27.一体余分に手配してくれたという事実-使えそうな娘?-
全44話予定です
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――さて、と。本格的にこれは千歳の研究を前に進めるときになったかもな。
カズは派遣部隊と新人をそれぞれ見送ったあと研究所に戻ってきていた。アルカテイルはゼロゼロとレイリアに任せてある。部隊長にレイリアを指示してはあるものの、もしも判断が付かないようならゼロゼロを頼るようにも言ってある。
初めはゼロゼロは困惑したような言動を見せた。それはそうだ、あの恵美である。自発行動が苦手なあの彼女をして[困ったことがあったら判断よろしく]と言ってきたのだから。
だが、今のゼロゼロは少しだけカズの知る襟坂恵美という人物ではなくなってきているように見える。
変わり始めた、と感じたのはカズが倒れたあとからだ。それまでは言葉を悪く言えば[指示待ち]の性格だったのが、自分から行動しようとする意志を見せ始めたのだ。もしかしたら彼女の中で何かのスイッチが入ったのかも知れない。
ただ言えるのは、カズが[よろしくね]と言った時も[分かった]と返したことである。
――何かが変わった、それは間違いないだろう。だけど今はそれでいい。ゼロゼロとレイリアなら上手くやってくれる。まっ、それ以前にダイレクト回線があるから、いざとなれば頼ってくるでしょ。それよりも、だ。
カズの[モグラ]が被検体を一体余分に手配してくれたという事実、これはとても大きな意味を示している。実験にはもってこいなのだ。確かに他の三体を探すように頼んだ際に[使えそうな娘がいれば一緒に拾ってきて]と伝えたのも記憶に新しい。
………………
「使えそうな娘? そりゃどういう意味合いで言ってるんだ? まさか客を取らせる……訳がないわな。そう考えれば研究に使えそうな人間って事だろ? オレはあんたの研究内容まではおよび知らないぜ」
そう聞かれた。それを、
「なに、例えて言うなら人間同士をくっつけるにはどうしたら良いか分かるかい?」
と尋ねた。そんな問いに、
「あぁ免疫、ね。それらしいのを病院にでも調べて?」
と返ってくる。
「その辺りは任せるけど、情報としてそういう個体が欲しい、という訳さ。もちろん」
「分かってる。あんたには色々と世話になってるからな。何とかしてみるよ」
そんな素直な答えが返ってくる。
………………
カズは特に今言った[モグラ]には目をかけているつもりでいる。本来[モグラ]なぞやっている時点で都合が悪くなれば切り捨てられて当然なのだが、軍籍も与えたし、表向きの仕事も提供した。それでなくとも裏稼業の手引きもしたし[モグラ]としての活動に際しても色々と手をまわしたのも事実である。
「まっ、彼とは長い付き合いにしたいからね」
人脈はいくらあっても足りないことはない。だが間違えてはいけないのは、人脈は[虫]が付いていてはダメだという事である。[モグラ]に付いた[虫]というものほど厄介なものはないからである。
「それはそうと、そんな彼女は……」
研究所への帰還の手続きも済ませて、早速[襟坂]のところへ向かう。そこに目的の個体がいるからだ。
「ちと……[襟坂]さん、いるかい?」
そんな尋ね方をする。それは部屋の維持を任されているスタッフに[あっ、所長。今すぐに]という言葉と共に奥へと招かれる。
「ここか……」
カズはそう言って全景を見回した。
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