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うちの完璧魔王はなんか時々デレる

作者: 於菟鶫
掲載日:2025/12/12

1

僕はアレクシア・ランドルフ、魔導帝国を支配されている魔王、アスラ様の執事をしている。

残酷非道な絶対的悪役、魔王。

そんなアスラ様について行くのには理由がある。

そう、


なんかめっちゃ好き。


こう、なんて言うんだろう。普段は別に優しくはない仕事の出来る女上司って感じなんだけど、時々見せるデレが、なんて言うかその、好き!


おっと、こんなことをしている時間は無い。これからアスラ様を起こしてお食事を御用意せねば。


早足でアスラ様の部屋へ向かう。(僕は優秀な執事なので、足音は立てません)


「魔王様、そろそろ目を覚ますお時間ですよ」

「ん、んぁ、アレクか、毎朝お疲れ様だな」

寝起きも綺麗な人だ...

「お食事の準備が整っております、食堂の方にお越しください」

「おぉ、分かった、ありがとな」

「では、食堂の方で待っております」

「あぁ」


食堂で少し待っていると、外着に着替えたアスラ様が少し眠そうにやって来た。

「魔王様、少々寝不足なようですね」

「あぁ、まあな」

「まあ、今日から人間陣営でも強力な国、アストラとの全面戦争ですからね」

「そうだな、世界征服において、アストラは重要な国だ」

「必ず我らが勝利する」

「私も尽力致します」

「アレク、お前は働きすぎだ、少しは休め」

アスラ様が心配してくれている...もっと頑張ろー。

「そのお言葉だけで、いくらでも働けます」

「お前が倒れたりしたら、私が悲しい」

「だから、休め」

...やばい、好き。話を変えないと失神してしまいそうだ。

「それはさておき、本日からの戦争ですが、改めて戦力状況を報告させて頂きます」

「あぁ、頼む」

「まず、人間陣営、百万に登る兵士は、鉄砲兵、弓兵、騎兵、歩兵に別れており、序盤は弓及び鉄砲による遠距離攻撃が予想されます」

「厄介だな」

「はい、そして、魔導国陣営は、数十万の兵士と数万の魔物で構成され、中にはドラゴンなどの強力な個体も多数おります」

「最初はそれらの強力な個体で敵軍の陣を崩し、その後大量の魔物で押し切るのが良いでしょう」

「そうだな、後でそいつらの様子を見に行くか」

「はい」

「よし、じゃあ行くか」

「はい、馬車をご用意しております」

「分かった」

「ついに始まるな、大戦が」

「ですね」

「勝つぞ、我らの未来のために」

「Yes my King」

「ところでだが、この戦争が終わったら、一度共に領地を回らないか?」

え、それって...デーt

「はい!喜んで!」

「おぉ、それなら何よりだ」

つい取り乱してしまった。

それにしても、アスラ様とデートかぁ...楽しみだなぁ...

戦争とかどうでも良くなってきた...

ダメだ!ダメだ!この戦争に勝って、アスラ様の目指す世界への第一歩とするのだ!


