20.移動時に撃ってくるんだろうな-そう、それが狙いなのですよ-
全44話予定です
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ソフィアはまず現在いる遮蔽を移動しようと考えた。それは初期位置というのは互いに知れているという事実がある。弾丸に制限があるこの状況下では派手に撃ち合いなどという事態だけは避けなければならない。
それならばまず移動してこちらの場所を特定されないようにする、それが最適解だと感じたからである。
――移動時に撃ってくるんだろうな。
そう考えたソフィアは、手元に転がっている石を取り合えず目的と反対側に投げてみた。
カンッ、そんな音が響いたと同時に数発弾丸が飛んでくる。
「そう、それが狙いなのですよ」
相手のパイロットは多分、歴戦を潜り抜けでいる、という訳ではないのだろう。元々が帝国のレイドライバーは後発だ、そういう意味でも連戦した兵士というのはまだそんなにいないのだろう。だが、ソフィアは違う。事情はあれど結果として連戦し、満足のいく結果を残してきたのである。
それ以前に、クロイツェルという人物が言っていた[手持ちは十五発]というのを考慮すれば無駄弾は一発として撃ちたくない。
そうかといっても後生大事にもったいぶっていても仕方のないことだ。何故なら、今手にしているものは本来、相手を殺傷するものだからである。
ソフィアは反射的に反対方向に動いていた。こちらのほうが反応が一瞬早かったのだろう、うまく隣の遮蔽に隠れる事ができた。
――こちらの動きはモニタリングされているのだろうな。
ふと上空にレーダーを一瞬向けると、どうやらドローンのようなものが飛んでいる。流石にその情報を敵兵士に流したりはしないだろうが、動き自体を観察されているのだけは確かなようである。
――次は、もう少し区画を移動してみましょうか。
出来るだけ音をたてないようにしながら移動をする。前述した話であるが、今回ソフィアが搭乗しているこの機体の動力部は最初期型が使われている。もちろんそれはそれで決して性能が悪い訳ではないのだが、それでもゼロフォーとして現在搭載されている機体に比べれば、反応速度や動作音、それにモーターの出力などは弱い部類に入る。
だからこそ供出前にエルミダス基地で新人たちと[手合わせ]をして来たのだ。
手応えはある。出力の調整も、アライメント調整も済ませてきた。だから今は自分の手足のように扱えるのである。
「敵は、流石に区画を移ったのでしょうね」
もちろんこちらも各種センサーで相手の動きを探っている。音響、電波、熱源、それぞれのセンサーを[こちらかな?]という場所に向けてある。その結果としては初期区画から動いたであろうという結論だ。
自分の機体との相対距離を測りつつ、次の一手を考える。
――側面に回り込めれば。
ソフィアは一旦敵機体より後方へと移動した。そこから敢えての左側へと一区画ずつ回り込んでいた。
これにはちゃんと彼女なりの理由が存在する。それは利き腕の話である。利き腕は右、左と二通り存在する。普段無意識に使っているほうが利き腕になるのだろう。そして周りを見渡しても数の上で多いのが右利きである。では右利きの人間が銃を片手に敵に近寄るとしたらどうなるか。左でブロックしながら狙える左回りを選びがちになるであろう。
ソフィアはそれを考慮の上で、敢えて右側から回り込んでいるのだ。確かにこれは利き腕が後ろになる分だけ防御は不利である。しかし、向こうが左回りで回り込んだとしたら? それはワンテンポ早い会敵につながるだろう。
ソフィアは右利きではあるが、左腕をメインとした訓練も積んできている。つまりは[どちらでも対応可能]という訳だ。
人間、テンポを崩されるのはとても心地が悪い。何事もテンポよく決まった時の爽快感は格別であるが、間の悪い、テンポの悪い時というのはミスが出やすいし、イラッとするものである。そして、ソフィアにはその一瞬の相手の[感情変化]さえあればいいのである。
「そこっ」
ソフィアは遮蔽から左半身を出すと、これも敢えて左腕で握っていたマシンガンを相手に放っていたのだ。
敵は完全にタイミングを逃していた。それこそ全面を晒していたのである。
――チェックメイトですね。
ソフィアはこれも敢えて弾を何発か外して撃った。それはつまるところの[見ている]者への配慮である。それは[同盟連合はそれほど正確な射撃管制はしていませんよ]という彼女なりのアピールなのだ。それに弾丸なら十五発あるし、それも敵は一体という限定条件での戦闘である。残弾は少し残すだけでいいのである。それでも弾薬を敢えて残す理由、それは撤退時の応戦用の習性である。事前に一対一、と言われたが万一にも不意の敵が現れないとも限らない、その為に敢えて取っておく残弾なのだ。何ならいつものソフィアであれば一体に十発もあれば致命弾を与えられるだろう。だが、それでは手の内を知られてしまう。ならばいっそ[バラまいて]終わりにしたほうがいいのではないか、そんな判断である。
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