……ひゃっ!」
うつむくルピナスが言い終える前に、アセビがトレイを取り上げて、両頬を軽く摘んだ。突然真剣な眼差しを向けている。ルピナスは視線を逸らせずにいた。
「ゲロ女じゃない! 言っただろ? オレは気にしてないって! マイナスな方向に考えても、良いことなんて何もないんだからな!」
「で、でも……ひゃあ!」
ルピナスは目に涙を浮かべ、マイナスな感情を吐き出そうとするが、アセビが両頬を軽く引っ張った。
マーガレットは止めようとするが、サツキが首を横に振る。ふたりはアセビとルピナスのことを、そっと見守ることにした。
「ルピナス。仮にだけど、オレが酒飲み過ぎてゲロ吐いたら、お前どう思う?」
「あたしなら煽りまくるわ」
「マーガレット。私の言いたいことはわかるな?」
「あっはい。お口にチャックしておくわね」
「ぼくは大丈夫かなって心配するよ……あっ」
「だろ? ゲロ吐いたとか、そういうのはどうでもいいんだって。お前の体調が早く良くなってほしいとしか想っていなかったよ」
ルピナスがはっとした表情を浮かべる。アセビは微笑むと、両頬から手を離した。
大切な仲間が苦しんでるところを見て、心配しない者はいない。それは当然口では煽ると言ったマーガレットも例外ではないだろう。
ルピナスは慣れていないのか、ぎこちない笑顔を作って、アセビに勢いよく抱きついた。
「ありがとうアセビ。ぼく、これからもいっぱいゲロ吐くかもしれないけど……」
「構わん構わん! でも、できれば酒はほどほどにしてくれると、アセビくん嬉しいんだけどな!」
「前向きに検討するね!」
ルピナスにその気がないのは、表情を見れば一撃でわかる。まるでイタズラを思いついた悪童のそれだったからだ。
アセビは再びルピナスの両頬を摘んでで苦笑した。
「コラ! あまり心配かけさせるなよ! ほっぺたまた引っ張るぞ!」
「言いにくいけど、ぼくほっぺた引っ張られるの嫌いじゃないんだよね。愛のある痛さはずっと感じていたいというか」
「……オレさ。お前にはこのまま真っ直ぐ、すくすくと育ってほしいんだ」
「そうだぞ、ルピナス」
「……サツキがそれ言うの?」
「む? 私は真っ直ぐ育ったぞ?」
サツキはマーガレットに見せつけるように得意げな顔で背筋を伸ばした。
特殊な価値観を持っている黒鬼が何を言うの。マーガレットはそんな気持ちでいっぱいだった。
サツキの生き方はある意味誰よりも真っ直ぐだ。これまでも、そしてこれからも。
「さて、そろそろ晩ご飯食べたいねぇ! すっげえ美味そうだもんなぁ!」
和食を前にわくわくしているアセビの声を聞き、問題児たちは急いで席に着いた。彼女たちは待っている。アセビのあの言葉を。
「それじゃあ……いただきます!」
「いただきまーす!」
アセビ一行の元気な声が部屋中に響き渡る。待ちに待った晩ご飯タイムだ。
アセビ一行の笑顔は、キラキラと輝いていた。
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