戦争直前、アスラ様から魔王軍全員にお言葉を頂くことになっている。

無数にいる魔王軍の兵士の前に、堂々たる態度でアスラ様が立っている。

場が落ち着くと、アスラ様は冷静に心を燃やすような、力強い声を上げた。

「私から言うことは一つだ!」

「私についてこい!さすれば、私が必ずお前達を勝利へ導いてやる!」

数十万の兵が猛々しく叫び、集会は終わった。


アスラ様の書斎に向かうと、アスラ様が机の上にぐったりとしていた。

「大人数の前に立つのが苦手なのは相変わらずですね」

「そうだな、魔王として軍の前に立つのは致し方ないことだが、どうにかならないものかな」

「そうですね、しかし、うちの者は、魔王様からのお言葉だからこそ気力が出るというもの、代理の者では効果を発揮しないでしょう」

「そうだよな...」

「暖かいコーヒーをご用意致しましょうか?」

「あぁ、頼む」

「アレクが居るだけで、幸せだと思わないとな」

「あの時、お前を拾って良かった」

...キュン

「光栄です」

気が動転して上手く言えなかった気がするが、とりあえずそう答え、僕はアスラ様の書斎を出た。

あの時とは、僕がまだ子供の頃のことだ。

両親を無くし、親戚からも遠ざけられた僕は、荒野を放浪していた。

水も食料も尽き、餓死寸前だった時、偶然出会ったアスラ様に拾われて以来、執事として仕えている。

最初は僕だけが人間であることに怯えたが、今では皆家族のように感じている。

それにしても、アスラ様は、放つ言葉の一つ一つが、僕の心に動揺を与える。

さすがは魔王様と言ったところだろうか...

気持ちを整え、手早くコーヒーを入れ、書斎へ向かった。(僕は優秀な執事なので、コーヒーはびっくりするほど美味しい)


「コーヒーをお持ちしました」

「あぁ、ありがとう」

「出発まであとどれくらいだ?」

「早いに越したことはありませんが、一、二刻後には出発したいですね」

「分かった、ではもう出よう」

「早い方が良いとは言いましたが、そう焦らずとも」

「早くしないと、デ、領地訪問の時間が無くなってしまうだろ」

僕と一緒に行くのが楽しみとかそういうのでは無いことは分かっている。

アスラ様は真面目な方だから、領地訪問を重要視されていだけだ。

だとしても、僕と過ごす時間を大切に感じて頂いている...好き。

「そうですね、では、馬車は既に呼んでいますので、行きましょうか」

「あぁ、全力を尽くそう」


現地であるアストラまでは、魔導馬車で飛ばして数刻の距離だった。(魔導馬車とは、魔法で構成される馬が引く馬車で、通常の馬車とは比べ物にならないほど速い)

事前調査では、魔導国との発展度の差は大きいものの人々が盛んに活動していたが、戦争の影響だろう、アストラには兵士以外誰も居ないようだった。


魔導馬車の後ろにつかせていた魔導列車(主に兵士や荷物を運ぶ際に使われる、レールは要らず、魔導馬車と同等のスピードが出る)から無数の兵士が降り、配置についた。

空には数匹のドラゴンが旋回し、ワイバーンが群れを成して飛び回っていた。


そんな緊迫した空気の中、アスラ様の華麗な声が響き渡る。

「ドラゴン及びワイバーン達よ、アストラを焼き払え!」

その指示により、アストラ軍は壊滅的な被害を受けた。

今回の戦争も意外と呆気なく終わりそうだな。

アスラ様が、普通の兵士と魔物にも進軍指示を出すと、アストラ軍は数万にまで減り、魔王軍は勝利を確信した。


その瞬間、一筋の光が、魔王軍中枢、つまり、アスラ様の方へ飛んで行った。

そして、反応する間もなくアスラ様が居た場所一帯に巨大な窪みが出来た。

「魔王様!」


翼を無理やり動かしてそこへ飛んで行くと、アスラ様が魔剣を持って戦闘態勢を取っていた。

よかった、無事か。

アスラ様と対峙していたのは、輝く剣を据えた、若々しい男だった。

「これを食らっても死なないとは、流石は魔王と言ったところかな」

「挨拶も無しに突っ込んでくるとは、無礼な奴だ」

本当にその通りである。

「魔王などに名乗る名は無い」

「今にも殺してくれよう」

何言ってんだ貴様ー!

「ほう、面白いそんな剣で私を切れるとでも?」

「これは聖剣だ、魔王には効果抜群だよ」

「そうかそうか、ならやって見るといい」

「では、遠慮なく」

そう言うと、その許されざる男は、アスラ様に向かって走り出した。

激しい攻防戦を

アスラ様は楽しんでいるようだが、流石に執事として放ってはおけない。


「お楽しみのところすみませんが、こやつの相手は私が致します」

「アレクか、良いだろう、私も暇では無いしな」

「手早く済ませろよ」


アスラ様の期待に応える、それが僕の役目だ。

「Yes my King」

そのいけ好かないクズ野郎は、所謂勇者というものだろう。

そういえば、人間側に勇者が降臨したという話を聞いた気がする。

まあそんなことはどうでもいい。

アスラ様を傷つけようとしたのだ。

絶対に許さない。


「ふざけるな、逃げる気か!魔王!」

は?

