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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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ごめんですまないこともある 1

 今日も1日冒険者ギルドの仕事を終わらせたアセビ一行は、みんなのお家でギャンブルをしていた。賭け金は子供のおこづかいレベルの金額である。破産することはない。

 内容を決めるのはマーガレットだ。今日は彼女の希望でポーカーをすることになっている。本人いわく、あたしが最も得意とするギャンブルとのことだ。


「さて、どうするかねぇ」

「あたしは!」

「……」

「フフフッ」


 それぞれ手持ちのカードと机の上に公開されたカードを見比べ、勝負するか悩んでいた。

 眉間にシワを寄せるアセビ。瞳を輝かせるマーガレット。ポーカーフェイスのルピナス。意味深に笑っているサツキ。それぞれ表情が全く違う。


「……オレは降りる」

「あたしは勝負するわよ!」

「ぼくは……やめておく」

「フフフッ応じよう」


 アセビがカードを裏のままにして机に投げた。どうやら引きは良くなかったらしい。

 一方ルピナスはため息をつき、カードを伏せた。彼女も良いカードを引けなかったらしい。

 ふたりはゲームを降りたのだ。マーガレットとサツキのカードに注目している。


「準備はいい?」

「いつでもどうぞ」


 マーガレットとサツキは同時に手札を公開した。


「場のカードと合わせてキング3枚よ!」

「私は10が2枚だ。うむ、この勝負はお前の勝ちのようだな」


 マーガレットが満面の笑顔で手を叩き、机に置かれた賭け金を自身の財布に入れた。アセビとサツキは優しい目をして眺めている。

 マーガレットは引きが良いと、いつもわかりやすい反応をする。アセビとサツキは顔色を伺いながら、いつも行動しているのだ。わざと勝たせるために。


「次も勝つわよぉ!」

「そう何度もうまくいくかな?」

「次はぼくも勝負したいなぁ」

「ではカードを配るぞ」


 マーガレットは以前多額の借金を抱えていたが、ほとんどギャンブルによるものだった。

 アセビ一行が現在進行系で賭け事に興じるのは、適度にガス抜きをさせるためだ。マーガレットに2度と賭け事をさせないように対策しているのである。

 ちなみにギャンブルの流れはほぼ決まっている。最終的にアセビかサツキがわざと負け、マーガレットとルピナスが得をするようにしていた。

 優しい世界である。


「えへへ! また勝っちゃった!」

「今日はお前ラッキーガールじゃないか」

「勝負に勝つのも嬉しいけれど、こうやってみんなでわいわい楽しめるのが1番いいのよね!」


 配られたカードをじっと見つめながら、ルピナスも無表情で頷く。ポーカー中でなければ、マーガレットの会話に加わっていたに違いない。


「こういう幸せな日常が続くといいわよね! ずっとず~っと続くといいわよね、アセビ!」

「ちょっとその言い方やばいフラグ立ちそうだからやめてほしいんだけど」


 犯した罪は償わなければならない。それは、誰であっても。

 罪の清算をしなければならない瞬間は急に訪れるもので、それは忘れたころにやってくる。

 今まさにその時が近づいてきていることに、マーガレットはまだ気づいていなかった。




 アセビ一行は全員で仕事を受けるため、冒険者ギルドへ向かっていた。

 森からファンガスが消えたことで、クレマチスに再びキャラバンや旅商人が集まるようになったのだ。街全体が活気を取り戻しつつあった。

 アセビは周囲をきょろきょろと見回す。すぐに違和感が芽生えた。


「それにしても……」

「アセビ、お前も気づいたか」

「あぁ。なんか今日は……寂しいな」


 今日は何故か街を行き交う人々は誰もおらず、静寂に包まれている。どの店も入り口が閉められ、広場や通りから露店が消え、野良猫すら1匹も姿を見せない。


「こんな日もたまにはあるのねぇ」

「いや絶対おかしいって。誰もいねえじゃん」

「ぼくはこういう街のほうが住みやすくていいなぁ」

「とりあえず、みんなで冒険者ギルドに行きましょ。着いたら何かわかるかもしれないわ」


 アセビ一行は違和感を覚えつつギルドへと急いだ。




「ちわーっス! 今日街全体がめちゃくちゃ静かだけど何かあったんスか」


 アセビ一行が冒険者ギルドに入ると、すでに多くの冒険者が集まっていた。一斉に視線が集まる。

 不安そうにしている者もいれば、殺意に満ちた目をする者もいる。ため息をつく者もいれば、泣きそうな顔をする者もいる。

 アセビは自分たちの評判が最悪レベルなことを知っているが、ここまで露骨な態度を見せられたことはなかった。明らかな異常事態に胸騒ぎを覚える。

 それと同時に、受付の大男が息を切らして近づいてきた。


「アセビ! お前さんの家にこれから行くところだったんだ!」

