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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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覚醒!!最強パワーの問題児 2

「こっちも……暑いな……」


 アセビの口から自然と感想が漏れる。霧の森は相変わらず見晴らしが悪く、不気味なほど静まり返ってた。それだけでなく暑さまで追加されている。最低最悪な環境となってしまっていた。


「風も……ない、か」


 アセビは乱暴に汗を拭い、目的地のリラの小屋に向かおうと一歩足を踏み出した。

 その時である。


「まってぇ……」


 アセビの耳に聞き覚えのある声が届く。振り向くと例の穴からルピナスが這って出てくるのが目に映った。彼女は服だけでなく、顔も土で汚れている。急いでアセビのあとをついてきたのだろう。


「ルピナス? どうしてお前がここに?」

「うん」


 ルピナスは肩で息を切らしながら立ち上がり、アセビに抱きついた。

 霧の森では、モンスターや野生動物はなかなか姿を見せない。しかしそれは必ずしも絶対的な安全の保証になるわけではないのだ。

 ルピナスは以前ゴブリンに拉致されたことがある。アセビのことを心配してついてきたのだ。


「ひとりじゃ危ないよぅ。役に立たないかもしれないけど、ぼくもいっしょに行くよぅ」

「そっか! わざわざサンキューな! じゃあいっしょに行こうぜ」

「うん。行こう」


 動向の許可が出た瞬間、例の穴から何者かが飛び出す姿がアセビとルピナスの瞳に映る。

 奇襲を警戒し、アセビは素早くグータラソードの鞘に手を伸ばす。ルピナスも契約の本を取り出した。

 しかしそこにいたのは凶暴なモンスターではない。見知った顔であった。


「あれ? お前は……」

「触覚ちゃん?」


 アセビとルピナスの目の前で、触覚が体を上下に動かして存在をアピールしている。例の穴から飛び出したのは彼女だった。

 触覚はルピナスが契約している芋虫の仲間だ。凶暴なモンスターではない。


「凶暴なモンスターじゃなくて安心したぜ。多分だけど触覚はルピナスにくっついて来たんじゃないか?」

「う? そうなの?」


 触覚は何度も頷いている。楽しそうに体をルピナスのブーツに擦り付けていた。

 アセビ一行は、これまで触覚と何度か行動を共にしている。契約はしていないが見知った存在だ。

 そんな触覚にとって、アセビ一行は大好きなお兄ちゃんやお姉ちゃんのような存在だった。どうしてもいっしょに行動したかったのだろう。

 アセビは触覚の背中を撫でると、正面を指差して歩き始めた。


「触覚、ルピナスから離れようとしないな。この森は迷いやすいからよ。こっちに行くぞ。ついてきてくれ」


 触覚は依頼人を運んだことを褒められ、ルピナスに水を飲ませてもらった。その結果、もっと構ってほしくなり、我慢できず勝手についてきてしまったのである。根っからの甘えん坊気質なのであった。


「触覚ちゃん、迷子にならないようにね」


 ルピナスの声に反応し、触覚は瞳を輝かせその場で元気に飛び跳ねた。どっちにしろ帰れと言われても、ついてくるつもりだったに違いない。

 ふたりと1匹は霧の森を歩み始めた。


「ねぇアセビ。そういえばさっき、気になることがあるって言ってたよね」

「ああ、いつも調査するときに使う地図あるだろ? ほら、これこれ」


 アセビはポケットから地図を取り出し、ルピナスに手渡した。

 アセビ一行のメインの仕事は霧の森の調査だ。この地図はそれに大いに役立っているのである。


「本当にわかりやすい地図だよね」

「これをくれた子に会いに行きたくてね。あの子トラブルに巻き込まれやすいタイプなんだ。最近暑いしちょっと心配でさ」

「霧の森もすごく暑いし何もないといいね」

「その子は小屋に住んでるんだ。もし確認して無事ならすぐに帰ろう」


 ルピナスはアセビの言う人物に興味を抱きつつ、見慣れた地図に目を落とす。手作り感あふれる作りだが、どこに何があるかしっかりわかる。よくできていると言わざるを得ない。