「それは断じて違う!魔王様はお忙しいのだ!貴様のようなゴミに使う時間がないだけだ!」

「あ?なんだと?ていうかお前、人間じゃねぇか」

「人間だからなんです?あなたなど相手ではありませんよ」

「そうかそうか、ならまずお前から倒してやる」

僕は収納魔法から闇色に光る魔剣を出した。

「この魔剣は魔王様から頂いた大切なものなので、あまり使いたくないんですけどね」

「あなたはともかく聖剣に対応するのはこの剣が必要だ」

「つくづく馬鹿にしやがって、許さんぞ」

「ぺちゃくちゃ喋ってないで、かかってきなさい」

それから数分間、

僕はその勇者の剣をあしらい続けていた。

まあ、当たり前ですよね笑

「クソ!聖剣のせいだ!何だこの鈍は!」

何言ってんだこいつ...

聖剣は強い者が使えば、私はもちろんアスラ様だって倒すことが出来る。

単にお前が弱いだけだ。

「ふむ、そうですか」

「だから、な?今回は許してやる」

「その方がお互いに都合がいいだろ?」

...?

これは殺してしまっていいのか?

剣を急所に刺した。

刺さった。

男は死んだ。

え、これで終わり?


そう落胆した瞬間、男の死体が光出した。

まさか、条件魔法!

特定の条件を達成した時に発動するように作られる魔法、その条件の難易度で威力が変わる。

もし、この男の死が発動条件だとすれば、少なくともそれが直撃すると僕は確実に死ぬ。

やばい、逃げれなくは無い。

だが、それをしてしまえば、魔法が周囲に広がり、甚大な被害が出る。

僕が最小限に抑えるんだ!

とりあえず、近くの者を逃がさねば。

「逃げろー!!!!!」


皆、なんの事か分からない様子だが、とりあえず上官である僕の指示を聞いて逃げた。

魔法を最小限に抑えるには、僕の同程度の魔法をぶつけるしかない。

勇者の死が発動条件ならば、僕の最大火力の魔法でやっとだろう。

まあどちらにしろ、僕は死ぬ。

やり残したことは一つしかない。

アスラ様との領地訪問デート...

行きたかったな...

程なくして、男の死体が爆発した。

僕の、闇属性最上級魔法で何とか被害を抑えることは出来たが、僕の身体は燃え消える寸前だった。

その時、僕の体の腐敗が止まり、再生を始めた。

魔物でもあるまいし、人間の僕の体に自然に起こる現象ではなかった。

「何をやっているんだ!アレク!」

それは、怒りに満ちた、アスラ様の声だった。

僕の体を再生させているのは、アスラ様の最上級回復魔法だった。

それでも、体に溜まった疲労は取れることはなく、僕は地面に倒れた。

そこに走ってくるアスラ様は、今まで見た中で一番可愛らしかった。

「なにをやっているの、アレク」

「アレクが死んじゃったら、私どうしたら良いのよ」

アスラ様のこんなに優しい口調を聞くのは初めてだった。

「これが終わったら二人で領地訪問に行くって約束したのに」

「命を懸けてるんじゃないわよ」

「魔王様がそれを言ってはいけませんよ...」

「今はそんなことはどうでもいい!」

「アレクをこんな風にしたアイツらを許さない」

「アレクはここで休んでおけ!」

「後は私が終わらせる」


そう呟いたアスラ様は、たった一つの大魔法で、アストラ王国を滅亡させた。

アスラ様はその魔法を使うのを嫌がっていた。

もしかしたら、アストラ王国の奥の方にはまだ一般市民が居るかもしれないからと。

僕がそれを使わせてしまった。

僕はダメな執事だ。


2

今、僕は馬車の前でアスラ様を待っている。

そう、

領地訪問の時が来た!!!!!

