究極バトル!!三大スーパー問題児 11
「芋虫さん! 足を狙って糸を吐いて!」
ルピナスは芋虫の背中に乗り、必死の形相で指示を送っていた。その目にはサツキが映っている。彼女は黒い閃光の如く素早く動いていた。
「は、早いよぅ! 早すぎるよぅ!」
サツキは常に素早く動き回っている。これでは芋虫も糸を吐けない。焦るルピナスを見て、サツキはアドバイスを送ることにした。
「ルピナス、足を狙うのは正しい! 動きを止めればどうにでもなる! だが、相手が素早い場合は……どうすればいいと思う?」
「うぅ……わからないよぅ……」
ルピナスは必死に耳を傾けていた。実戦経験豊富なサツキのアドバイスは、何よりもためになると思っているのだ。
「何も足に拘る必要はない! 確実に狙える箇所を狙うんだ! 糸が絡み付く時点で、ある程度相手の動きを制限できるからな! さぁ、どこを狙う!?」
「は、はいっ! ね……狙いやすい場所……」
ルピナスは瞬きするのも忘れて、動き回るサツキを必死に見つめる。頭をフル回転させ、脳内で糸をどこに吐くべきか考え始めた。
「フフフッ」
ルピナスは自分で考え、答えを出そうとしている。その姿を見てサツキは口元を緩めた。妹分の成長が嬉しいのだろう。
ルピナスは瞳を見開き、芋虫に指示を出した。
「芋虫さん! サツキの胸かお腹を狙って!」
芋虫は指示を受けてすぐ胸に向かって糸を吐く。サツキは木刀を構えて受け止めた。あっという間に糸が絡まる。武器としては使用不可能となってしまった。
ルピナスは流れるように再度指示を出す。
「芋虫さん! 木刀を奪って!」
芋虫が顎を引くと、サツキの手から木刀は離れ、そのままルピナスの手に収まった。
「やった!」
サツキは動きを止め、微笑んでいた。
どうやら実戦形式に近い模擬戦をしていたらしい。逃げ回るターゲットをどう捕まえるか。その場面を想定したものだった。
サツキは拍手をしながらルピナスに近づく。頭を優しく撫でた。
「お見事。避けにくい場所を狙われたら、武器で守るしかなくなるからな。良い指示だったよ」
「サツキのアドバイスのおかげだね」
「それでも自分なりに答えを出したんだ。それが何より大切なんだ」
「うん」
「もっと強くなれる。お前も、芋虫も」
「うん!」
ルピナスと芋虫は瞳を輝かせ、サツキを見上げる。彼女はまだ若いが、歴戦の猛者と言っても差し控えのない実力者だ。そんなサツキに成長の可能性を示された。嬉しくないわけがない。
ルピナスの瞳はやる気と希望で燃えていた。
「芋虫さん! がんばろうね!」
ルピナス自身、キャタピラーは十分戦える力があると思っている。何も命のやり取りだけが戦いではない。相手の戦意を奪えば、それは勝利と同じなのだから。
「私が思うに芋虫は集団で……」
サツキの足元が揺れた。触覚が顔を出している。クレマチスからシャクナゲを移動するときに、アセビ一行を運んでくれた芋虫の仲間だ。
目を丸くして驚くサツキに対し、ルピナスは両手を合わせて頭を下げた。
「芋虫さんに触覚ちゃんを呼んでもらったよ。次は2匹同時に指示を出せるように練習したいの。サツキ、いいかな?」
「ああ、構わない! 全員で協力してこの私を捕まえられるかな?」
「芋虫さん、触覚ちゃん! がんばろうね!」
サツキは芋虫は集団で戦ってこそ実力を発揮すると考えていた。経験を積めば、移動手段だけでなく、戦闘でも頼りになる存在になるかもしれない。
サツキは今後のルピナスと芋虫たちの活躍に期待しながら距離をとった。
「これぐらいでいいか。よし、では私が合図をしたら模擬戦開始だ。逃げ回る私を芋虫と触覚と協力して……」
サツキの説明が終わる前に、触覚が糸を吐いた。狙いは彼女の両足だ。あっという間に糸が絡まっていく。サツキはバランスを崩して、勢いよく倒れてしまった。
「あっ……」
触覚は顎を引き、素早くサツキを引き寄せた。ずるずると引きずられている。サツキはルピナスの目の前に戻されてしまった。
触覚は得意気な表情を浮かべている。
「ひゃ~! 触覚ちゃん! まだスタートしてないのに攻撃したらダメだよぅ!」
「フフフッ……奇襲もまたひとつの戦略だ。今のは見事だったぞ」
サツキが腕を組ながら称賛すると、芋虫たちは嬉しそうにその場で跳び跳ねた。ルールを無視したうえでの戦果なため、ルピナスは複雑に思っていたが。
しかし実戦では必ずしも正面から戦うことになるとは限らない。ルピナスはこういう戦い方もあると割り切ることにした。
サツキは少しずつ技術を吸収する妹分の成長に喜びつつ、気まずそうな顔で口を開く。
「……ルピナス。言いにくいのだが、足に絡まった糸を切ってもらえないか?」
「ひゃ〜! ごめんなさ~い!」




