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お庭に根付いた雑草どもは今日も元気に咲き誇る 〜ヒーラー、サモナー、ガーディアン、頼れる仲間は問題児〜  作者: 仔田貫再造


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夢見る乙女は眠れない 8

 サツキはむっとした表情で口を大きく開いた。


「はっ! 何が家出娘だ、不良娘だ! 私は最初から家に入るつもりなどない!」

「むむっ!」

「ちょっとふたりとも落ち着いてや! お客さんの前やで!」


 サツキの父親は久々に帰ってきた娘のことで頭がいっぱいだったらしい。カエデに言われ、ようやくアセビたちの存在に気づいたようだ。彼らに向ける目は穏やかだった。先ほど怒声を放った人物とは思えない。


「これはお見苦しいところをお見せしましたな。失礼した。わしはキサヌキ家当主、ウツギ・キサヌキ。お客人たち、歓迎しますぞ」

「はじめまして! アセビ・ワビサビーです! ウツギさん、よろしくお願いします!」

「あたしはマーガレット! おじさんよろしく!」

「ぼく……ルピナス……」


 ウツギはしばらく顎に手を当て考え込んでいたが、手を叩いてアセビたちの元へと下りた。

 サツキは不機嫌そうな顔で首を鳴らしている。ウツギのことをずっと睨みつけていた。


「新聞で見ましたぞ! あなた方は街を滅ぼす力を持つ化物を倒したと! まだお若いのに、流石と言ったところですな!」

「いやぁ、正直運が良かっただけなんで……」

「運も実力のうちと言いますぞ。そうご謙遜なさらなくてもよろしい」

「サツキさんがボロボロになりながら戦ってくれたんですよ。彼女がいなかったら、きっと不死王リッチには勝てなかったと思います」


 ウツギは一瞬嬉しそうに口元を緩めたが、すぐにつまらなさそうな顔をしてサツキを見つめた。明らかな挑発行為だ。

 サツキは額に青筋を浮かべながら、首を回して黙っていた。


「どうでしょうな。あなた方3人だけで倒せたと思いますがね。こやつの実力は10点満点で評価すれば、せいぜい3ぐらいでしょう。いてもいなくても変わりませんな。ガハハ」

「そんなことないですよ。勝てたのは本当にサツキさんのおかげなんですけどね……」

「そうよ。リッちんにヒール当てられたのは、サツキの粘りがあったからだもの!」


 サツキは震える声で言葉を吐き出した。


「ほ〜。私の実力が3なら、どこぞの引退間近の老害に片足突っ込んだ親父は1か? いや点数を付けるのもおこがましいかもしれないな! フフフッ」


 今度はウツギが額に青筋を浮かべた。効いてないアピールだろう。必死に笑顔を作っている。


「ハハハッ!」

「フフフッ!」


 お互いに笑いあう姿は、遠目で見ると仲睦まじい父娘に見えなくもない。しかし現実はお互いに必死に怒りを堪えているという状況なのである。

 異様な緊張感が周囲を支配しているが、ついにその時が訪れてしまった。


「吠えたな小娘! その無礼極まる行為、ご先祖様や母さんが許してもこのわしが許さん!!」

「今この場で人生からも引退させてやろうか! どうなんだ親父!!」


 お互い感情を爆発させ、腰の刀を抜いた。命がけの死闘が始まろうとしている。

 アセビは急いでサツキの腕を掴み、カエデは両手を広げてウツギの前に立ち塞がった。


「サツキ! ちょっと待てって! 今は身内で争ってる場合じゃないはずだろ!? シャクナゲに来た目的を思い出すんだ!」

「お父さん! ええ加減にせんとウチも怒るで!」

「むぅ……」

「うむ……」


 サツキもウツギも刀を鞘に納めた。

 いつまでも睨み合っていても話は進まない。アセビは思ったことをそのまま口にした。


「父娘喧嘩は終わりってことでいいですかね? 早速で申し訳ないんですが、カエデさんの用件について聞かせていただきたいなと」

「そうね! あたしたちはそのためにみんなでシャクナゲに来たんだもの!」

「うん」


 ウツギは首を数回横に振り、頭をかきながらアセビ一向に背中を向けた。年甲斐もなく、本能のまま暴れそうになった自分自身が恥ずかしくなったらしい。


「はは……皆さん長旅でお疲れではないですかな? どうぞ遠慮なくお入りくだされ」


 ウツギは背中を向けたまま、早足に門をくぐった。

 アセビたちも先に進もうとするが、サツキだけは動こうとしない。鋭い眼光を門に向けている。


「サツキちゃん。どしたん?」


 カエデがサツキの背中を押すが動かない。足が石段に根付いたと錯覚させるほどだ。


「要件ならここで聞くけど」

「サツキちゃんそんな怒らんと!」

「別に? 怒って? ないけど?」


 サツキは明らかに怒っている。声に怒りの感情がこれでもかと込められていた。


「お父さん、本当はあんたがお家に帰ってきてくれて嬉しいんよ! ウチあの人と30年以上付き合ってるからわかるんや! でも素直に嬉しいって言えないんよ。お父さんはそういう人なんや」

「どうでもいいよ。お母さん、ここで手紙のこと全部教えて。さっさと用事を終わらせて……」


 サツキは口を閉ざした。アセビが背中をぐいぐいと押し始めたからである。


「ちょっ、アセビ!」

「どこで誰が聞いてるかわからないんだ。親父さんの言葉に甘えようぜ。大事な話は家の中で、だ」


 サツキは嫌だと言わんばかりに首を振った。


「見ただろ? あの親父は私のことを……」

「お前がただいまって言ってたら、多分親父さん普通に笑顔で受け入れてくれたと思うぜ! それにほら、家出娘や不良娘って言ってただろ?」

「それが?」

「追放したんじゃないってことさ。それにお前の活躍を嬉しそうに聞いていたじゃないか。やっぱ、ウツギさんはお前のこと大好きだよ」

「そんなことはないぞ!」


 サツキの活躍を聞いて、ウツギは一瞬嬉しそうな顔をした。アセビはそれを見逃さなかったのである。本当に嫌っているのなら、目の前に現れるはずがないのだ。

 マーガレットとルピナスはサツキの手を握り、ぐいぐいと引っ張り始めた。


「お前たちやめろ! 私は行かないぞ! 帰る!」

「おじさんお入りって言ってたじゃない? 突っ立ってないで早く行くわよ!」

「みんなで行こうね」

「歩けないならおんぶして運んでやろうか? それともお姫様抱っこでもいいぞ?」

「わかった、わかったよ! 行けばいいんだろ!?」


 サツキが吐き捨てるように叫ぶ。アセビたちは満面の笑みで背中を押し始めた。サツキは眉間にシワを寄せながらも、家に向かって足を進めている。

 カエデは目を丸くしていた。サツキは幼い頃から父親に似て頑固なところがあった。そんな娘が仲間たちに諭され、素直に言うことを聞いている。

 カエデはアセビに視線を向け、目を細めて意味深に頷くと、いっしょにサツキの背中を押し始めた。


「ちょっとお母さんまで!」

「お母さんも若い子たちに混ぜてもらうで! みんな仲良くお家にご案内や!」

「アセビ! さっきサツキに抱っこかお姫様抱っこで運んでもいいって言ってたわよね!」

「駄目だ」

「まだ何も言ってないでしょおぉぉぉ!?」

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