25.生身の方のところへ出向いてよろしいのですか?-これは失礼しました-
全44話予定です
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「それはありがとうございます。見れば、マシンガンの砲身が少し曲がっていたようにお見受けしましたが」
だが、二丁持ってきて[さあ選べ]と言われたのもまた事実。どちらか片方だけの砲身が曲がっていたとは考えにくい。必然、向こうの射撃管制システムも弾道補正が効くように出来ているのだろう。
クロイツェルは[バレたか]とまるで子供のような声で言ったあとに、
「それに気が付くという事は、やはり同盟連合の射撃システムというのは良くできているのだろうと推測が付く。まぁ、見させてもらった事実にはこれから検証していく……のだが、まずはこちらに来てもらってもいいかね?」
と聞いてきた。マシンガンを相手に返して振り向きざまに、
「生身の方のところへ出向いてよろしいのですか?」
と尋ねてみる。だが、
「確かに、このまま近づいてきて私を捻り潰せば、それは我が軍にとっては大ダメージかも知れない。だがね、きみという存在はそんな野暮なことをしない、そう思えるんだよ。そう、まるでルールに乗っ取って試合をするプレイヤーのように見えるのだ、不条理な面倒ごとは大嫌い。違うかね?」
と聞き返される。
そんな言葉に、
「私は十歳より前の記憶がありません。そして育ててくださったのはカズ大佐です。私は日頃から常に最適解を導き出して実行に移すというのをモットーにして生きてきました。ですから閣下の仰る面倒ごとというのは大の苦手です。これは失礼しました」
そう言って近づいていく。
ソフィアとてここで事を荒げては何の意味もなくなるのだ。そしてそれは当然カズの望む結果ではない。カズというマスターが[望まない]行動は採らない。それが[調律]を受けたサブプロセッサーのスタンスなのだし、ソフィアとて例外ではないのだ。
ゆっくりと近づいていく。クロイツェルの傍らには軍服姿の女性が立っている。
――あれは秘書官なのだろうか?
そんな疑問が、ふと、
「そちらの女性は秘書官の方でしょうか?」
と声に出る。クロイツェルは[秘書官か、いい得て妙だな]と笑ったあとに、
「紹介しよう、帝国のレイドライバー部隊の隊長であるクラウディア・リー中佐だよ」
という公と共に、
「私はクラウディア・リーと言う。秘書官というのもあながち間違ってはいないんだが」
と少し謙遜したような態度を見せる。
「それは失礼しました。私の事はどうかソフィア、とお呼びください」
という一連のあいさつを済ませる頃にはイーハンの機体と共にクロイツェルのところまで来ていた。
クロイツェルは一声、
「コックピットを開けてもらえるかね?」
と尋ねてきた。それを、
「もちろんです、閣下」
と受けて片膝をついてハッチを開ける。そこには無人のコックピットシートがあるだけである。
「乗ってみてもいいかね?」
とクロイツェル。その問いに[閣下が、ですか?]と聞き返したソフィアに、
「まさか。もちろん、彼女だよ。餅は餅屋、だろ?」
と返ってくる。それはそうだろう、日頃から操縦している人間が試すのが一番だろうから。気付きというのも出てくるかも知れない。
「構いません、操縦は形態が違うので流石に無理ですが、乗っているだけでしたら動いても構いませんが」
それくらいはした方が印象も良いというものだろう。現に、
「おぉ、それは」
という歓喜の声がクロイツェルから上がる。
「乗ってみられますか?」
ソフィアはクラウディアの方を向いてそう尋ねる。それは直ぐに[乗ってみたまえ]というクロイツェルの口添えと共に、
「では」
となるのだが、
「ひとつ、私が今着ているのは女性兵士用の軍服、それもタイトスカートだ。その格好ではたして乗れるものか」
と問われる。
――ん? 何か問題でも。
「問題が? 邪魔ならめくりあげてしまえばよいのではないでしょうか。なんならコックピット内では下着でおられても構いませんが」
「いやいや、構う構う。ま、まぁ、でも確かにめくりあげればその形状なら乗れるな」
という問答のあと、クラウディアはそのままスカートをめくりあげて搭乗することになったのである。下着を見られて恥ずかしい、というのが頭をよぎったのだろうが、ふと昔の記憶でもよみがえったのか[こんなの昔に比べれば恥ずかしいうちには入らないですね]と皆のいる前でコックピットへと吸い込まれていったのだ。
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