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狙われたカラオケ店〜悪党の隠れ蓑〜

 「本当に良いの?」


心配するくっちゃんをよそに私はリラックスしていた。


「良いの、良いの」


私達は今日、人間界のカラオケ店に来ていた。

目的は全国1位にも選ばれたこの店の団子だ。

妖怪世界のアパートで休んだ私とは対照的にくっちゃんにはこれといった報酬が無かった。そこで私がこの店の団子を食べようと誘ったのだ。


「すみませ〜ん、特選団子2本」

「ありがとう、楽しみだよ」

「良かった。さて、何を歌おうかな〜」


しばらくして団子が運ばれてきた


「特選団子、お待たせです」

「あっ、ありがとうございます」


店員さんはお辞儀をして出ていった


「お団子美味しそう〜」

「ーー今の人」

「えっ?くっちゃんが知っている人?」

「うん。指名手配犯の和田剛わだつよしだ。訪れた店に文句を言ってネットに悪い評判の口コミを書く悪質なクレーマーで、この間戦った染谷とも繋がりがある。ギルドに復讐代行の依頼が来ていた」


私は少しの間、口を開けてぽかんとしてしまった


「なんでそんな人がバレずにカラオケ店で働いているんだろう」

「分からない。でも、もしかしたら店長の弱みを握っているのかも」

「ーー調査してみよう」

「うん」


私は顔が割れているのでくっちゃんの幽体離脱能力で調査することにした。

すると、クレーマーと呼ぶのでは足りない悪質な事態が判明した。

 和田は休憩時間になったのを見計らって店長を呼び出した。


「おい、あれを出せよ」

「はい・・・今月の支払い分です」


店長は札束を和田に渡した


「へへっ、まいど」

「あの・・いつまで続ければーー」

「ああっ?ずっとに決まっているだろ。お前が店の金を盗むところを目撃したの、黙っていてやっているんだからな」

「はい・・・」


そう。調査を進めると、この店の店長がレジからお金を盗むところを和田が目撃していたことが分かった。和田はそれをネタに店長を脅して店員として採用させた。それ以降、和田はこの店を警察から逃げる隠れ蓑として使うと同時に毎月の売り上げの一部を受け取っている。さらに悪質なことにはーー


「まあ、安心しろよ。もうすぐこの店は潰れる」

「そっ、それだけは勘弁を・・・」


和田は足がつかないように、店員として働く時にカラオケ店を転々としている。その際に、今働いている店の悪い評判をネットに書き込んでから次の店へ移っている。そうすることで働いていた店が潰れることを楽しんでいるのだ。


 「くっちゃん、止めよう。店のお金を盗んだ店長さんが悪いとはいえ、このままじゃ罪のない従業員さん達が可愛そう」

「そうだね。僕に考えがある」


お店の中で制裁を行うのは店員さんを選べなくて困難という判断から、くっちゃんの作戦で行くことにした。

作戦としては幸いにも和田が自宅に帰る時に暗い路地を通るためそこで行うことになった。玄関前で待ち伏せも考えたが、2階から突き落とされる危険がある。

背後から近づいていつも通りに首を絞める作戦だ

 作戦当日。予定通りに和田を尾行する


「順調だね」

「うん、このままいけばーー」


だが、いつも通りに制裁が成功すると思っていた私達にアクシデントが起きた


「ーーおい、こそこそ隠れているやつ、出てこい」


和田に気づかれてしまったのだ


「まずい、見つかった!」


妖怪化してからは足音を消す力を得たので気づかれない自信があったのだがー


「なんだ?ガキか・・」

「あっ、怪しいものじゃないです」

「はっ?なに、そういう趣味?」

「そんなんですよ〜」

「変わった奴だーーなんてな。お前、店にいたよな?やれやれ、何を知っちまったんだか・・」


和田は背負っているリュックサックから鉄パイプを取り出した


「武器持ち!?」

「何を知ったかしらねえが、口は塞がないとなぁ」

「詩音、僕の指示に従って」

「うん!」


和田が鉄パイプを振り下ろす


「避けて」


素早く左に動いてかわす


「ジャンプして」


薙ぎ払う鉄パイプを飛んでかわす


「身体能力の高い奴だーー面白おもしれえ」


その後もくっちゃんの指示通りに鉄パイプを次々にかわす


「詩音、腕に向かって足を蹴り上げて」


蹴りが命中して和田が鉄パイプを落とした


「くっそ・・腕がしびれた」

「詩音、今だ!」


バンダナを取り、髪の毛を伸ばす

"さあ、復讐の時間だよ"


「髪が伸びるって・・妖怪か!?現代にいるのか!」


間髪入れずに髪の毛で首を絞める 


「くっぐっ、苦しい・・ちくしょう・・こんなガキに・・」


和田は気を失った


「詩音、お疲れ様」

「びっくりした。くっちゃんがいなかったらやられていたよ」

「くっちゃん、店長はどうしよう?」

「反省しているから良いんじゃない?」

「そうだね」

「詩音、通報して引き渡したら、もう1回カラオケでお団子食べない?」

「良いね!」


こうして私達は路地を後にした




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