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初めての復讐代行

 昼間の大通りを気だるそうに歩く男がいる。

今回のターゲット、宇髄敏行うずいとしゆきだ。

宇髄は筋金入りの不良で、これまで何人もの人、特に高齢者から金を奪い取っている。奪われた人の中には通報したら集団で仕返しをすると脅されて助けを求めることもできずに、生活を補填するための借金をする人もいる。そうして最後は借金で首が回らなくなり自殺してしまう。

私は、なるほどこんなやつなら勧善懲悪の制裁も悪くはないな、なんてことを考えながら後頭部の口をバンダナで隠して観察している。


 「それじゃあ、詩音。手はず通りにいくよ」

「うん」


ギルドからの情報によると宇髄は今日、通っている美容院に行くらしい。そこで、美容院で復讐の制裁を行うことになった。手順としては、私がスキマバイトに応募して宇髄の通っている美容院に店員として潜入する。そして宇髄が来たら施術を行い油断したところで制裁を与える。

そんなわけで、私は今、美容院でバイトをしている。

私の手際を見て店長さんが目を丸くした


「詩音ちゃんは器用ねぇ。経験値が少ないとは思えないわ」

「そんな〜私なんてまだまだですよ」


実際、私には美容師の経験なんて無い。だが、後頭部の口の霊がどうすれば良いかを的確に指示してくれるのでうまく出来ている。霊の声は後頭部の口が目に見えない薄い膜で覆われているので私以外には聞こえない。

そうしているうちに宇髄がやって来た。

店長はドアの音だけで判断して指示を出す


「あら、お客さん。詩音ちゃん、手が離せないからお願い」

「分かりました。こちらへどうぞ」

「ち〜す、ヘアの緑染めで」

「かしこまりました」


私は何食わぬ顔で施術を開始する。幸いにも染める施術だからか、宇髄は目をつむっている。

施術を進めていき、ついにその時が来た。

後頭部の口が言う


「さあ、復讐の時間だよ」


ろくろ首のお姉さんが言うには、二口女は妖怪の中でも特異な存在らしい。通常、新たに転生して生まれた妖怪は前任の転生者の記憶を引き継がない。だが、二口女だけは別で後頭部の口として取り憑いている霊が歴代の二口女の記憶を引き継いでいるため、暗殺の知識が豊富らしい。

これが二口女がバレずに復讐を行えると言われる理由の1つ。そしてもう1つがー

私はバンダナを取って髪を伸ばし、髪の毛を2本の腕に変えて背後から宇髄の首を絞める。宇髄が髪の腕をつかみ悶絶する


「うっつつつ・・・ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、がぐぐぐー」


この能力がバレずに復讐を行える理由の2つ目。

髪の毛でできた腕は指紋が残らず、証拠がでない。

殺さないように、でも力を込めて首を絞め上げる。

苦しむ宇髄を見ると手を緩めて許してあげたくなるけど、それはできない。私は私の正義感に従って宇髄に制裁を与える。

やがて宇髄は気絶した。宇髄が指名手配犯で助かった。後は偶然を装い警察に通報するだけだ。


「店長、この人、指名手配犯の宇髄敏行ですよ!」

「あら、本当!気づかなかったわ」

「私、通報しますね」

「お願いするわ」

「もしもし、警察ですか?店に宇髄敏行らしき人がいてーー」


 まもなく警察がやってきて宇髄を連行して行った。


 「店長さん、今日はありがとうございました」

「こちらこそ助かったわ。またいつでもいらっしゃい」

「はい!」


店をあとにしてあの呪文を唱える


「ドロロンパ」

「詩音、お疲れ様。初仕事はどうだった?」

「緊張した。でも、うまくいって良かった」

「なかなか良かったよ。場合によってはもっと細かい指示も出せるからね」

「ありがとう」

「それじゃあ、ギルドに戻って報酬をもらおう」

「うん」

 「詩音ちゃんお疲れ様。うまくいったみたいだね」

「はい、ろくろ首お姉さん」

「これは報酬だよ。受け取っておくれ」


もらった風呂敷を広げると大量のお団子と何かの鍵が入っていた


「お団子がこんなに!でも、私はこんなに食べられないですよ?」


ろくろ首のお姉さんは笑った


「あら、知らなかったのかい?二口女の後頭部の口は妖怪きっての大食いなんだよ。その口の霊も頑張ったんだからご褒美がないとね」

「そうなんですね。良かったねくっちゃん」

「くっちゃん!?」


ろくろ首のお姉さんと後頭部の口が異口同音に驚きの声を上げる

私は目をつむりながら人差し指を立てて説明する


「うん、いつまでも名前なしじゃ会話ができないからね。口の女の子、口ちゃんから変わってくっちゃん。どう?素敵じゃない?」


ろくろ首のお姉さんは吹き出した


「良かったじゃないか素敵な名前をもらえて。もしかしたら歴代の二口女の転生者の中で1番いい子かもしれないよ」

「ありがとう、気に入ったよ。これから僕はくっちゃんだ」

「良かった!ところで、この鍵は?」

「そうだった。くっちゃん、説明してあげな」

「うん。この鍵でとても素敵な場所に入れるんだけど、行ってみない?」

















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