覚醒!!最強パワーの問題児 23
白い鳥は首を傾げた。
「遅かったねぇ。まさかとは思うがあんたたち、部屋を丁寧に全部調べたのかい?」
マーガレットはむすっとした表情で口を開く。
「そのまさかよ」
「ご苦労なこったねぇ」
白い鳥は首を上下に動かして笑っていた。屋上で逃げも隠れもせず待っていたのに、アセビ一行は見当違いなところを必死に調べていたのだ。笑わずにはいられなかったのだろう。
誰よりもキレやすいマーガレットは、顔を赤くして不満を爆発させた。
「最初から1番上にいるって言いなさい! こっちはかなり疲れたのよ! おバカ!」
「それは悪かったねぇ。では、あらためて名乗らせてもらいましょーか」
白い鳥は自身の羽を胸に当て、軽く頭を下げた。まるで紳士を思わせる仕草。アセビ一行は眉を潜める。慇懃無礼な態度が鼻についたのだ。
「あっしはコカトリス! 最強四天王の新人王コカトリス! どうぞよろしく。ま、すぐお別れすることになるんでしょうがね」
白い鳥の正体。それはコカトリスという種族のモンスターだったのだ。彼の自己紹介が終わると、アセビは軽薄そうな笑みを浮かべた。
「ふ~ん。お前が死ぬからか?」
「まぁあっしは死ぬでしょうな」
「あら弱気じゃない」
「何人か道連れにするつもりですがね」
「……可愛くないわよ」
コカトリスは鶏に似た頭部と翼、蛇の尾を持つモンスターだ。毒を自由自在に操り、爪とくちばしだけでなく息にもそれが含まれている。接近戦を試みるなら、命がけで戦わなければならないだろう。
「お前が最後の四天王……っていうことはリーダーの最強ちゃんってことか!」
「コカトリスは強力なモンスターだって聞いたことがあるよぅ。だからあのリッチも、リーダーとして認めていたのかもね」
「相手にとって不足無しだ」
「あっ……いや……」
コカトリスはどこか気まずそうにしていた。
これまで戦った最強四天王は、リッチ、スライム、ハーピーの3体。今回のコカトリスを含めたら4体目ということになる。
リッチは言っていた。最強四天王にはリーダーがいて名前は最強ちゃんだ、と。
アセビ一行の前に、4体目の四天王がいる。コカトリスがリーダーと考えるのはごく自然なことだ。
「その……」
口ごもるコカトリス。マーガレットは苛立たしげに顔をしかめた。
「なによ! はっきりしないわね!」
「なんだ? 今さら命乞いか? 未来永劫クレマチスに来ないって誓うなら引き分けってことにしてやる。その代わりしっぽは渡してもらうがな、最強ちゃんよぉ」
アセビの妥協案を聞いたコカトリスが、そっと視線を逸らした。
「いや……あっしは……ただのコカトリスなんで……」
「う?」
「最強ちゃんじゃ……ないんで……」
コカトリスが小声で答える。想定外の答えが返ってきたため、アセビ一行は顔を見合わせ首を傾げた。
「いやいや、最強ちゃんじゃないわけないだろ」
「四天王はもうコッコしか残ってないじゃない」
アセビとマーガレットの意見が飛び出す。
今度はルピナスが質問するために、恐る恐る手を挙げた。コミュ障だが気になったことがあるとすぐ知ろうとする。なかなかレアなタイプのコミュ障だ。
「あの……四天王はリッチ、スライム、ハーピー、コカトリス、最強ちゃん……でいいの?」
「そうだねぇ。間違いないねぇ」
「……全員合わせたら5人にならない?」
5人である。間違いなく、5人である。
コカトリスはごまかすように咳払いした。
「細かいことは気にしないでほしいんだがねぇ……」
ルピナスは眉間にシワを寄せ、腕を組んだ。明らかに不服そうにしている。
「そこはこだわってほしかったよぅ。自分たちは四天王ですって自覚と誇りを持つべきだと思う。遊びじゃないんだよ? だって最強だよ? 四天王だよ?」
早口で言葉をマシンガンのようにコカトリスに浴びせるルピナスを見て、アセビは目を丸くした。
「おぉ……ルピナスの口数が多い……」
「初対面の相手にこれだけ話せるなら、重度のコミュ障も治るんじゃないかしら?」
ルピナスは女の子だが、年頃の男の子が目覚める特有の病気にかかっている。四天王が5人いたことがよほど気に入らなかったのか、妙に饒舌だ。
普段から誰に対しても、これぐらい気軽に話せるようになってほしいものである。
「あっしは下っぱの新顔でね。仲間に入れてもらえただけで良かったんだけどねぇ……ただ最強ちゃんがね……絶対に最強四天王って名前は変えたくないって……」
「その最強ちゃんとかいう奴の意見優先したから、お前も入れて最強四天王ってことにしたのか」
コカトリスが察しのいいアセビに内心感謝しつつ、無言で頷く。リーダーの決定なら、四天王が5人になったとしても仕方がないことなのだ。
ルピナスはまだ納得していない表情だが、これ以上不満をぶちまけても無意味と察したらしい。渋々とした態度で引っ込んだ。
コカトリスはマーガレットに対して、大きな隙を晒してしまった。彼女はニヤニヤと笑いながら尻を振って挑発している。
「5人いる四天王って変なの! ぷっぷっぷ! なんかマヌケって感じ〜! あなたたちってぇ、ノリと勢いだけで生きてそうよねぇ」
「そ、それよりそこの白いお嬢さん。あんた高いところ好きかい?」
コカトリスは無理やり話題を切り替えた。マーガレットの返答をじっと待っている。
「好きに決まってるじゃない! あたしの可愛いルックスを見せつけられるんですもの!」
「そうかい、なら良かった。高いところからの景色は素晴らしくてね。あんたにも見せてやりたいんだ!」
コカトリスは石の床を勢いよく蹴り、マーガレットに高速で飛びかかった。屋上からマーガレットを叩き落すことで、地面に激突するまでの景色を見せつけようとしているのだ。奇襲はコカトリスのお家芸である。完全にそれが決まろうとしていた。




