15.回想-貴方、人の肉って食べたことある?-
全44話予定です
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そんな中でもエピソードの一つがある。これは孤児院にいる時にあるイベントを行うのだが、ゲーム感覚でリアルな映像を流し[この標的が打てるか]と問うのだ。この時代、ホログラムの技術はかなりのものがある。電話一つとっても、環境が整っていれば立体映像で通話が出来るくらいである。
そんな技術を応用して研究所にいる、処分予定の被検体を相手に銃を構えるという映像を流すのだ。通信は3Dを使用しているので目の前にその本人がいる。そして子供たちは実際にこちら側で銃を構える。それが研究所に設置されているロボットの腕と連動しているのだ。
つまり、子供たちが引き金を引けばそのまま被検体に当る、というものなのだ。もちろんそのあとの映像も流す。
あの孤児院にいる子供は、二期生以降はこれを必ず通ってきている。パイロットに、サブプロセッサーに選ばれた娘たちがその試験を受けるのである。
だいたいの娘は初めは引き金をためらう。それは相手が命乞いをし、場合によっては泣き叫んだりするからだ。マイクとスピーカーは繋がっている。被検体には[死にたくなければ相手を説得なり命乞いなりして回避して見せろ、上手くすれば命は助けてやる]と言ってある。逆に、相手の説得に失敗すれば即、死が待っている。そしてこちら側から相手への映像配信は無い。つまり、される方としては声だけが頼りなのだ。
これは、被検体の処分方法として第二期生から導入されたものである。今までは散々バラしまくって処分していたのだが、基礎研究も終わってそんなに被検体を必要としなくなったという事情が少し関係している。その被検体の中には絞り込む際にふるい落とされた少女も含まれているのだ。
もちろんシューフイもその試験を受けた。幸いだった、と呼べるのかどうかは別として彼女は殺処分される側ではなくする側だった、というところか。彼女の生い立ちはある程度まで把握しているし、実際むごい話だが本人から聞き取り調査をしている。それは記憶消去を施す前に情報を取っておくためである。だから、彼女の[食人行動]も、その対象もすべて記録されているのだ。
情報というのは不思議にものだ、捨てることは簡単にできるが、拾い集めるのはそれは中々に骨の折れるものなのだ。それにすべて把握できるとも限らない。ならばいっそ、本人から聞いてしまえばいい。何、トラウマの一つや二つ、研究所にしてみれば些細なことなのだ。
そして、画面の向こうで泣き叫ぶ少女に対して[貴方はなぜ生きてきたの?]と問うたのである。画面の向こうの少女は[私だってこんなの、好きでやってるんじゃあない]と泣き叫んだ。
シューフイはその娘に対して、
「貴方、人の肉って食べたことある?」
そう言って一呼吸置いたあとにトリガーを引いたのである。一発、また一発。向こうの少女は痛みでさらに泣き叫んだ。そんな娘に対して、
「ねぇ、肉の焼ける匂いって知ってる?」
とまた尋ねてトリガーを引いた。一発、また一発。
気が付けばそんな問答を数度繰り返しながら全弾撃ち尽くしていた。そこでシューフイは職員に対して、
「あの娘の肉をください」
と言い放ったのだ。職員が[何故そんな事をするのか]と問えば、
「私はあの娘の命を絶った。もしもそれが手に入るのであれば自分の血や肉にしたい」
と言ったのである。シューフイには感慨というものが失われているのだろう、その顔に表情は、やはり無かった。
職員は困惑したのだろう。実際に、上司に対して[どうすべきか]と上申してきた。その問いに対する答えは、
「彼女が望むなら与えてみてはどうか」
というものであった。数日して孤児院に届けられたその肉塊をシューフイは調理場を借りて自分で料理して平らげて見せたのだ。
それからというもの、その噂は瞬く間に広がり、シューフイに近寄る人間はほとんどいなくなっていた。それはそうだ、あんなものを口に、それも自ら望んで口にしたのだ。はた目から見れば[イカれてる]としか言いようがない。
そんなシューフイに三度目の転機が訪れる。それはゼロシックスのようにサブプロセッサーにはされず、生身の人間としてパイロットになった事である。
全44話予定です