ワクワクでニヤニヤが止まらないが、それを隠すのが我が国随一の執事。

それでもつい口角が上がってしまう。

何故なら、領地訪問中、アスラ様は領民に気を使わせないように私服で行動なさるのだ!

真面目なアスラ様は、普段は寝巻きか正装しか着ない。

そんなアスラ様の私服姿!

楽しみすぎて馬車を破壊してしまいそうだ。

「おーい!待たせたな!」

そんな、いつもより少し明るく、元気そうな声を出すアスラ様は、不覚にも、天使に見えた。

魔王が天使に見えるなど、無礼にも程がある。

申し訳ございません!アスラ様!

それにしても、魔王に似つかわしくない純白な肌に、平民に紛れるために着られた受付嬢の物と思われる白シャツとズボン、なめられないように羽織ったであろう羽毛付きのジャケット、全てが完璧です...

「いえ、私も今準備を終え出てきたところです」

「そうか、それなら良かった」

「ってアレク、お前はプライベートでも執事服なのか?」

「プライベートと言っても、魔王様と同行する以上私の職務の一環ですから」

「そうか...」

「だ、だが、それでは私が魔王だとバレてしまうぞ」

「確かに、では行き先で適当に買うとします」

「あぁ、そうするといい」

「では、行きましょうか」

「おう、良い領地訪問にしよう」


僕らは、まず魔王城付近の城下町を偵察した。

仕事を離れて気が緩んだのか、少しはしゃいでいるアスラ様の可愛さに耐えるので精一杯だった。

「アレク!あれ美味しそうじゃないか!?」

「アレク!あの服はお前に似合いそうだ!」

「アレク!あれはなんというものだ!」

気がつけば、僕は着慣れぬ衣を身にまとい、複数の荷物を腕に提げ、いくつかの屋台の食べ物を手に持っていた。

「魔王様、流石にもう持ちきれません、一度宿に行きましょう」

「あ、あぁ!すまないな、つい高揚してしまった」

「いえ、お楽しみなら何よりです」

城から手配した宿は中級程度の宿で、宿の職員にだけ僕らの正体を知らせてある。


「魔王様、今日はお楽しみになられましたか?」

「あぁ、久しぶりに羽を伸ばせて良かった」

「では、明日はデパートにでも行きましょうか」

「プライベートに近いものとはいえ、遊びすぎではないか?」

「勝利祝いも兼ねているのです、少しくらい良いでしょう」

「そ、そうか?」

「はい」

「よし!明日はデパートに行こう!」

「はい!」

「では、明日のためにもそろそろお眠り下さい」

「あぁ、そうだな!」

アスラ様は目を輝かせながらベッドに入られた。

ワクワクしているアスラ様もいつもの厳格なアスラ様とはまた別の魅力がある...

自分のベッドでアスラ様のことを考えていると、夜は一瞬で終わった。

「え?もう朝?」

「早くアスラ様を起こしに行かなければ」

アスラ様が寝ている部屋へ向かっていると!突然その部屋からドンッと大きな音が鳴った。

アスラ様!?

走って部屋に向かいドアを開けると、床の上にアスラ様が倒れていた。

「大丈夫ですか!アスラ様!」

「ん、んぁ」

床にぐったりと倒れているアスラ様の顔は寝ぼけていて、布団を失って寒いのか、丸まって転がり出した。

「ま、魔王様...」

可愛いすぎる!!!

「ふぁ!あれ、デパートに居たはずじゃ」

「ってアレク!?何故私の部屋にいる!」

「魔王様を起こしに参ったのですが、大きな音が聞こえ、ノックをせずに入ってしまいました」

「もしまだ眠いなら、もう少しお眠りになられますか?」

「い、いや、大丈夫だ...」

「では、身支度をして、デパートへ向かいましょうか」

「お、おう...」

二人でデパート...これはもうデートと言って差し支えないのでは!?

