とびっきりの問題児ども対ほねおじさん 12
「さて……」
フジは髪をかき上げ、正面を見据える。あれだけいたスケルトンは残り2体となっていた。
まだ辛うじて動ける冒険者ギルド側のメンバーは、フジ、フクシア、大男、キャタピラーが2匹。
数では圧倒的に有利だが、肉体はすでに限界を超えている。立っていられるのが不思議なぐらいだ。
フクシアが肩で息をしながら、フジに声をかけた。
「はぁ……はぁ……フジ、あとは任せてもいいかな?」
「奇遇だな……俺もお前にそれ言おうとしてたぜ」
「なら、俺が……っ!」
大男が握っている斧を投げた。スケルトンの頭部に見事当たり、吹き飛ばす。
「や、やった……」
大男は足を引きずりながら、最後のスケルトンに向かって歩みを進める。もうまともに戦う力は残っていないだろう。それでも歩みを止めない。強靭な精神力を持つことの証明なのだが、このままではむざむざスケルトンにやられにいくようなものである。
「大将……休んでなよ」
「バカ言え……若いのや……キャタピラーが……頑張っているんだぞ……俺だって……!!」
フジとフクシアは目配せを交わした。ふたりは同じ村の生まれで付き合いが長く、考えていることをすぐに察することができる。
「……本気出さないといけないんじゃないかな」
「……タイミング次第か……」
「うわっ……!!」
とうとう大男にも限界が来たようだ。地に手と膝をつき、顔をしかめている。もう立ち上がることはできないだろう。
大男は悔しそうに地面に頭をぶつけた。
「くそっ! 俺の足よ! もう少し頑張ってくれ! もう少しだけでいいんだ!」
大男は顔を上げる体力も残っていない。少しずつ近づいてくるスケルトンの気配を感じ取りながら、悔しそうに歯ぎしりをしている。
「今ならダンナに俺たちの姿が見られることはない」
「……うん」
「……フク、俺はアレならまだ使える」
「……フジ、わたしも多分使えるんじゃないかな」
フジが握り拳を作って引き、フクシアは手のひらを正面に向けた。
「……テラー」
「……コンタミネーション」
フジとフクシアが小声で呟く。黒魔法だ。
スケルトンはバラバラに砕け散り、腐って灰となって消え去った。この世から消え去ったことに、気づいていないかもしれない。
フクシアがほっとしたような表情で苦笑する。フジも同じだった。
「もしかして……最初から本気出せてたら……もっと楽できたのかな……?」
「さぁな……だがその場合ふたりだけで戦わないといけなかっただろうぜ……流石に厳しかったろうな……」
「そっか……」
「まぁ……もうどうでもいいじゃねえか……」
フジとフクシアも体力とエネルギーに限界がきてしまったらしい。力が抜け、後ろにそのまま倒れそうになっている。受け身も取れないだろう。危険だ。
「!!」
キャタピラーたちが急いでフジとフクシアの背後に移動し、背中をクッション代わりにした。柔らかい体のおかげだろう、弾力がある。フジとフクシアは地面に倒れずにすんだ。
「……お前たち……本当に助かったぜ」
「……ありがとうございました」
最後の最後まで味方をしてくれたキャタピラーたちに対し、フジとフクシアは心から敬意を表した。もし増援がなかったら、クレマチスは今頃火の海だったかもしれない。
フジが顔を僅かに上げた。傷つき倒れた冒険者たちとキャタピラーたちが目に映る。どうやらまだ動けないようだが、体を震わせているところを見るに、命は失われていないらしい。全員で無事に防衛できたことを喜べそうだ。
フジは握り拳を作り、小さく喜んでいた。
「くっそぉ……ん!?」
大男が恐る恐る顔を上げる。最後のスケルトンは、もういない。残ったのは灰だけだった。
大男は戦いが終わったことに気づくと、ほっと胸を撫で落ろして、そのまま大の字になった。
「ははっ……ありがとよ……お前さんたちが最後のスケルトンを倒したんだな? 何をやったか知らんが、本気を出してくれたってことか?」
「……さぁな」
「……内緒です」
フジとフクシアはそれだけ言うとキャタピラーたちの背中の上で瞳を閉じる。どうやら本当のことを言うつもりはないらしい。恐らくこれからもきっとそうだろう。
フジとフクシアは深い眠りに落ちる前に、そっと祈りを捧げた。アセビたちが無事、不死王リッチを倒せるように、と。




