40.なるほど、よく分かったよ-では、夜は何もしていない、と?-
全44話です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
それからソフィアは色々と聞かれた。もちろん機体も、これでもかと言わんばかりのところまで分解して組み上げて。
帝国から受けた質問には出来るだけ真摯に答えた。それは、そうするのが一番正しいと理解しているからである。カズは不必要な情報は一回の兵士には渡さない。裏を返せば自分が知っている情報はそれだけのもの、となるのだ。
そして三週間が過ぎたところで、
「なるほど、よく分かったよ」
とクロイツェルはソフィアと話をしていたのだ。当然、隣にはクラウディアがいる。そして今日は別の男もそこには立っている。今まで解析にかけてきた部品はすべて元通りに取り付けられていて、ハンガーへのロックも解除されている。つまりはフリーの状態で話をしているのだ。
それはどれ程のものかといえば、レイドライバーは陸戦兵器だ。いざとなれば人間の一人や二人をやるのに素手で十分なのだから。しかしクロイツェルはその状況を恐れようとしていない。それはソフィアという人格を、ある意味で信用しているのだろう。三週間という時間は、それだけ彼をしてソフィアという存在は[話し相手]にはぴったりだったというところなのだろう。
「ところで、この三週間は暇をしていたのではないかね? 特に夜などは」
と来たが、
「私は情報の効率化を休息時にしています。それに、こちらもまったく収穫がない訳ではありません。そんな資料をカズ大佐に提出するための資料作りに充てていましたから暇ではなかったですよ」
と素直に返す。そんな返しを受けたクロイツェルは[なるほどな]と一言言ってから、
「では、夜は何もしていない、と?」
――疑われるものは何もない。ここは何も考えずに行くべきだ。
ソフィアは、
「はい、特には」
と答える。その声には本当に抑揚がない。特にここへ来てからのソフィアは[思考するコンピューター]そのものだ。クロイツェルやクラウディア相手でも、まるでチェスの相手でもするかの如く思考し、発言する。
「いや、結構。きみという人物についてはよく分かったよ。本当に同盟連合に返すのが惜しい人材だな」
などと言われる。だが、相手にも、彼女にもそれは不可能なことなくらいは分かっているのだ。そんなクロイツェルはふと、
「今なら通信してもらって構わないが?」
と話しかけてきたのだ。当然、隣にいるクラウディアに[閣下、それは]と言われるが、
「きみが通信したいというなら、それを許可しようと思っている」
というのだ。
――それはしてはいけないことだ。
それくらいには頭は回っているつもりでいる。これが、通信しても良いと言われて[はいそうですか]と実際に通信したらどうなるか。まず周波数域が特定されるだろう。そして電波の内容もある程度推察されるだろう。最初の文言などはそう変わるものではない。そう、例えば[こちらソフィア、応答願います]といった具合に。そうすれば、通信時間が長くなればなるほどサンプルを取られ、それはいずれ暗号化を破られるきっかけになるだろう。
だから、
「報告は帰ってからしたいと思いますので」
と断ったのである。クロイツェルは[そうか?]とだけ言って、
「チェン所長、どうかね?」
とクロイツェルは隣にいた男に話しかける。研究者なのだろうか、白衣を着てタブレットをもって立っていたのだ。
チェン所長、と呼ばれたその男は、
「確かに、これだけの性能を帝国はまだ有していません。特にアドバンテージとして大きいのが脳核でしょうね。これは引き続きこちらでも研究に当たらせます。まずは自我の確保が最優先事項、ですね。そうすれば感覚器の導入も視野に入るか、と。それから閣下、娘の処遇の件は重ねてありがとうございます。お陰で生き延びられました」
――娘、か。生き延びた、という内容から察するに兵士、それはレイドライバー部隊の誰かに家族でもいるのだろうか。
そんな会話を何気なく聞いていたソフィアだったが、
「閣下、それでは検分は終了した、と考えてよろしいのでしょうか?」
という疑問が口を衝く。そんな疑問にクロイツェルは、
「もちろんだとも。初めからそのつもりだからな」
と答えた。バッテリー残量はかなり少なくなっている。まぁ、もっとも、ここで一戦と言われてもまずは無理な話ではあるが、それらを差し置いても活動限界が近いのもまた事実。
「それではトレーラーにまた乗ってもらおうか」
目的地は旧マダガスカル、例の会談が行われた土地である。
全44話です




