29.困惑と、驚きをもってその光景に接していた-なるほど、操縦系統もほぼ同じ、か-
全44話予定です
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クラウディアは困惑と、驚きをもってその光景に接していた。
事の始まりはクロイツェルの一言による。
[クラウディア君、そのままパイロットシートに座ってしばらくイーハン君たちと遊んでみてはどうか]
そう言われたのである。もちろん、当人の真意としては別にあるのだろう。実際に乗って、戦闘をしてみたいというのが本音のところか。
しかし、事はそんなに簡単ではない。これはレイドライバーという兵器であり、乗り物なのだ。ゆっくりと歩行や方向転換などという動きならモニターさえ見ていれば身構えることが出来るが、いざ戦闘となれば話は別だ。それこそ[急]の付く文字ばかりの動きになるだろう。そんな時に中の人間は一体どうなるのか。
極論を言えばシートベルトもしていない、目隠しをした状態でレーシングカーの助手席に乗せられる、そんな状態になってしまうのである。当然、体が付いていかないので初めは酔うだろう。だが、それが続けば脳震盪のような症状を経て最終的には意識消失までなりかねない。それほどにこのレイドライバーという乗り物は従来の乗り物とは一線を画すものなのだ。戦車の助手席に乗るのとは訳が違うのである。
そんな中、クラウディアは股間の辺りまで軍服のスカートをめくりあげて座っている。シートの形状はほぼバイクとそん色ないのだが、一点、足をかなり開く形で乗るというのが違いと言えばそうなるのだろう。これは帝国のレイドライバーも似たようなものである。背面シートにベルトで体を固定して、両足で踏ん張りつつも少し前傾姿勢になって両腕をすこし開き気味にして乗る。
――なるほど、操縦系統もほぼ同じ、か。
両腕を置いているそのレバーにはスイッチが数個付いているだけでレバーを動かしてどうのというものではないように見える。両手はグリップを握ると手首が枷のようなもので固定されたのだ。足も同様だ。何かペダルのようなものが付いているかと思えば、足首をかっちり固定する形になっていて特段操作をするようには見えない。そして身体は、と言えばシートベルトでしっかりと固定されている。
そんなクラウディアがふと後ろを振り返れば何かケーブルのようなものが見える。恐らくはパイロットがいる場合はこのコネクターを接続して操作するのだろうくらいは見て取れるのである。
「酔いますか?」
室内にそんな音声が流れる。このパイロット、ソフィア大尉のものだろうか。
「ありがとう、大丈夫だ。しかし、同盟連合製のレイドライバーは乗り心地がいいのだな、羨ましい限りだよ。ちなみにモニターはいつもこんな感じなのか?」
と少し尋ねてみる。
眼前にあるモニター類は合計三枚。正面の大きなものと左右のすこし小さめのものである。だが、三枚とも足元から顔が少し上がるくらいの高さまでの大きさがあり、まるで装甲が存在しないかのように外の風景を映し出している。モニターが湾曲しているのは、どこも同じような技術を使用しているからなのだろう。実際、この辺りの技術は帝国製のもそんなに変わりがない。
そしてモニターには気象情報と敵オブジェクト、この場合は近くで随伴しているイーハンの機体だが、その相対距離、あとは多分リンクした場合に左右のどこか邪魔にならないところに相手のパイロットの顔が映るくらいか。
「普段はこれくらいですね。敵が近づいた場合にはまた別ですが」
と返ってくる。クラウディアは[無線はつなげるか]と問うと[イーハン少佐にですね]と返ってきて、
「イーハン、少し距離を取ってちょっとこちらに武器を向けてみてくれないか」
と尋ねる。それは直ぐに[了解しました]となって表れた。
クラウディアが見れば画面が戦闘状態を示す警告が出たあと、敵機の相対距離と武装が表示される。マシンガンとなっているが多分、それは状況に応じて変わるのだろう。
「なるほど。ちなみにあなたはどちらに?」
と尋ねれば、
「中佐殿の頭上におります」
と返ってくる。上を見上げれば、なるほど確かに何かのふくらみがあるのだ。
「では少し動いてくれるかな」
とクラウディアは問うと、
「分かりました。では、しっかりと掴まっていてください」
と言われたそのあとは、驚きの表情へと変わっていた。
「ほとんど揺れないのだな、大したものだよ。私はてっきりもっと揺れるものだと」
それはそうだ、帝国製のレイドライバーはお世辞にも乗り心地が良いとはとてもではないが言えないのである。もちろんそれを指して[おかしい]などと言う人間はこの国にはどこにもいないが、この同盟連合製のレイドライバーは別格である。
何しろ、走って止まっても大振りには揺れないのだから。
そしてしばらくそんな時間が過ぎていったのである。
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