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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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究極バトル!!三大スーパー問題児 13

 食事を負えたアセビ一行は、森を歩いていた。アセビたちにとっては見慣れた場所である。

 しかしマーガレットは違う。彼女は記憶を失っているからだ。


「結構静かなのね! 大自然って感じ!」

「お前はよくここで薬草採ってたんだぜ」

「お仕事ね? あたし色々チャレンジしてたのね」


 マーガレットは物珍しそうに周囲を見回している。アセビたちはそっと見守っていた。

 マーガレットは、どこかすっきりとした表情を浮かべている。胸に抱えていた本心を、全て吐き出せたからだろう。負の感情は一切見られない。


「森って結構涼しいのね。居心地がいいわ」

「今度みんなでおひるねしようね」

「あら素敵!」


 ルピナスの提案に魅力を感じたらしい。マーガレットは目を輝かせていた。

 しかし森にはモンスターや野生動物が出現することがあるため、安心して眠るには見張りが必要だ。みんなでひるねはできないだろう。


「むぅ……こうして見ていると、いつものマーガレットにしか見えないのだが……」


 マーガレットは、笑顔で楽しそうにルピナスと世間話をしている。アセビにとっても見慣れた日常風景なのだが、実際には違う。

 マーガレットは記憶を失っている。


「サツキ、そんな顔するなよ! 大丈夫だって!」


 アセビの言葉は願望に近い。説得力に欠けていたのだが、サツキの不安を和らげる効果はあった。彼女はアセビの手を握ると、大好きな妹分たちの元へと向かった。


「どうだ? 何か思い出したか?」

「ごめんなさい。正直何も思い出せないわ。でも不思議ね。何故か懐かしい感じがするの! 体は覚えているってことなのかもしれないわね!」


 アセビはマーガレットが気を使っているのではと考えたが、表情や仕草を見るに本当のことなのだろう。疑うことをやめ、素直に信じることにした。


「次はあっちに行きたいわ!」


 マーガレットの人指し指は、記憶を失うきっかけとなった山岳地帯に向けられていた。ある意味始まりの地でもある。

 ルピナスは昨日のハーピーとの戦いを思い出したらしく、体を恐怖で震わせていた。


「怖いよぅ」


 ルピナスの脳裏には、白目を向いて倒れたマーガレットの姿が焼き付いていた。また何かしらの事故で頭を打ったら、次は記憶でなく命が失われる可能性もある。

 アセビも難色を示し、腕を組んで唸り始めた。


「う~ん。確かにハーピーにはオレがそれなりにダメージを与えたが……絶対出てこないとも言えないぜ。倒したわけじゃないからな」

「うむ。私もあまり賛成できない」

「大丈夫よ! もしハーピーが襲ってきたらあたしに任せて!」


 マーガレットは手のひらを正面の大木へと向け、ダイス状の氷を勢いよく発射した。凄まじい衝撃音が森に響く。大木はゆっくりと倒れ、枝に止まっていた小鳥たちが勢いよく飛び去った。


「おぉ〜!」


 アセビたちは思わず感嘆の声を漏らす。マーガレットはブイサインを作り、得意気な表情だ。


「あたしがみんなを守るわ。だからみんなはあたしを守ってね!」


 マーガレットは手を後ろに組んで、アセビたちに満面の笑顔を見せる。みんながいるから不安や恐怖などは何もないと言わんばかりの態度だ。

 完全に信用しきっている。アセビは山岳地帯には行かないと言えなくなってしまった。


「オッケー。だがあそこは言わばハーピーのホームグラウンドだ。長居は無用、行ったらすぐ戻るぞ」

「はーい!」


 森にマーガレットの声が響き渡る。彼女は記憶を無くしてしまったが、元気は失われていない。その事実が不思議とおかしく、アセビは頭をかいて苦笑した。




「へぇ……ボコボコしてるのね」

「いつかみんなで山登りでも行くかね?」

「行きたいわね!」


 アセビたちは山岳地帯へと足を踏み入れていた。美しい大自然に囲まれた森とは違う。こちらはゴツゴツとした岩、山へ続く険しい道、モンスターの巣として利用されていた洞穴しか目に映らない。

 マーガレットは興味津々に、周囲を忙しなく見渡している。


「あの穴に入ってみましょ!」

「構わんがモンスターがいるかもしれないぞ。気を付けて入ろう」

「大丈夫だよ。あの巣に住んでいたゴブリンは、サツキが全員バラバラにして殺したから」

「う、うむ……」


 ルピナスは笑顔だが、サツキは気まずそうな空気を漂わせている。彼女は以前闘争本能を刺激され、ゴブリンたちを惨殺したことがあった。

 ルピナスの情報を聞き、マーガレットはサツキの腰に差した刀に目を向ける。


「あなたすごいわね! それで殺ったの? あたしも見たいわ! もしかしたら記憶が戻るかも!」

「うむ……また今度……な」


 サツキは顔を赤くしながら目を伏せ、体を震わせている。どうやら既成事実未遂事件と同じぐらい、忘れたい過去の過ちらしい。

 アセビはこれ以上サツキに大きな精神にダメージがいかないよう、助け船を出すことにした。


「マーガレット、そろそろ森に戻ろうか」

「あら? もう戻っちゃうの? あたし結構ここ気に入ったかもしれないわ」

「サツキがゴブリンバラバラにした場所なのに?」

「……うむ」

「う、うん! 森に戻ろうか! 戻ろう!」


 ルピナスの無自覚な言葉の刃がサツキに刺さる。悪意のない悪意。これが1番タチが悪い。

 アセビは女子たちの背中を押して、無理やり洞窟の外に押し出した。


「マーガレット、記憶は?」

「まだ戻らないわね。でもみんなといっしょに森や洞窟を見学できて楽しかったわ。あたしにとってこれは素敵な思い出よ!」

「そっか。なら良かった。じゃあそろそろみんなでまた森に戻って……」


 アセビの言葉が止まる。

 視線の遥か遠くに、空を支配する女王が目に入ったからだ。彼女は獲物を見つけたハンターのように、舌なめずりをしている。

 アセビは女王の翼を見た。傷は癒えている。完全に。

 女王が口を開く。


「全員元気そうじゃないか。そこの白頭巾、アタイが素敵なものをプレゼントしてやるよ! 地獄行きの招待状をね!」

「女王サマのお出ましか……」

「アハハハハ!!」


 山岳地帯にハーピーの笑い声が響く。和やかな空気は消え去った。アセビ一行の間に緊張感が走る。

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