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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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とびっきりの問題児ども対ほねおじさん 9

「……これぐらいでいいか」


 不死王リッチはアセビ一行から十分距離を取ると、地に膝をついた。失った腕があった箇所を一瞥し、アセビをじろりと睨みつける。


「若いの、少しはやるようだな? だがわしの片手を奪ったぐらいで勝てると思うな!」

「えっ。ちょっ、ちょっと待ってもらっていいスか」


 先ほどまでの温かな感情のこもった声ではなく、低く地の底から響くような不気味な声だった。

 アセビ一行は困惑し、円の形になって顔を見合せる。


「リッチさん戦闘続行しようとしてね? なんか延長戦入った空気じゃね? オレ一応責任とったじゃん? もう全部解決したじゃん?」

「あたしこのまま綺麗に終わる流れだと思ってたわ」

「多分だけど根は優しいおじさんだよね」

「みんなでもう1度謝罪しないか?」


 アセビ一行はひそひそと小声で相談する。平和的に解決できるならそのほうがいいに決まっているからだ。

 不死王リッチは骨の杖を取り出し、再びインフェルノを唱えた。アセビ一行を青白い炎が襲う。


「みんな避けろ!」


 アセビの指示に従い全員が同時に回避する。インフェルノは誰にも当たることなかった。

 アセビは慌てて不死王リッチに視線を向ける。杖を構えて戦闘態勢に入っていた。


「待てって待てって!」


 アセビは戦闘はもう終わったと思っていた。しかし肝心の不死王リッチにその気はないのかもしれない。


「ちょっと大魔王様! オレ1回死んで責任とったじゃないスか! 追加で土下座でもなんでもするんで、もう帰ってもらえないスか!?」

「わしの腕を切断しておきながら何を言うか!」

「いやいや! さっきオレたちの仲直り手伝ってくれたじゃないスか! それなのになんでまだ戦おうとするんだよ!」

「それはそれ、これはこれだ! それにもう責任もクソもないわ! 貴様たちとは潰すか潰されるかだ!」

「ぐぬぬ! やっぱやるしかねぇのか! なら次は残った腕をぶった斬ってやらあっ!」


 アセビが銅の剣で斬りかかるが、不死王リッチは高く飛んでかわした。


「隙だらけだぞ、若造が」


 不死王リッチはニヤリと笑ってアセビに飛び蹴りを食らわせる。凄まじい衝撃が体全体に走り、吹き飛ばされてしまった。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「どうした!? 絆の力を見せてみろ!」

「見せてやろうじゃないの!」


 マーガレットが不死王リッチに素早く近づく。ステッキで殴りかかるが、素手で掴まれて折られてしまった。

 しかしマーガレットはそれが狙いだった。


「ロック!」


 わざと武器を無くし、隙を晒すことで不死王リッチに攻撃させるのが狙いだった。岩のように固くなっているマーガレットを蹴り飛ばしたら、足が折れるかもしれない。カウンターが決まれば勝機はある。

 しかし不死王リッチは既にマーガレットの企みを見抜いている。蹴らずに彼女の腕を掴み、そのまま思い切り投げ飛ばした。


「わざとらしい動きだ! 白頭巾、貴様カウンター魔法を狙っていたな!? くだらん小細工! そんな魔法でこのわしを倒せるものか!」

「きゃあああああ!」


 マーガレットは勢いよく地面を転がっていく。

 不死王リッチとアセビ一行の実力の差は大きい。

 しかしアセビは絶望するのをやめた。仲間との絆の力を信じているからだ。


「みんな行くぞ! オレたちの絆見せてやろうぜ!」

「いたた……オッケー、勝つわよ!」

「ぼくもがんばるよぅ!」

「承った! 今度こそ私がお前たちを守りぬく!」


 アセビの周囲に問題児どもが集まった。全員真剣な表情を浮かべている。士気は高い。不死王リッチとの実力差に怯えるものは誰ひとりとしていなかった。全員絆の力を信じているからだ。


