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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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その名はブラック・ブリッツ・ブレード 11

「おはよ……」

「おはよう……」

「よ! ふたりとも遅かったな」

「おはよう」


 マーガレットとサツキが目を覚ましてリビングに行くと、すでにアセビとルピナスが席についていた。テーブルの上には小さなパンと牛乳が並べられている。朝食の準備をすませて、マーガレットとサツキが起きるのを待っていたようだ。

 ふたりは気まずそうに頭をかいた。


「ちょっとだけ待ってて! すぐ戻って来るから!」


 マーガレットとサツキは急いで洗面所へ向かった。寝坊コンビは高速で歯を磨き、顔を洗っている。遅れてしまったことを気にしているようだ。

 全ての作業を終わらせると、マーガレットとサツキは滑り込むように席についた。


「えへへ……」

「ごほんごほん……待たせたな」

「気にするなって! つーか別にゆっくりでもよかったんだけど」

「マーガレットはともかく、サツキが寝坊するって珍しいねぇ」


 サツキの寝坊の原因は、マーガレットのファッションショーに付き合ったことだ。それがわかっているからだろう。マーガレットは気まずそうにうつむいている。

 サツキは可愛い問題児な妹分をフォローするため、慌ててアセビに向かって声をかけた。


「アセビ! 遅れた私が言うのも心苦しいのだが、そろそろ朝食を……」

「ああ! いただきます!」

「いただきます!」


 みんなのお家に、いつものようにアセビ一行の元気な声が響き渡る。今日という日が始まったのだ。

 アセビはパンを口内に入れながら、マーガレットに目を向けた。


「あれ? お前そんな服持ってたっけ?」

「えっ!?」


 アセビがマーガレットの衣類に感心を持つことは滅多にない。超絶レアイベントである。

 マーガレットは嬉しそうに笑っていた。


「えへへ! よく気づいたわね!」

「うん、何だろうな。すごく似合ってると思う」

「そ、そう!? ほら! ここ見て! 黒のラインが入ってるの! これが最高にキュートよね!」

「ああ、だからいつもと違う感じがしたのか。うん、可愛いよ」


 マーガレットは、心の中で感謝の言葉を例の服屋の店員に送った。アセビに褒められたことが、嬉しかったようだ。マーガレットは満面の笑みを浮かべたまま、パンを1口で食べてしまった。

 ルピナスが首を傾げた。どうやら気になることがあるらしい。感じた疑問を言葉にするため、口を開いた。


「ねえマーガレット。今着ているワンピース初めて見るんだけど、いつ買ったの?」

「これ?」


 マーガレットは素直にサツキにもらったと言おうとしたが、口をつぐんだ。昨日の件は、自分たちだけの秘密にしておきたいと考えたのだ。

 マーガレットは唇に人差し指を当てると、ウインクをしながら口を開いた。


「えへへ、な・い・し・ょ! 素敵な黒い女神様にもらったのよ!」


 黒い女神様。当然サツキのことである。マーガレットは純粋無垢な気持ちで口にしていた。彼女にとって昨日のサツキは女神だったのだ。


「ぶっ!?」


 サツキはマーガレットの言葉のせいでパンを喉に詰まらせてしまい、牛乳を急いで口に流し込んだ。ルピナスが心配して立ち上がると、背中を何度も叩いた。


「サツキ!? 大丈夫!?」

「おいおい! ほら、もっと牛乳飲みな!」


 アセビは空になったコップに急いで牛乳を注ぐ。サツキは片手を上げ、平気なことを主張した。


「だ、大丈夫……」

「おいおい大丈夫か? パン大きかったか?」

「早く吐いて! 飲んで! 吐いて!」

「本当に大丈夫なんだ。心配をかけてしまったな……」


 サツキは先程のマーガレットの発言を思いだし苦笑する。人々から黒鬼や魔神と恐れられている。そんな自分が女神様とは。どう考えても似合っていない。無理がある。絶対違う。サツキはそう感じつつも、女神様扱いも悪くはないと思っているらしい。満更でもない表情を浮かべている。


「フフフッ」


 サツキがマーガレットを見ると、両手を合わせながら舌を出して、謝罪のポーズをとっている。ふたりは互いに苦笑し、牛乳を口にした。




 朝食が終わると、アセビたちはそれぞれ自室に戻り仕事の準備を行っていた。これを怠るようでは、冒険者としては未来永劫3流だ。

 サツキは愛用のヤグルマソウ、オトギリソウ、マーガレットにもらった剣を腰に差して、部屋を出た。すでにアセビたちは準備が終わっていたらしい。みんなのお家の入口前で待っていた。


