覚醒!!最強パワーの問題児 6
食事会は終わり、アセビ一行はみんなのお家に戻っていた。
女子たちはすでに床についていたが、アセビの1日はまだ終わらない。机の上に仕事道具を並べ、破損がないか、問題なく使用できるか確認していた。
怠けてきたツケは、払いたくない時に払わなければならなくなるものだ。仕事道具の確認を怠る冒険者は、どんなに実力があったとしても1流とは言えない。
「大きいのにするか……ん?」
アセビが視線を感じ背後に目を向けると、扉から芋虫が顔を覗かせていた。すでにルピナスは眠っている。隙を見て部屋から出てきたのだろう。
「兄さん。忙しいならまた今度にするっスけど」
「いいぜ。ちょうど休憩しようと思っていたところだったんだ。芋虫、どうしたよ?」
芋虫は頭を下げ、部屋へと素早く入り込んだ。彼女は顔を上げてアセビを見つめる。
「チビが兄さんとルピナスにとても可愛がってもらったみたいで」
「チビ……? あっ触覚か!」
芋虫は頷き、言葉を続ける。
「あの子今日のことを楽しそうに語ってたんスよ。そのお礼を言っておきたかったんで」
「ははっ! 助かったのはこっちもだぜ。お前と触覚のおかげで水飲めたしな」
アセビはお礼と言わんばかりにポケットからクッキーを取り出し、芋虫の口元に近づける。彼女は口を大きく開けて食べた。口内に広がる甘みをゆっくりと味わっている。
「これ甘くておいしいっスね」
「気に入ってもらえたようで! 触覚には荷物持ちもしてもらって助かったんだ。あいつにも明日お礼のクッキーあげないとな」
「チビはルピナスやあんたのお手伝いができたって喜んでたっス。迷惑になってないか心配だったんスけど大丈夫そうっスね」
アセビは頷き、芋虫の頭を優しく撫でた。
「迷惑なものかよ。芋虫。お前もいつもオレたちのこと助けてくれてありがとな」
「……ならいいっス」
芋虫は気持ちよさそうに目を細めている。
現在のキャタピラーは世間からそれなりに評価されている。しかしアセビとルピナスが芋虫に出会ったばかりのころは、評判が非常に悪かった。誰からも必要とされていなかったのだ。
しかしアセビとルピナスは芋虫を歓迎し、無事契約は結ばれた。彼女にとって自分を受け入れてくれた者たちに感謝されることは、最高の誉れなのである。
「話は変わるけどよ」
「何スか?」
「お前さ。そろそろルピナスと、ちゃんとコミュニケーションとってもいいんじゃねえか?」
「うぅ……」
「きっとルピナスはお前と話したがってるぞ」
芋虫は体を丸めて縮こまってしまった。彼女にとってアセビは親しみやすく、絡みやすいタイプなため問題なく話せる。
しかしルピナスは別だ。好きすぎるがゆえに恥ずかしくなり、会話ができないのである。
「まー、そのうち……」
「オレとは普通に話せるじゃねえかよ」
「兄さんは別なんで」
「ルピナスも喜ぶだろうから考えておいてくれよ」
「検討しておくっス。おやつどうもでした」
芋虫は背中を向けて素早く部屋を出ていった。アセビは目線を机へと戻す。
「お互い好きなのになぁ。もう少しうまくやれないものかねぇ」
ルピナスは芋虫を大切に想っている。芋虫もルピナスを大切に想っている。しっかりとコミュニケーションを取ることができたら、絆はさらに深まるに違いない。
アセビはルピナスと芋虫が会話できる日が訪れることを祈りつつ、仕事道具の確認作業に戻った。