「この地図を作った人かぁ……」

「人見知りするタイプだけど、根は良い子だよ。お前ならすぐ仲良くなれると思う」

「不安だなぁ。その子の特徴教えて」


 アセビはリラの容姿を思い出す。天使のように可愛らしい顔。長い紫色の綺麗な三つ編み。森で行動しにくそうな紫色の服装。

 アセビは早速ルピナスにリラの特徴を教えることにした。


「年齢は多分マーガレットと同じぐらいで……」

「うん」

「顔は可愛い系で……」

「……うん」

「全身紫! って感じで……」

「もしかしてあの人?」


 アセビがルピナスの視線を追う。そこには地面にうつ伏せに倒れている紫の少女が、いた。

 リラその人である。


「正解!」

「おお!」

「リラちゃん! 大丈夫か!?」


 アセビは急いでリラに駆け寄った。ルピナスと触覚も後に続く。抱き起こすと、顔が真っ青になっていた。健康面が正常でないのが見て取れる。


「死んでるの?」

「いや死んでないだろ! リラちゃん、ちょっと失礼するよ!」


 アセビが急いでリラの口に手を置くと、手のひらに息が当たった。呼吸はしている。死んではいないということになる。

 しかし手に当たる呼気が弱々しい。このままでは命が失われてしまう可能性もある。


「生きてる? 死んだ?」

「ちゃんと生きてるからな! でもちょっとあまり良い状態じゃなさそうだぜ」


 アセビはリラの体を強く揺すり、意識を戻そうとするが自体は好転しない。彼女の口元を見ると、僅かに動いているのが確認できた。アセビはそれに耳を近づける。


「み……み……」

「みみ?」

「……ず……」

「ず……?」


 ルピナスが手のひらに拳をぶつけて目を見開く。彼女の導き出した答え。それは――


「ミミズ!」

「いや違うって! 水だろ! この状況でミミズってどういうことだよ!」

「ミミズが好きとか?」

「う〜ん、どうでしょう」


 アセビはルピナスの発言をスルーし、急いでさっと地図を広げた。彼の記憶が正しければ、現在地からすぐ近くに池があったはずなのだ。マーガレットと以前訪れたことがあり、そのときのことを覚えていたのである。


「確か池はこっちだな! 急ごう! この子に早く水を飲ませてあげないと、大変なことになる!」

「アセビ、急ごうよ!」


 慌てるアセビとルピナスを見て、触覚が動く。頭を使って急いで背中にリラを乗せた。触覚は周囲の空気を察し、自身が何をするべきか考えて行動できる程度の知能はあるらしい。


「触覚助かる! リラちゃんを運んでくれるんだな!」

「触覚ちゃん、グッジョブ! 落とさないように、ぼくも乗るからね!」


 ルピナスは触覚の背中にまたがりながら、リラが落ちないように両手で押さえた。


「こっちについてきてくれ! 急ぐから全力ダッシュで頼むぞ! はぁぁぁ、ストレングス!」

「触覚ちゃん、ゴーゴー!」


 アセビは得意の身体強化魔法を使い、目的地の川へと急いで走った。

 触覚は負けじと足を必死に動かしながら、スピードを上げていく。

 しかし本気を出して走るアセビには、なかなか追いつくことができない。距離が少しずつ開いていく。


「アセビ早い! あ、でもぼくとこの人が乗ってるから触覚ちゃんきついのかな?」


 小柄なルピナス、華奢で細身なリラ。ふたりの体重を合わせてもマーガレットより軽い。つまり許容範囲の重さなのである。ルピナスは責任を感じているが、気負うことはないのだ。

 アセビ、ルピナス、触覚は1秒でも早くリラに水分を与えたいという思いでいっぱいだった。


「見えた! 川だ! 水は腐る程あるぜ!」


 1分ほど走るとアセビの目に目的地の川が見えた。水は透き通っている。問題なく口にできるだろう。

 アセビは少しずつスピードを落とすと、触覚に指示を出すために足を止め、振り向いた。


「触覚、そろそろスピードを落としてくれ! 背中のリラちゃんに水を飲ませ……」


 触覚は必死だった。背中に乗せた謎の少女を助けたい一心で、スピードを上げ続けていたのである。

 車は急に止まれないという言葉があるが、それはキャタピラーも同じだ。触覚はアセビの指示に従い、急いで足を止めようとするが、加速した体は急に止められなかった。


「ひゃ〜! 触覚ちゃん! 早すぎるよぅ! そろそろ止まってよぅ!」

「あっ」


 ルピナスとリラを乗せた触覚は、そのまま池に吸い込まれるように突撃した。

 アセビは後に語ったと言う。その姿は、恐れを知らぬ気高い魂を持つ勇姿のように見えた、と。

 ドボンという凄まじい音とともに、ルピナスたちはアセビの眼の前から姿を消した。その勢いは凄まじく、水が自然の雨のように舞っている。先ほどまで穏やかだった池は、激しく揺れ動いていた。

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