43.だがフィリスに第二の転機が訪れる-ここで第三の転機が訪れる事になる-
全44話です
明けましておめでとうございます
明日(1/2)の第44話でこの巻は完結になります。読んでくださって本当にありがとうございます!
続いて、同じく明日(1/2)に次作である「レイドライバー 22 -辿り着いたその先にあるものは-」を寄稿したいと思います
次作がこの長きにわたったレイドライバーシリーズの最終巻になります
次話の前書きと後書きにリンクを貼っておきます、引き続き読んでくださればとても嬉しいです!
もしよろしければ最後までお付き合いくださるととても嬉しいです!
だがフィリスに第二の転機が訪れる。売春宿が摘発を受けたのだ。それは何のことはない、売春宿が再開発地区にかかっていたからである。つまりは[邪魔だから]どかしただけに過ぎないのだ。それでもそこにいた住人、つまりは[商品]は助け出されて教会に保護されることとなった。
教会は実に誠実に保護してくれた。毎日の日課のお祈りこそ強要されたものの、それ以外は自由にさせてもらえたのだから。
そんなフィリスは少しの外出を願い出たのである。
「両親の墓参りをしたい」
そんな言葉を言った記憶がある。教会は一も二もなく了承してくれた。
「貴方に神の御加護があらんことを」
そう言って送り出してもらった先というのが、自分を売った元のねぐらである、スラムだ。そこでフィリスは一晩のうちに一人ずつ密かに寝込みを襲っていた。日にちをずらして一人ずつやったのでは直ぐにバレてしまう。だから一斉に、夜半の見張りがほとんどいなくなる、見張りの意味がなくなる時間を狙って仕留めていったのである。年齢はまちまちだが、グループとしては十数人はいただろう、そのひとグループを壊滅して見せたのだ。
グループ全員が死亡したのを確認してから、次に持っていたナイフであの部位を切り落として回った。それくらいしないと気が晴れない程に幼いその躰には、幼いその精神には耐えがたい半年だったのだ。
そして何事もなかったかのように教会へと戻っていった。
しかし、教会でもその尖った性格は災いした。気分が乗らなければ礼拝を頑なに抵抗し、気分が乗った時はそれはたいそう大人しく従う。まさしく勝気、気分屋に磨きがかかってしまったのだ。それほどにつらい経験をしてしまったというところなのだろう。
だが、そんな勝気な気分屋を許せるほど世間は甘くなかった。何度かの注意のあと、改善しなかった為に追い出されてしまったのだ。それくらいに教会も一杯いっぱいなのである。ただでさえ孤児院に入れない人間を引き取っていて、その資金源は、と言えば善意の募金が少々とほんの少しの財政支援が頼りの運営だ、問題児は即刻いなくなってもらわないといけない。神の御加護は、残念ながらお金のないものには付かないのである。
浮浪者に逆戻りだったフィリスだが、ここで第三の転機が訪れる事になる。
教会のシスターが[とある孤児院を尋ねてみてはどうか?]と助言してくれたのだ。どうもそのシスターの話では能力の高さをテストして上位の者は良い暮らしが出来るという。追い出したという気まずさもあったのだろう、そんな情報を渡してくれたのだ。
そして政府の息のかかった孤児院に入って、しばらく暮らしたのちにテストを受けて上位の成績を取り、例の孤児院へ移送、という運びになったのである。
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「そんな私が私でいられるのは、頭を弄ってもらったからなんだと思います」
クリスにしてみれば、研究所がどんな[調律]を行っているかは具体的には知る由もない。それは、研究所からすればどんな階級にいようともパイロット、サブプロセッサーであれば等しく被検体なのだ。そんな実験動物にいちいち事情など教えてもらえる程、研究所だってお人よしではない。ただカズからは[こちらの命令には絶対に逆らえないようにしてある]と以前に聞いたことがある。それほどの強力な[刷り込み]なのだろう、くらいには思っていた。
のだが、
「すみません、傷に触りましたよね?」
と尋ねてみるが、
「いいえ、こうして話していられる今の自分に感謝しているのです。時々衝動的に突き上げる感情も今ではだいぶコントロールが効くようになりました。これもすべてはマスターのお陰なのです」
かえってフィリスは清々しく見える。そんな彼女に、
「どうして……」
とまで聞いて、クリスはやっと自分を取り戻した。
――これ以上はいけない、聞いてはいけないのだ。
と。
クリスはそんなフィリスの話を聞いて、己の置かれている立場と、秘密を持つことの出来ないこの躰と、彼女の心情の狭間で少し揺れていた。
全44話です




