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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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ふたりの黒い冒険者 15

 時を同じくして、フジとフクシアも豪邸で酒を飲んでいた。

 会話は一切ない。ただ、酒を飲むだけの作業を繰り返している。

 重苦しい沈黙に耐えかね、フジが口を開く。


「酒だけってのもな。それにフク、お前酒そんなに飲めねえだろ。何か適当に作るから待ってな」


 フジが席を立ち、キッチンへ向かう。悲しみに暮れるフクシアの姿を、見ていられなかったのだろう。


「なんで……?」


 蚊の鳴くような声でフクシアがぽつりと呟いた。


「フク……?」


 フクシアの瞳から涙があふれる。そのまま感情という名のダイナマイトを爆発させた。


「アセビくんを悲しませる女なのに! アセビくんを苦しませる女なのに! アセビくんを不幸にするだけで何もしない女なのに!」

「……」

「わたしならアセビくんを幸せにできる! アセビくんのためならなんだってできる! 離れたくない! ずっとずっといっしょにいたい!」


 フジは黙ってフクシアを抱きしめ、頭を撫でた。

 少しキザで普段は飄々としている青年。いつもは見せない優しさに、フクシアは驚く。荒れた感情は、少しずつ落ち着いていった。


「よくアセビの前で泣かなかったな。偉かったぞ」

「優しくしないでほしいな……いつも意地悪な癖に……」

「俺は意地の悪い男だからな。だからお前に優しくするんだよ。俺はそういう男だからな」


 フクシアが涙を拭う。フジの不器用な優しさが荒んだ心を癒したのだ。


「なあフク、運命の相手って信じるか?」

「信じたいな」


 フジから思わぬ言葉が出て、フクシアは吹き出しそうになった。冗談で言ってるのかと思ったが、真剣な表情でじっと見つめている。


「アセビは黒魔法を使う俺たちを受け入れてくれた。あいつならお前の重たい愛も受け止めてくれる。間違いなく、あいつこそ俺たちの運命の相手って奴だ」

「わたしって重たいかな?」

「重たい」


 フジに即答され、フクシアが首を傾げる。彼女は自分を客観的に見れない少女だった。

 フジは思わず苦笑する。ただ危なっかしいフクシアだからこそ、ほうっておけないのだ。根っからの兄貴分気質なのだろう。


「アセビの仲間が巣立ったら、きっと俺たちのところに帰ってきてくれるさ。俺たちがあいつの帰る場所になれるよう、明日からまたがんばっていこうぜ」

「うん!!」


 フクシアに笑顔が戻り、フジも安心する。

 ふたりは揃ってキッチンへ行き、仲良く談笑しながら夕食を作りはじめた。

 ふたりは自分たちの運命の相手こそ、アセビだと思っている。いつかまたチームを組むことになると信じているのだ。

 しかし運命の相手とは、必ずしも自分自身の理想の相手とは限らない。


「でも運命の相手って言い方だと何というか。フジはアセビくんのこと好きなのかな?」

「そうだな」

「死にたいのかな?」

「冗談だ」


 フジはいつものように髪をかき上げ、完成した料理を器用に皿に飾り付けていく。フクシアがそれを受け取って、トレイの上に乗せた。

 ふたりは並んでダイニングルームへと戻る。その表情に悲壮感は一切見られない。フジもフクシアも、前向きに切り替えることができたのだ。


「それとお前さ。ハンカチ口に入れるの危ないから辞めたほうがいいぞ」

「危ないから……綺麗なものを汚しちゃうから……いいんじゃないかなぁ……?」

「そうか……」




「ああ! 久々に飲んだって感じ!」


 マーガレットの声がクレマチスの街路に響く。アセビ一行は食堂で思う存分飲食をし、夜道を歩いていた。酒を飲んだせいか、全員顔を赤くしている。

 町を行き交う人々も少ない。皆それぞれ自分の帰るべき場所にいるのだろう。

 アセビ一行は、例の拠点へと向かっていた。


「……ぼくやっぱり、みんなで飲むお酒が1番おいしいって思うの」

「フフフッ私もだよ! そうだろう? アセビ」


 酔っているのだろう。サツキはいつもより積極的になっていた。アセビの首に手を回し、体を密着させ、腰の木刀を抜いて微笑んでいる。


「当たってるって……それに酔ってるのに木刀振り回すと危ねえから!」

「フフフッ! 明日からまた頑張るからな! 私に任せてほしいぞ! フフフッ!」

「お、おう……よろしく」


 アセビはサツキに面食らう。彼女は酒を飲むとテンションが高くなる方だが、今日はいつにもましてそれが顕著だ。アセビの言葉や対応が、よほど嬉しかったのだろう。鼻歌まで歌っている。

 サツキはアセビからそっと離れ、ルピナスの両脇を支えて高く持ち上げた。


「ひゃあ! 怖いよぅ!」

「たかいたかーい! フフフッ!」

「ダメだ。完全に酔っ払いになってる……」


 アセビはやれやれと苦笑する。彼は楽しかった夢から覚め、現実が帰ってきたと実感していた。

 マーガレットがアセビに小走りで近づき、手をぎゅっと握る。柔らかくて小さかった。


「ねえねえ、アセビ! あなた、あたしたちが立派に巣立つ姿を見たいって言ってたわよね?」

「……記憶にないっスね」


 アセビはマーガレットの言葉を聞き流そうとする。できればそのことに触れてほしくないのだろう。心からの本音をいじくりまわされるのは、言葉にできない恥ずかしさがあるのだ。


「あたしね? このまま成長しないのも、悪くないかなって思うのよ!」

「は? 酒飲みすぎて酔っ払ったか?」

「だってだって! それならアセビとずっといっしょにいられるってことでしょ! えへへ!」


 マーガレットが手を叩き、満面の笑みを浮かべる。

 ルピナスとサツキも楽しそうに笑っていた。

 アセビはため息をつき、問題児たちに背中を向け、夜空を見上げる。


「ふざけんな。はよ巣立て、問題児ども」


 夜空の星が、美しく煌めいていた。

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