22.そんな逸材をよくも貸し出してくれたものだ-それではこちらを-
全44話予定です
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次戦は砂丘と岩石が広がるブロックを指定された。砂丘はなだらかに中央が盛り上がっていて、少し離れると相手の姿が見えなくなる。では接近をしてみれば、今度は岩石が遮蔽物という訳である。
「見ての通り、足場は非常に悪い。それでも引き受けてくれるかね?」
というクロイツェルの言葉に、
「前に一度、砂場の戦闘は経験しております。そんなに得意ではありませんが、何とか」
と少しだけボカシてみる。
「それはどの戦場の……」
とまで出た言葉をクロイツェルは、
「いや、そこまで聞くのは無粋だろう。なんにせよ、きみが場数を踏んでいる大尉という士官であるというだけで十分伝わってくるよ。もしかしたら佐官クラスと言っても過言ではない、そんな逸材をよくも貸し出してくれたものだ、と感謝せねばな」
と言われてしまう。
――もしかしたら私の戦績もある程度は把握しているのではないだろうか。
そうソフィアに思わせるくらいにはクロイツェルという人物は[喰えない男]という生き物なのだろう。だからこそ彼女の脳内では[何か]アクションを起こす際には細心の注意が必要だ、とも警告をしていた。
またしても対戦する相手が銃口を上にしながら二丁のマシンガンを持ってソフィアの機体に近づいてきた。
「イーハン・チャン少佐だ。きみの事は閣下から伺っている。大尉とのことだが、どうか対等と考えてくれれば」
とスピーカー音声で応じてくる。その言葉に[ありがとうございます]と応じたあと、
「それではこちらを」
と、今度は右側のマシンガンを手に取り弾倉を確認する。
「今回も十五発、間違いないですね?」
と相手に聞けば[それで合っている]と相手もマガジンを抜いて見せてくれる。
こういう武器の弾倉、つまりマガジンは弾数がパッと見てわかるように横にスリットが入っているのが普通である。スリットは全体的に入っているものもあれば、部分的に入れられているものもあるが、まったく入っていないというのはあまり見ないケースだ。
もちろんレイドライバーの機体ともなれば帝国、同盟連合ともにコンピューターが使われていて、弾数の計算は自動で行うものなのだろうが、パイロットがちゃんと計算している、いないでは実戦においては段違いの差が出る。[あと残り五発]なのか[もう残り五発]なのかでは心理的にまったく違うからだ。計算しての残弾五発であれば、シチュエーションにもよるが既に退路をそれまでに確保していて[では撤退を]という余裕も生まれるというものだろう。だか、敵陣の中で応戦していて気が付いたら残弾五発ではもうどうしようもない。
特にこの弾数のカウントは新人にこそ油断が生まれやすい。何でもコンピューター任せで、アラートが残弾五発で鳴った時には既に積んでいる、そんな状況を招きやすいのである。
「では初期位置に付こうか」
イーハンのそんな声に促されながらソフィアは砂地に足を乗り出した。
――こ、これは……
数歩歩いて出た感想は[思ったより動けない]である。何度も言うが、このレイドライバーの主要部品は最初期型が使用されている。そして最初期と言えば、まだ砂場や湿地といった通常ではない戦闘域での活動を想定していない作りなのである。
それはつまり、狙ったように動けない可能性が高いというのを示しているのだ。
――それでもマスターは[勝ってこい]と仰った。その期待には応えないと。
ソフィアは一呼吸おいて、予備領域として通常は使用を控えている生体コンピューターの区画を姿勢制御に集中して配置した。そうする事でレイドライバーの動きに対しての最適化がより行えるのである。言ってみれば[奥の手]というやつである。普段ならそんなものは使用しないが、ここはイレギュラーなシチュエーションだ、四の五の言ってはいられない。使えるものは何でも使わないと結果は付いてこないのである。
これで姿勢制御は、ほぼ狙ったところに持ってこられるようになった。あとはその動きを無理のないものにして動かないといけない。例えて言うなら四肢に重りを付けた状態の動きと、何もつけていない状態の動き方ではそのバランスも、初期動作も、継続した加重を受けるモーター出力もすべてが変わってくる、そういう話である。
――これなら、何とか。作戦としては、そう、それが一番いいかも。
そこまで調整をし終わったときに、
「それでは開始しよう」
とクロイツェルの無線が入ったのである。
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