「おっちゃん、なんかやばい雰囲気なんだけど。目障りならオレたち帰ったほうがいいっスかね?」


 アセビの言葉を聞き、複数の冒険者が出入口前に移動し、武器を構えた。このままでは帰さないと言わんばかりの態度だ。アセビは恐怖心を覚える。

 クレマチスの冒険者ギルドでは、冒険者同士での暴力行為は禁止されている。その掟が今、破られようとしているのだ。


「お前たち! 武器を下ろせ! まずはアセビと話をしてからだろ!」


 大男の一喝。武器を構えた冒険者たちが、渋々と引き下がる。逆らえばすぐさま冒険者ギルドを追放される可能性があるため、従わざるをえないのだ。

 大男はアセビ一行の安全を確認すると、しわくちゃになった紙を渡した。


「おっちゃん、これは……?」

「とりあえず読んでくれ! 昨日の夕方、街の入り口に貼ってあったらしいんだ!」


 大男は額から汗をにじませ、呼吸を荒くしている。いつも冷静なのだが、落ち着きを失っている。

 アセビはこの紙を読めば、全ての違和感や疑問が解決すると確信し、記された達筆な文字を読み進めた。


「我は不死王リッチ。先日我の館に侵入した数名の愚か者がいたようだ。本来万死に値する行為なのだが、庭を確認すると隅々まで清掃をした形跡があった。愚か者どもが反省し、心を入れ替えたことの証明であろう。強く咎めることはしない。我の寛大な措置に頭を垂れるがよい」


 アセビはつい最近マーガレットとルピナスが霧の森の館に行き、庭の掃除をしたことを思い出した。あの廃墟と化していた館は、この不死王を名乗るリッチという人物が家主なのではと予想する。

 表情を強ばらせるアセビを見て、大男が恐る恐る尋ねた。


「アセビ……身に覚えあるか?」

「少しだけ……」


 冒険者ギルド内のあちこちから、ざわめく声が聞こえた。

 アセビの覚えた違和感や疑問が、不安と胸騒ぎに変わりつつある。

 大男が紙の裏面を指差す。文字はまだびっしりと記されている。アセビは再び読み進めた。


「誰よりも何よりも寛大な我だが、どうしても見過ごせぬこともある。おい! 俺の宝石パクった奴! おめえだよ! わざわざ置き手紙で、あたしが全部もらっておくわねとか書きやがってよ! 絶対許さねえ! とりあえず明日また来るから絶対宝石持って来いよ! 全部返せよマジで! クレマチスのマーガレット! 貴様は俺がこの手で殺してやる! お前が姿を表さないのなら街全体を俺様が破壊し尽くす! 殺す! 絶対に殺す!」


 最初は達筆な文字だったが、途中からは荒々しく書き殴られてれていた。スーパーブチギレモードになってしまったのだろう。

 不死王リッチが文字を書いているうちに、だんだんとヒートアップしていったのがよくわかる文章である。


「クレマチスでマーガレットって名前の女は……あの子だけなんだ……」

「あっ……そうなんスね……ところでこのリッチ大魔王とかいうお方はどのような……?」


 アセビの疑問に答えるため、周囲に集まっていた冒険者たちが口を開く。


「聞いたことがあるぜ。永遠の命を求め、不死のモンスターになってしまった魔法使い。それがリッチだ」

「その手の連中は元々魔法を極めている。絶対に敵に回したらいけないはずだ」

「自分から不死王を名乗るぐらいだからねぇ。こいつはマジにやばいと思うよ」


 わかりやすい説明に、アセビは感謝し頭を下げた。

 とりあえずわかったことは、クレマチス全体がマジにやばいことになってしまったということだ。

 アセビは何度も深呼吸したが、気持ちが全然落ち着かない。それはそうだろう。まだ確定ではないが、誰かさんのせいで、クレマチスに危機が訪れているのだから。

 冒険者のひとりが、苦しそうに胸を押さえながら、口を開いた。


「クレマチスから離れた位置に大量のスケルトンがいるみたいだよ。不死王リッチの部下だろうね」

「マジっスか」

「マジだぜ。俺と俺の仲間が確認した」

「街の商人や住民には、昨日のうちに手分けして連絡しておいた。危ないから隠れてろってな。情報が伝わるのが早くて良かったぜ」

「商人や住民たちも、仲間同士で連絡し合ったんだろうね」


 アセビはイタズラの可能性を信じたかったのだが、それは完全に無くなってしまった。不死王リッチは現実に存在し、すぐそこまで来ている。

 とにもかくにも、まずはマーガレットに話を聞かねばならないだろう。アセビはスーパー問題児を探した。


「あのおバカはどこに……」


 アセビが冒険者ギルド内の隅を見ると、マーガレットがジャムパンを2個同時に口に入れる姿が見えた。膨らむ頬をルピナスが楽しそうにペタペタと触っている。サツキは肩を震わせ、口を押さえて必死に笑いをこらえていた。

 この問題児どもは、恐らくクレマチスで1番の幸せ者だろう。何も知らないということは、それだけで幸せなことなのだから。


「はーい! 女子全員集合!」

「も〜、女の子を急かすんじゃないわよ」

「いいから早く!」


 アセビが大声を出し手を叩くと、マーガレットたちが集合した。

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