41.自分は嬉しいでありますよ、中尉殿-私を自由に使ってもらって構いませんよ-
全44話です
残り3話、次巻の第22巻でレイドライバーシリーズは完結になります
年末のひと時、一気読みしてくださっても、また、読み返してくださるのも大歓迎です!
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トリシャたちは既に旧イエメンに到着している。船便で、と言っても一時間も乗っていたかどうかくらいではあるが。
――私に引き金が引けるだろうか。
ふとそんなことを考える。今回の武装はマシンガンではない、ガトリングガンである。
ガトリングガンという武器は弾丸を[ばら撒く]兵器である。それはマシンガンについても言えるのだが、ガトリングガンはその親玉的存在なのだ。広範囲の複数の敵に対してはとても有効な武器と言えるだろう。一発一発の威力はマシンガンと比べると低めだが、それを補って余りあるほどの連射能力である。引き金を引きっぱなしにすれば毎分一千発以上の弾丸が相手を襲うのだ。だが、マシンガンほどの威力はない。それでも、軽車両くらいまでならこれで十分、たとえ相手が戦車であっても少し長めに嬲ってやれば行動不能に陥らせらせる事が出来るであろう。
それを今回、ゲリラに使用するのである。情報によれば、相手は生身、武装もせいぜいがRPG-2どまりという。
そんな相手にガトリンガンを向けたら? 結果なんてハナから目に見えているのだ。
しかし、カズはそれをやってこいと言う。つまりはレイドライバー二体で旧イエメンに巣くっているゲリラを討伐せよ、そういう命令なのだから。
「自分は嬉しいでありますよ、中尉殿」
シューフイだ。先ほど[おぉ]というどよめきと共に荷揚げされて武装を確認しながらそんな通信が入る。
「嬉しい、ね。頼りにしているわ」
と返すのがやっとである。
――確かに、ご主人様からあらかじめ彼女の情報は貰っているけれど。
だからトリシャが手を汚さなくてもいい理由にはならないのである。第一、トリシャは今回隊長機だ。その隊長が部下の後ろに隠れる、などというのは決してあってはならない事態なのである。
そんなトリシャの無言を何か含んでいる、と捉えたのだろう、
「私を自由に使ってもらって構いませんよ」
トリシャが願っている言葉が相手から零れ落ちる。
「そういう訳には……」
「私は殺人には慣れています。どんな惨状になっても耐えうるだけの性能を有しています」
と被せて返される。
「経歴は読んだわ。孤児院も悪趣味なことをする……とは言わないけど、貴方」
トリシャの脳内にアラートが鳴ったので慌てて言動を修正する。今のトリシャは悪態の一つも付けないほど強固に思考を制御されているのだ。
――縛ってもらえる、それだけで十分。
トリシャにしてみれば気持ちがいいのである。だが、現実に目を遣れば対人戦が待っているのだ。そこで先ほどの話である。
「私はそうやって殺人衝動を抑えつつ自分というものを保ってきました。いえ、もうすでに壊れているのかも知れませんね。記憶を消してほしいと願い、その記憶を抱えて生きて行けと言われたその時から、もう私は興奮が収まらないのです」
確かに、シューフイという人物は一見冷静そうに話してはいるが、何か我慢をしているようなと言うべきだろうか、何か引っかかるような態度を見せるのである。それがいわば興奮しているという事なのだろう。絶望を快楽へと変質させた人物、そんなところなのかも知れない。
――人の事は……言えないわね。
そう、かくいうトリシャだってカズの一挙手一投足に興奮し、悶え、時にはそれ以上になるのだから。
「それはそうと、これからどちらに?」
とシューフイに問われるので、
「そうね、事前に聞いているポイントから順次潰していくわ。差し当たって西側のエリアから順に当たっていって、最後に共和国との国境までローラー作戦で」
そう言いながらトリシャはバッテリー残量をチラッと確認する。今回は短期で終わるとは思われているが、それでも一か月くらいは見ておきたい。当然、補給というのもなかなかにして難しいだろうから、というのを鑑みて追加のバッテリーを搭載している。重量増加の分、多少の機動性は落ちるものの連続作戦行動時間としては一週間を優に超えられる。
「まぁ、重量増の話をし始めたらガトリングガンを装備している時点で十分な重量増なんだけど」
今回の作戦に機動性はあまり求められていない。相手は生身なのだから。
「じゃあ、覚悟を決めていきましょうか」
とトリシャが言えば、
「はい、マスター」
とシューフイが嬉しそうに答える。
そして、残存ゲリラの相当に約一か月の月日を費やし、ほぼこれでいなくなったというところまで[狩りつくした]のである。もちろん途中で何度かシューフイの胃袋が満たされたのは言うまでもないだろう。
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