いや、それは失礼か、でも、楽しみだなぁ...


「アレク、準備出来たぞー」

「お、お前、ドアの前でずっと待ってたのか?」

「え、あ、はい、ま、まあ、執事ですからぁ」

「そうか」

「では、行きましょうか!」

「あ、あぁ、楽しそうでなによりだ」

うわ、恥ずかし...


宿からデパートまでは歩けない距離ではなかったが、なるべく僕らの顔を見る人を減らす為、馬車に乗った。

程なくして、僕らは城下町最大の商店であるデパートに着いた。


「相変わらず大きいな」

「そうですね、民の生活水準に大きく影響していることは確実でしょう」

「そうだな、また今度、デパートへの金銭的支援を検討しておくか」

「ですね」

「さ、色々な人に見られる前に、中に入ってしまいましょう」

「あぁ」


デパートには数多くの商店が連なっていて、飲食階や、遊べるところなど、そこだけで十分充実した時間を過ごすことが出来るようになっている。

昨日分かったが、アスラ様は意外と普通の女性が好むものや楽しむことを同等に感じることが出来るのだ。

きっと、デパートも楽しんでくれるはず!


と思ったのだが、アスラ様はちょくちょく笑顔を見せるものの、昨日よりは元気がなさそうだった。

「魔王様、何か気になることでもあるのですか?」

「な、何故だ」

「いえ、昨日より元気がなさそうに見えたものですから」

「いや、まあ、昨日ははしゃぎすぎてしまったからな」

「自制してるのだ...」

いや、かわよ!!!はしゃぎすぎたことに恥ずかしがってるんだ!いや、可愛い!無理!

おっと、僕の方こそ自制しなければ。

顔に漏れてしまう。

「今は私しか居ません」

「少し気を抜くくらい良いと思いますよ」

「い、いや!でも、んー...」

「ほら、せっかくですし、あそこにある遊具で遊びませんか?」

「こんなこと、普段はなかなか出来ませんよ」

「ア、アレクが言うなら仕方ないな!全く、困った執事だ」

強がってる...可愛い。

「さ、行きましょう!」

「あぁ」


賑やかな遊戯コーナーを歩いていると、アスラ様の目線が、一瞬だけ、クレーンゲーム?とやらに入っていたぬいぐるみに向いた。

アスラ様ファンの僕がそれを見逃すはずがない!

「あのぬいぐるみ、取りませんか?」

「うぇ!?か、勝手にするといい」

「ありがとうございます」

さぁ、対決だ、クレーンゲームとやらよ。

アスラ様の為に燃えている僕を舐めるなよ!


三十回を超えてから、数えるのを辞めた。

何だこの機械は!

「お時間を取りすみません、良ければ、このぬいぐるみを差し上げます」

「え、いや、大丈夫だ」

若干悔しそうに萎む目を、僕の目はちゃんと捉えていた。

「いえ!受け取ってください!お願いします!」

「う、そんなに言うなら仕方ないな、受け取ってやる」

明らかに嬉しそうなアスラ様は、また一際可愛かった。


そうしてデパートをルンルンで歩いていた時、急にデパートが揺れ始め、デパート上部が崩壊した。

アスラ様をかばいながら見ていると、何やら鋼で出来た塊が見えた。

「アレク!これは一体何事だ!」

「恐らく、何者かがこのデパートに巨大な鋼の塊を落としたようです」

「まだ敵の攻撃があるかもしれません、ここを脱出ましょう」


アスラ様を抱え、落ちてゆく瓦礫の上を音速で飛び越えて行く。

風を切り抜ける音が騒がしい中、僕の心はただ一つ。

流れでアスラ様抱えちゃったけど、近すぎてやばい!!!

つい一瞬見惚れてしまい、踏み外しそうになった。

危ない危ない、まずはアスラ様を安全な場所に連れていかなければ。

デパートの外へ出ると、外界は荒らされていないようだった。

ピンポイントでデパートに攻撃してきたのか。

これは、暗殺...

