13.シューフイはご多分に漏れず孤児の出だ-幸い[食材]なら目の前にある-
全44話予定です
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シューフイはご多分に漏れず孤児の出だ。だが、少しばかり他のパイロットたちと違うのは、大陸の、それも中華系の出であるというところだろうか。世界が現在の三国に統合されていく中で、当然ながら軋轢、反抗それぞれもろもろの[統合されまい]とする力が働いていた。
そんな中、旧時代には台湾と呼ばれた島に生を受けたシューフイはその統合のさ中にさらされていた。両親ともに内戦を逃れて難民になっていた。つまり[大陸の国々]が台湾を武力制圧しようとしたのである。これは日本などと同様に、大国であるサムおじさんがかの地を見捨てたあとはそれは酷いものであった。何しろ後ろ盾がまったくない状態で戦うのだ、それは到底勝ち目はないのは火を見るより明らかである。
だが、台湾は最後まで戦ったのである。この内戦で実に半分近くの人間が命を落としていった。その中にシューフイの両親もいた。
では当のシューフイはと言えば、辛うじて難を逃れて孤児となったのである。どのようにして難を逃れたのか。それは難民キャンプの近くで起きた戦闘で両親がかばうようにして、自分たちの体を盾にして機銃の掃射から、火炎放射の炎から守ったのである。その光景を目の当たりにしたシューフイは、その光景を幼い記憶にしっかりと焼き付けてしまったのである。
その光景は数日続いた。数日の間、シューフイはその場で虐殺を受けた肉塊の中で、腐臭と肉の焦げた匂いの中でじっと耐えていたのである。正確には茫然として動く気力を失っていた、というべきだろうか。彼女がふと我に戻った時には、それまでの彼女とは別人になっていた。
別人格、と言い換えるべきだろうか。両親の最期に遺した言葉である[お前は生きるんだ]を実行するために元の人格に蓋をしてしまったのである。当時シューフイはまだ八歳。そんな年端もいかない、まだ少女というよりは幼女とさえ呼べるであろう年齢の子が[生きていく]為には自分という存在に蓋をしなければ、この過酷な状況ではやっていけなかったのである。
難が去って、辺りが静かになってからシューフイは動き出した。それまでも食糧難でロクに食事もしていない状態でさらに数日間、飲まず食わずでいたのである。
シューフイはまず食事を摂ろうと試みた。幸い[食材]なら目の前にある。少し腐臭を放ってはいるが食べられない事もない。いや、当時の彼女はそんな細かなことには気を使っていられなかった。
その辺りにある肉塊はまだ八歳のシューフイの力でも簡単に手に取ることができた。彼女は口にするほんの少し前、一瞬躊躇したがそれも一瞬の出来事で、気が付けば[食事]を摂っていたのである。
シューフイは泣いていた。いくら感情に蓋をしたとはいえ、内に秘めたものはそうそう大人しく黙ってはくれはしない。だが、強烈なその光景が記憶の、いや人格に対して蓋を強固なものにしていた。結果として無感動に泣いたのである。
食事がすんだら今度は飲み水だ。幸い、この近くには川が流れていた。そこで口の渇きと汚れを洗い流して、次に向かったのが人のいる場所だった。もちろん敵兵のところではない。自分と同じように身を寄せ合っている集団のところである。
そうは言ってもまた幼いシューフイがそうそう簡単に人のいる場所に出られるわけもない。必然的にさまよう事となる。その辺りの記憶は朦朧としていて覚えてはいない。ただ、木の枝をかじったり、近くの生きている水場で喉を潤したりしてしばらくさまよっていたのである。
次に記憶が残っているのが、人々が寄り添って生活している難民キャンプのようなところにいた、というものだ。そう、幸か不幸か無事に人里までたどり着けたのである。シューフイの境遇を考えればそのままいっそ朽ち果てたほうがいいとも考えられる。あんな光景や、あんな[食事]を体験してしまっては、仮に成長して自分の進路がある程度自分で決められるようになったとしてもそれは[トラウマ]として残るだろう。とてもまっとうに育つとは思えない、それほど強烈な体験をしてしまったのだ。
だが、それでも時は動いている。難民キャンプから移動したのはそれからしばらく経ってからである。シューフイは大陸の、それも今でいう共和国の国境近くに移送されたのである。
その理由は様々であろうが、一つに難民を[盾]にしようという帝国の狙いがあったとも噂されている。国境線に配置すれば下手に手は出してこないだろう、そんな読みがあったのかもしれない。
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