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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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夢見る乙女は眠れない 13

 サツキとウツギは長い廊下を駆け抜けていた。片手には救急箱。無論、アセビの手当をするためだ。

 すでにマーガレットのヒールで痛みは治まり、傷は塞がっている。焦る必要はないのだが、サツキとウツギはそのことを知らない。

 

「アセビ殿の手当をせねば! 急ぐぞ!」

「親父……ごめん」


 サツキの声が、ウツギの耳に届く。アセビのことは全て頭から吹き飛んだ。父娘は互いに足を止め、見つめ合っている。

 サツキは神妙な面持ちで言葉を続けた。


「心配かけた……よね。急にいなくなったんだから」

「いや、わしこそすまなかった……お前をキサヌキ家から追放したつもりはなかった……ついカッととなって心にもないことを言ってしまった……」

「親父……」

「許せとは言わん。だが、本当にすまなかった……」


 ウツギはサツキにぶつけた言葉を、心の底から後悔していたのだろう。その表情は暗い。

 サツキはしばらく考え込んでいたが、ひとつの結論を出した。


「じゃあどっちも悪かったってことで……」

「うむ、そういうことにしておこうか……だがお前の心を傷つけてしまったことは、反省しなくてはな」

「私傷つけられるの嫌いじゃないから、別に反省しなくていいんだけど」

「やっぱお前母さんの娘だわ……あっ! アセビ殿の頭の傷!」

「わ、忘れてた! 親父、急ごう!」

「うむ!」


 サツキとウツギは再び廊下を駆け抜ける。

 互いにどうしても言えなかった言葉を、相手に素直に言うことができた。父娘の失われかけていた絆は元に戻ったのである。


「……っていうかこれってさ」

「……うむ」


 サツキとウツギは、アセビが計画した仲直り作戦にまんまと乗せられたことにようやく気づいたらしい。気恥ずかしく思いつつも、互いに心の底から感謝するのだった。




「アセビ、すまない!」

「アセビ殿! おや……?」


 サツキとウツギが道場に戻ると、すでにアセビの頭の傷は癒えていた。元気に竹刀を素振りしている姿が目に映る。

 カエデがニコニコと笑いながら、父娘の手を掴んだ。


「マーガレットちゃんが治してくれたんよ! 回復魔法? ってやつや。西の子ってすごいわぁ!」

「そうだった……傷のことは、マーガレットに最初からお願いすればよかったんだ」


 マーガレットが得意気な顔でブイサインを作った。

 申し訳なさそうにアセビを遠くから見つめる父娘の間に、カエデはニヤニヤしながら無理やり入り込んだ。


「サツキちゃんもお父さんも、仲が良すぎてちょっと妬けるわぁ! お母さんも間に混ざらせてもらうで!」

「ちょっとお母さん!」

「か、母さん……」

「……ふたりとも、アセビさんに感謝せんとね」

「……うん」

「……うむ」


 サツキとウツギは気まずそうに頷く。それを見たカエデは手を叩き、注目を集めた。


「さっ! そろそろみんなでご飯さんにしよか! でもその前に、お風呂に入って体を綺麗にしてからや!」

「みんなで入ろう。我が家のお風呂は広いから、みんなで手足を伸ばしてゆっくりできるぞ」

「シャクナゲのご飯さん!」

「広いお風呂なんだね。嬉しいなぁ」


 カエデとサツキの言葉を聞いて、マーガレットとルピナスは楽しそうに手を握り合った。みんなのお家は風呂場が狭く、女子3人でいっしょに入ると、動くのも困難な状態になってしまうからだ。

 しかしキサヌキ家は格が違った。風呂は相当広いらしい。

 ウツギはアセビに近づくと、肩に手を置く。


「さ! アセビ殿。我々も風呂に参りましょう! 男女それぞれ専用の風呂場になっておりますゆえ、男同士で楽しみましょうぞ」

「すごいですね。男女別に風呂場があるなんて」

「この屋敷を作った初代当主が、わざわざ作ったらしくてね。多くの弟子を抱えていたらしく、その家族もいっしょに入れるようにと」

「心の広い方だったんですね。でもいいんですか? 部外者のオレが当主のウツギさんといっしょって。ちょっと恐れ多いと言うか」

「ふふ、遠慮なさるな。当主という地位はあるが、わしはどこにでもいるただの親父ですゆえ。それにだ。アセビ殿、あなたとはじっくり話したいこともありますのでな」


 ウツギはそう言うとアセビの背中を押した。風呂場へいっしょに行くように促している。アセビはここまで言われて遠慮するのは失礼と判断した。ウツギの誘いを受けることにしたらしく、笑顔で頷く。


「ではお言葉に甘えて」

「ふふ」


 アセビは父娘の表情を一瞥した。ふたりとも心から穏やかな笑みを浮かべている。無事に仲直りできたとアセビは確信する。犠牲になっただけのことはあったのだ。


「実は男女共有の風呂場もあるんですよ。全員でそちらに行きますかな?」

「それはちょっとまずいと思います!」

「ふふ、ではまた今度ということで」

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