31.どうだね?-ではハンガーにロックしてから検分させてもらおう-
全44話予定です
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ハンガーと呼ばれるその場所は、確かに整備工場のそれに近いものなのかもしれない。しかしながら、車などの整備工場と大きく違うのは建物の半分が開いた状態になっているというところか。もちろん雨風をしのげるようにいざとなれば閉じることもできるのだろう。現に、そういう目的で置いてあるであろう壁を収納したものが見える。
しかし、ここはアフリカ大陸である。年間を通じて降水量はほぼないに等しい。となればあと警戒すべきは風だが、それを避ける為の専用の壁らしきものが存在している。
「どうだね?」
クロイツェルがそう尋ねてくる。そんな問いに、
「実に合理的に作られているのですね」
ソフィアはそう言って壁の話をした。クロイツェルは[流石よく見ているな]と褒めたあとに、
「そう、ここは帝国にとっては欠かせない場所であり、その試験は一秒だって無駄には出来ないのだよ」
そう言ったあとに、
「ここには研究所が控えている。まさかとは思うが爆薬などは積んでいないだろうか」
と問われる。
――確かに、ここで核爆弾でも爆発させられれば帝国は大ダメージだろうな。
と思いはしたが、カズはそんな事は望まない。それはスマートではないからである。どこぞの国が以前、ミラールという自国の都市で核爆弾を使用した、そんなスマートでないやり方は好まないし選択肢にすら入らないのである。ソフィアはカズとしばらく行動を共にする機会が多かったが、そのソフィアをしてカズという人物はそういった短絡的な思考は持ち合わせていない、そう思えるのである。
だから出発の時に[何か情報が欲しい]とは言ったものの[拠点を潰してこい]とは言われなかったのだから。
なので、
「閣下、ご存じかと思いますが、我々レイドライバーには機密保持のための爆薬がそこかしこに仕掛けてあります。そういう意味では爆薬は積んでいます。ですが、これは相手を殺傷、または破壊するものではないことを付け加えます。それ以外での爆薬などは持ち込んでいないと誓いましょう」
と宣言する。
クロイツェルは、
「やはりカズという人物は紳士的のようだな。きみという存在をわざわざ我々に提示した時点でそれは分かっているつもりだ。いや、失礼なことを聞いたな、忘れてくれたまえ」
と言ってから、
「ではハンガーにロックしてから検分させてもらおう」
と告げる。
――[虫]はこちらのポイントを理解したはず。ならば大丈夫か。
何と言ってもここは帝国領の、それも最重要区画に当たる。とすれば少しでもレイドライバーから通信しようとすればどうなるか。同盟連合がそうであるように当然、電波の検閲はしているだろう。衛星と直接通信を、といってもそれは同様である。電波が出ている、それだけで感知されるのだ。
しかし、カズは[何か情報が欲しい]と言っていた。そしてそれに応えるだけの装備も付けてくれたのである。
先ほどソフィアが足の装甲板の隙間から落とした[虫]。これこそ秘密兵器と呼んでもいいだろう。自身は電波を発さずに自立して歩行が可能。バッテリー駆動であるがソーラーパネルまで備えている。そして目的地に着くや侵入できる回線がないかを調べ始めるのだ。そして、運よくそんな回線を掴んだなら遮蔽になるように自身は隠れつつもその回線に侵入する。
回線に侵入というが、自身が電波を出さずに侵入するのは容易ではない。
ではどうするか。
具体的には回線の配線に被弱な電磁波を直接当てて、そこから侵入を試みるのである。そしてソフィアがいる場所に行くようにあらかじめ設定されている。途中でプログラムをそう組んだのだ。彼女のいる場所といえば研究所近くのはず、ならば少しだけでも情報が手に入れば同盟連合にしてみれば好都合なのだから。
イリーナは黙らせた。あれ以上は追及してこないだろう。それこそ[お話はかねがね伺っています]と告げてあるのだから。本人もきっと理解しているはずだろう。
――あとは会話の中で何らかの手がかりを見つけるのみ。
ソフィアはそう思うと、ハンガーにロックされたのである。
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