「サツキも来たな。では早速行きますかね」

「今日も何事もなく終わるといいなぁ」

「はは、大丈夫だって。ん?」


 アセビの目にサツキの刀と見慣れぬ剣が映る。


「サツキ? お前そんな剣持ってたっけ?」

「う? 本当だ。いつもの刀とは違うね」

「あぁ」


 アセビは見ていないようで、仲間のことはしっかりと見ている青年だ。彼の発言でルピナスも気づいた。興味津々にサツキの腰に差された剣を見つめている。鞘をぺたぺたと触り始めた。

 サツキは小さく笑うと、得意げな顔で腕を組んだ。


「フフフッこれは白い天使からの贈り物でな。私だけの大切な剣なんだ」

「へぇ、お気に入りなんだな。お前がいつも使っている刀とは違うタイプの武器だけど」

「剣をプレゼントされたの? 物騒な天使だね」

「はは、物騒ではないよ。自由で元気で愛らしい、素敵な可愛い天使さ」

「天使……」


 天使。当然マーガレットのことである。サツキの本心からの言葉だった。彼女にとって可愛い問題児な妹分は天使なのだ。

 マーガレットは嬉しさのあまりサツキに抱きつこうと思ったが、ギリギリの瀬戸際で踏みとどまった。もし実行すると、その理由を言わなければならないからだ。

 マーガレットとサツキは互いに視線を一瞬交わし、意味深に笑い合った。問題児と黒鬼。天使と女神。ふたりは本当の姉妹のように互いのことを大切に想っていた。


「えへへ!」

「フフフッ!」


 マーガレットとサツキは、アセビとルピナスの背中をぐいぐいと押し始めた。まるで1秒でも早く、冒険者ギルドに行きたいと言わんばかりの行為。アセビは思わず笑ってしまった。


「はは、ふたりともどうしたんだよ?」

「さ、お仕事お仕事! 今日もお金稼がないとね!」

「フフフッ護衛は私に任せるのだぞ?」

「お前たち妙に気合い入ってるな? じゃあみんなで早速お仕事に行きますか!」

「はーい!」




 アセビ一行は、全員で横一列に並び、仲良く冒険者ギルドへと向かっていた。周囲はまだ通行人が少ないのだが、通りの店の扉が次々と開かれていく。朝が早いのは冒険者だけではない。それは商人たちも同じなのだ。

 マーガレットが列から勢いよく飛び出し、元気よく手を挙げた。


「あっ、そうだアセビ! 昨日人気の洋服屋さん行ったの! サツキに似合う和服もあったのよ!」

「むっ! マーガレット! 私は絶対にあの服は着ないからな! 絶対にだぞ!」

「へぇ、オレちょっと見てみたいわ!」

「ぼくも!」


 アセビはニヤニヤと笑うマーガレット、羞恥心で顔を真っ赤にするサツキを見比べる。彼女たちは先程から互いに意味深な発言をしている。昨日何かあったと察するが、それを追及すのは無粋と感じたため、根掘り葉掘り聞くのはやめにした。

 大切な仲間たちが絆を深めることは決して悪いことではない。ならば自分にできることは、温かく見守ることだけだと、アセビは空気を読んだのである。


「よし、帰りにその洋服屋寄るか! サツキに似合う和服見たいのはマジだしな!」

「アセビ。そう言えばお前は私を辱しめるのが好きな鬼畜な男だったな? フフフッそうかそうか……」

「あれ、なんかオレスイッチ踏んじゃいました?」

「踏んだわよ。勢いよく踏んだわよ」

「強く生きてほしい」


 アセビ一行が冒険者ギルドに到着すると、すでに掲示板の前には多くの冒険者たちが集まっていた。早く向かわなければ、希望の仕事を先にとられてしまうかもしれない。アセビは小走りで掲示板に近づいた。


「今日はどんな仕事があるかなぁっと」


 マーガレットとサツキは最後にもう1度だけ視線を交わすと、小さく笑い、そっと頷き合った。


「今日もお仕事がんばるわよー!」

「フフフッ!」

お読みいただきありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク、評価を何卒よろしくお願いします!

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