「吠えたな! 来い、人間ども!!」


 絆の戦いが、今、始まる。




「ここまで……か……?」


 大男が肩で息をしている。とうとう愛用の斧も折れてしまった。

 多くの冒険者たちは傷つき、地に這いつくばり、まともに動ける状態ではない。

 スケルトン軍団はクレマチスへの侵攻を優先しているらしい。戦闘不能になって倒れている冒険者たちには目もくれず、歩みを進めている。命を奪うわれる心配はなさそうだ。

 しかしクレマチスを失うということは、冒険者たちにとっては死を意味する。先に死ぬか後で死ぬかの差でしかない。


「あともう少しなんだが……」


 フジが唇を噛んだ。彼はすでにほとんどのエネルギーを使い果たし、愛用のナイフで戦っていた。得意の炎魔法はもう使えない。

 フジのナイフは数え切れないほどのスケルトンを斬りつけたため、刃こぼれしている


「ファイヤーボール……」


 フクシアがフジを庇うように、人差し指から火の玉を飛ばした。ぶつかったスケルトンを灰に変える。


「わたしはあと2発が限界かな……」


 フジ、フクシア、大男を含め、戦闘可能な冒険者は残り6人。全員体力の限界が近い。

 スケルトンがジリジリと近づいてくる。圧倒的な数の暴力の前には、屈するしかないのかもしれない。冒険者たちを絶望感が包み込む。


「お前たち、あとは任せる! ここは俺が突撃して少しでも数を……」


 大男がスケルトンに向かって飛び出そうとした、そのときである。地面からキャタピラーが3匹勢いよく飛び出した。


「えっ!?」

「なんでこんなところにキャタピラーが……?」


 キャタピラーたちは1体のスケルトンに向かって糸を吐いた。頭部、腕、足が締め付けられていく。スケルトンは身動きが一切とれず、そのままバラバラに砕け散った。

 キャタピラーたちはスケルトンを撃破したのを確認すると、フジたちの前に素早く移動した。まるで自分たちが盾になると言っているように見える。


「なんなんだこいつら……?」

「もしかして助けてくれたのかい?」

「だとしてもキャタピラーがなぜ?」


 大男と冒険者たちは困惑する。いきなり現れたキャタピラーたちがスケルトンを攻撃し、自分たちを助けてくれたのだから。普段は注目されず、邪魔者扱いされている存在。それがキャタピラーだ。しかし冒険者たちには心強い救世主に見えていた。

 キャタピラーたちは体を伸び縮みさせ、スケルトンたちを威嚇している。これではそう簡単に近づけそうもない。

 フジとフクシアは、顔を見合わせ、頷く。キャタピラーたちが敵ではないと判断したのだ。


「助かった。3体だけでもありがたい。少しでも負担が減るからな」

「……あの子たち、このまま協力してくれるのかな?」

「そう信じようぜ」


 冒険者たちは違和感を覚えた。大地が揺れている。気のせいではない。確かに揺れている。


「ん? なんだ?」

「地面がボコボコって……」


 冒険者たちが周囲を見回すと、あちこちの地面が膨れ上がり、多くのキャタピラーが同時に顔を出した。少なくとも30匹以上はいるだろう。

 全員が同時に地面から飛び出し、冒険者たちの前に綺麗に整列した。援護に来てくれたのは3匹だけではなかったのだ。


「……ギリギリ勝てるんじゃないかな?」

「……かもな」


 キャタピラーたちはスケルトンの軍団に向かって糸を吐き、侵攻を食い止めていた。1体1体は強くないかもしれない。しかしこれだけ集まればそれなりの戦力と言えるだろう。


「よし、キャタピラーたちが食い止めてる間に応急処置をするんだ! 武器を失った奴は、戦えなくなった仲間から借してもらえ!」

「わかったぜ! おい、お前の槍少し借りるぞ!」

「下手に経験があると苦労するねぇ。まー、手当しながらがんばるさね!」


 戦闘可能な冒険者たちは大男の指示に従い、行動している。先ほどまでの絶望感はない。キャタピラーたちの増援が希望をもたらしたのだ。


「う……うーん……」


 キャタピラーたちは頼れる存在だ。しかし体長1メートル近い虫の集団である。一部の女性冒険者はショックで気絶してしまった。

 悲しいが、やはり容姿は、大切なのである。


「キャタピラーたちに負けてられねえぞ! 俺たちもスケルトンを倒すんだ! クレマチスを守るぞ! うぉぉぉぉぉぉ!!」


 新しく武器を調達した大男が、気合いの雄叫びをあげる。

 フジは髪をかきあげ、折れかけたナイフを手に、スケルトンに向かった。

 クレマチスの冒険者は希望の光が消えない限り、戦えるのだ。何度でも。

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