32.感覚がある、と聞いたが大丈夫かね?-それでは、少し話に付き合ってもらおうか-
全44話予定です
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ソフィアの機体はまず装甲板が外されていく。変な感覚に陥らないようにあらかじめ感覚器はすべてカットしてある。いわゆる整備モードというやつである。これに入れれば、それこそ腕をねじ切られても痛みやそれに付随する感覚は一切やってこない。
それでも、
「感覚がある、と聞いたが大丈夫かね?」
と、そばで見守っているクロイツェルから心配されるくらいには丁寧に扱ってもらっているという証拠なのだろう。
そんなクロイツェルに[ありがとうございます、大丈夫です]と答えてしばし待つ。
徐々にそれは進んでいって、フレームが見える状態にまでバラされる。その間も装甲になにがしかのスキャナーを掛ける人物がいたり、駆動系のモーターと睨めっこする人間がいたりと文字通り[人気者]状態である。
と同時にコックピット周りにも検分が入る。ハッチは解放されているのでその装甲を測ったり、内部のパネルの写真を撮ったりと忙しい。
――どれほどの違いがあるのだろうか。話では帝国製のレイドライバーには自我のあるサブプロセッサーは搭載されていないというが。
ソフィアはそんなことを考えていた。
「それでは、少し話に付き合ってもらおうか」
とクロイツェルが近づいてきた。
「私にお話しできるものでしたら」
と返せば、
「きみたちは一体、何体の機数を所有しているのだね?」
と来る。そんな質問に[私が知る範囲内で、ですが]と付け加えたあとに、
「稼働中の通常型が六体、ケンタウロス型が二体の計八体と認識しています。ただ、今回の作戦で一部損傷が出ました。それに新兵も追加されるというところまで伺っております」
と返す。事実である。それ以上でもそれ以下でもないのだから。
「では、きみのような人材が他にもいる、と?」
「少なくともすべての機体に脳核は搭載されています。ですが、人のパイロットが搭乗している機体がほとんどです。私は試験機としてさまざまな戦場に駆り出されてきました」
と答える。
クロイツェルはクラウディアと何かを話してから、
「さまざまな戦場に、と言ったかね? ではもしかして戦闘機などにも搭乗を?」
と質問される。
――これは、答えてもいいのだろうな。
ソフィアはそう考えて、
「こちらが最新鋭機と呼んでいる三五FDIにも乗ったことがあります」
と答える。先ほどからクロイツェルとクラウディアの間のひそひそ話が多くなる。チラッとマイクのゲインをあげれば[まさか日本の……][……間違いなかろうよ……]といった声が聞こえる。
ならば。
「もしかしたら噂になっているのかも知れません。日本戦にも参戦しましたから」
と振ってみる。
すると、
「もしかしてあの十二機を単機で撃破したのは……」
「お察しのとおりです、閣下」
あの時は現実には乗ったわけではないのだが、操作を手伝ったのは紛れもない事実なのだから。
クロイツェルとクラウディアは少し言葉を失ってから、
「本当に礼を尽くしているのがよく分かる、というものだよ。カズ大佐にはあとで何かお礼をしなければならないかもな。きみが大尉なのが本当に不思議なくらいだ。ところで、質問を変えるが、なぜきみはこの機体に乗ろうと思ったのだね? しかも己の身体を捨ててまでなぜそこまでする?」
と質問が来る。その答えは既に持っていた。
――そう、マスターは自発行動を求めているのだろう。
「それは、純粋に興味があったからです。先ほども話しましたが、私は十歳より前の記憶がありません。なぜ記憶がなくなったのかさえ覚えていないのですから、多分事故か何かに巻き込まれたのでしょう。そんな右も左も分からなくなっていた私に手を差し伸べてくださったのがカズ大佐であります。それはもう、命を救ってくださったのと同義。そこに脳核だけでのパイロットにならないか、という話が入ったのです」
と答えてから、
「私はカズ大佐に全幅の信頼を置いています。だから、今回[帝国に供出される]と知っても動じずにいられたのかも知れません。彼は間違ったことはしない、と確信しております。これは忠誠のようなものと似ているのかも知れません。廃人だった私を助けてくれた、それだけで相手を信用するに足りると思いますが」
それ以上は不要だ。現にカズに対してソフィアは絶対的な信頼を置いている。それはたとえ状況的に死が待っている局面でも[行ってくれるか?]と尋ねられれば迷わず[はい]と答える、そんな関係なのだ。もちろん[調律]の影響は多分にある。だが、それを差し引いてもソフィアはカズに信頼を寄せているのだ。
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