まあいい、犯人を捕まえればわかる事だ。


3

安全な場所にアスラ様を避難させた僕は、衝撃に耐えたデパートの鉄骨を足場に、デパートの上まで登った。

すると、上空にポツリと、一つの物体が見えた。

どうやら、生きているようだ。

遠すぎて、なんの動物かさえ分からない。

立ち止まって空を見上げていると、その動物のようなものから、炎魔法が飛んできた。

あれは動物じゃない!

人間の魔術師だ!

僕が正体を見抜いたことを悟ったのか、その魔術師は、近くまで降りてきた。

「魔王はまだ生きているのか」

「お前に応える義理はない」

「そうか、まあ、魔導国を滅ぼしてしまえば良いだけだ」

「まずはお前から葬ってやろう」

「雑魚風情が、なめるなよ」

数秒の睨み合い。

相手は恐らく、人間陣営の最高戦力、七賢者の一人。

魔法に長けるとされる賢者と、同じく魔法を得意とする僕。

つまり、純粋な実力勝負。

「僕も人間なんです」

「なんだ?命乞いでもする気か?」

口には白い髭を蓄え、丸い眼鏡をかけた、見た目だけなら良い人そうなその魔術師は非常に口が悪かった。「いえ、同じ人間を殺すのは少し気が引けるなという意味です」

そして、僕も口が悪かった。

「貴様だけは許さん、我が最上級魔法にて消し去ってやろう」

僕の言葉にプライドを傷つけられたその魔術師は、初っ端から最上級魔法ジャッジメントの術式を唱え始めた。

唱え始めて数十秒...

あぁ、やばい、遅すぎて待ってられない!

ジャッジメントは神聖魔法の最上級と言っても過言ではない、過言ではないが、それ以上の魔法も多く存在する。

ジャッジメントごときにどれだけ時間をかけているんだこの男は!

僕が、本当の魔法を見せてやる。

男の方に手をかざす。

術式構成は瞬きをする間に終わった。

「ヘルフレイム」

最上級炎魔法。

避けようもないほど燃え盛る業火が、男を覆う。

「これが本当の魔法だ、冥土の土産にするといい」

その言葉を聞いたかどうか定かでないほど、男は一瞬にして燃え尽きた。

ジャッジメントを使える人間は少ない。

確かにこの男は人間の中では強い方なのだろう。

だが、それも圧倒的な力の前では無意味だ。

そう、僕のアスラ様への思いには敵わないのだ!

今僕がしなければならないのは一つのみ!

アスラ様に褒めてもらうことだ!


アスラ様の元に戻る間、僕はニヤつきが止まらなかった。

今更、先程アスラ様を抱えて走り回っていたことを思い出し、嬉しくなっている。

いけないいけない、心を落ち着かせなければ。

そうこうしているうちにアスラ様を避難させた場所に着き、報告を行った。

「そうか、七賢者の一人をやったか」

「よくやってくれた、偉いぞ」

きゅん...それは確かに、僕の胸の中で鳴った音だった。

その感動に浸っていると、アスラ様が空気感を変えるように切り出した。

「だが、今回の件の調査がある、領地調査はしばらくお預けだな」

「え...」

一瞬頭の中が真っ白になり、次の瞬間、先程の魔術師に全ての怒りが向いた。

あのクソ魔術師ー!!!もう一発殴ってやるから生き返ってこい!!!!!

「よし、じゃあ城に戻るぞ〜」

少し渋る僕は、アスラ様に引きずられて城に戻ってゆくのだった。

この作品を見つけて読んで下さり、ありがとうございました!

そう遠くない頃に続編も出そうと思います!

お気に入り登録などをして頂けると、新作をいち早くお伝え出来ますので、是非よろしくお願いします!

下の評価の星5、ブックマーク、暖かい感想など頂けると、作品制作の励みになります!

これからもよろしくお願いします!

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