30.何か落とし……-大佐殿がそう言っておられたのか-
全44話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
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しばらくそんな事をしていながら、クラウディアは、
「これから機体を調べさせてもらう。だが、尋問はするが苦痛を伴うようなものはしないと誓おう。それでいいか?」
と尋ねる。
ソフィアは、
「はい、伺っております。調査には協力するように、と」
と答える。
――いよいよだ。よく観察しておかないと。
供出されると決まった時点でカズからは[何らかの情報を持ち帰ってくるように]と言われている。もちろん、表立って何かできる身ではないのは確かだ。
だから、クロイツェルがいた場所まで移動してコックピットハッチを開けてクラウディアを下したあと、二体のレイドライバーに左右を固められて移動が始まった時は、少しだけ緊張が走った。もちろんそれで何かが変わるというものではないが、人間、気の持ちようで色んな状況が変わるものだ。
それに。
「ちなみに検分はどちらで行うのでしょうか?」
と尋ねればここからでも見える、近くに設置されている建物の中のハンガーだ、と言う。
――そこがポイント、か。おそらくそれ以上は連れていかれないだろうし、連れて行っても無意味なのだろう。
くらいには頭は回っている。
そのハンガーは割と近くにあった。もちろんテスト会場を見渡せる場所に設置されているのだから当たり前と言えばそうなるのだが、それにしてもさほど距離がないのは驚きというべきなのだろう。逆を返せば理にかなっている、ともいえる。同盟連合の研究所も、ここほどではないにしろテスト場の直ぐ脇にハンガーが設置されている。レイドライバーの部品交換や、組み立てなどはそこで行っているのが現状だ。それは国が変わっても大差ないのだろう。テストしている場所から近ければ近いほど直ぐに部品の入れ替えが行える。そしてテストをしてまた直ぐに別の部品に……などというサイクルが見えてくる。
――ではここに仕掛けようか。
ソフィアは歩きながら装甲板の隙間からとあるものを落としていく。それは直径にして十数センチ程度の部品だ。カーキ色に塗られたその[もの]は自立して動く仕掛けになっているようで、落とされて直ぐにその場にへばりつくように平たくなる。いわゆる動物でいう伏せ、というやつだ。
上手く行った、ソフィアがそう思った瞬間、
「何か落とし……」
と少し後方を歩いていたイリーナに指摘される。
普通なら[マズい!]となって焦るのだろうが、そこはソフィアである。
「そういえばイリーナ中尉、カズ大佐がよろしく、と仰っていました。貴方はずいぶんと彼の中で印象に残っていたのですね」
と会話にかぶせるようにそう告げる。
「えっ、あっ、そ、そうか。大佐殿がそう言っておられたのか。お元気であればそれでいいのだ」
明らかに動揺した声が返ってくる。これもソフィアの狙い通りだった。両脇を固めるようにずっと歩いていればそのまま投下して終わり、だったのだが、実際は少し斜めのような隊列になって歩いていた。具体的に言えばイーハンが先導する形をとっていたのだ。クロイツェルたちは準備もあるのだろう、先に車で移動している。ハンガーについてから例の[もの]を投下したのでは流石にバレてしまう。この隊列なら後ろを行くイリーナさえ何とか出来れば、問題は問題ですらなくなる。
そういった意味ではシチュエーション、人選ともにソフィアに味方したというべきなのだろう。
――彼女ならいくらでも黙らせることが出来る。そう、マスターの名前さえ出せば。
ソフィアはカズとイリーナとの間に[何が]あったのかは知らされていない。だが[何か]があって結果的にカズの事を恐怖しているという事実、それだけで十分なのだ。相手を脅すのに何も[モノ]を見せなくても立ち回り方はいくらでもある、そういう話なのである。
「ここだ」
しばらく歩くとハンガーに到着したのである。
全44話予定です




