35.一般兵士から出すというのは-いずれは一般兵士にも門戸が開かれる可能性を-
全44話予定です
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「きみから連絡とは。甘い期待は禁物なのは分かっているが、何か進展でも?」
向こう側の声はそう尋ねてきた。
それに対してカズは、
「ええ、先ほど私が放った[秘策]の成果が早速出てくれまして」
そう言うと先ほどの録音を聞かせる。向こう側の声は明らかにざわめいていた。ミュートをするのも忘れたのか、それともこの際だからいいか、と思ったのか回線はずっとオープン、つまり接続状態のままにされていた。[まさか……帝国の大統領は既に……]とか[ではあの男が国を動かしているというのか]といった声がひとしきり聞こえたあと、
「どうやらきみをこちら側に引き込むのはほぼ決定したようなものだな。秘策がある、と言っていたから少し期待をしてはいたのだが、まさかこれ程とは。モグラの件といい、まったくきみはこちらが想像している期待以上の働きをしてくれる」
その声たちは、明らかに感嘆のトーンに聞こえる。カズは[そう言って頂けると]と謙遜を一つ返して、
「通信は引き続き解析に当たらせています。それも優秀なコンピューターに。なので追加情報が出るかもしれませんが、とりあえず二つの重要案件が手に入ったか、と思います」
つまりは大統領が不在という事実と、次は旧ギリシャが狙われているという事実である。しかも次の火種は直ぐ近く、予定で行けばあと三週間の猶予しかないのである。
「そちらの戦力はどうなっている?」
という向こう側の問いに、
「直ぐに動けるのがベテラン組になりますね。四つ足が二体、これにはアルカテイルの防衛を任せましょう。元々が攻撃型というよりは防衛型に寄った機体ですからね。人型のベテラン組が五体いますが、うち一体は旧イエメンに新人一人と一緒に派兵しています。こちらに関して言えば問題ないか、と」
「次に新人枠ですかね。研究所にいた実験用のサブプロセッサーを乗せた機体が一体に一戦経験したのが一体、新兵が一体除いて三体。それから供出されている機体は除くとして、パイロットが死亡して不在なのが一体、これは現在供出したサブプロセッサーの相方のパイロットを充てることができます」
までを続けて、
「あと予備部品なんかを組み上げれば、それこそ今ジュケーに行っているソフィア大尉くらいの機体ならもう二、三体は組めますが、いかんせんそれを操る脳みそ、パイロットともに足りないですね。なのでレイドライバーは総計が十二体と考えて頂いて」
とまで言葉にしてから、
「次に戦闘機ですが、三八FIが二機に三五FDIが七機、うち一機は日本で警戒中なので除外するとして、実質六機ですかね。と言いたいところではあるのですが、うち一機は脳みそ不足でして。なので二+五機といったところでしょうか。これだけあれば第五弾の火種くらいは何とか」
と答えてみる。それらを実際に声に出してみて、互いに確認をする。カズが研究所で常日頃から行っている行動である。
そんなカズに、
「脳みそ……サブプロセッサーだったか、それを一般兵士から出すというのは……」
「まだその段階ではありません。もちろん実験は続けていますが、実戦配備となると少し不安が残ります。一抹の不安のある兵器、それがどれほど連携を組む際に危ないものかは言うまでもありませんよね」
それは研究所が掌握している実験兵器を除いて、脳核だけの存在がまだ秘匿されている現況では、一般から引っこ抜いて脳みそだけにして実戦に、等とはとてもいかないのである。
そんなカズは[でも、仰りたいことはよく分かります]と前置いて、
「確かに、この分野と呼称しますが、サブプロセッサーが絡んでいる兵器は量産しづらいのは事実です。ですが、孤児院はまた存在していて候補生を育て続けています。そして、いずれは一般兵士にも門戸が開かれる可能性を秘めています。ですが、それも含めてもう少し時が経つのをお待ちください」
と言ってから、
「とりあえず、現在の話をしませんか? さしあたって旧ギリシャには近代兵器を……そうでしたね、かの地は旧NATO諸国でしたね。という事は、今配備されているのは三五FDでした、よね?」
「その通りだ。きみの提案通り三五Fは複座化して順次三五FDに換装しつつある。機械化部隊も最新のものが配備されている。こちらでも旧トルコと同様、かの地は重要拠点だからな。しかし、そこにレイドライバー、それに新型戦車となると」
とまで言って黙る。そう、現在で言えば陸上兵器としてのレイドライバーは強いのである。それこそ単体であれば戦車部隊なぞ目ではない程くらいには。そして忘れてはいけないのが、現在のレイドライバーのみならず通常兵器にとっても脅威な大陸性の新型戦車である。
流石に戦車というだけあって空爆には弱い一面を見せるが、対陸上兵器では部類の強さを誇っているのは証明済なところだ。何せたった十二両で大隊規模の機械化部隊を二度にわたって屠ってきたのだから。
「さしあたって航空戦力は言うまでもなく、現地の機械化部隊に加えてこちらからレイドライバー部隊を派兵しようと考えています。詳しい内容は後日またお話ししますが、現段階でこのもたらされた情報が正しいと仮定して対策を練るべきでしょう。ただし、このまま即応すれば情報が漏れたと疑われます。なので、少々の犠牲は」
と付け加える。
「払うべき、か。旧ギリシャの兵士には悪いが、それもそうだな」
話はそんな方向でまとまったのである。
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