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My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第1章 前編 カゴの中でもがく虫
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暗赤色のローブの団員

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


【登場人物】


 ▼採掘場


 [ルト・ウォール]

 19歳の女性。男勝り。髪はボサボサで鬱陶しいのでポニーテールにしている。基本的にタンクトップと作業衣ズボンで過ごしている。


 [サヨ・キヌガサ]

 19歳の女性。おっとりしている。ルトよりは身なりに気をつけている。

 ルトの良き理解者。


 [ジュイス・ブランドー]

 低ランク労働者集団のリーダー。暴力をもって他の労働者を支配している。

 女性を襲ったり、物資を奪ったりと悪行を尽くす。


 ▼国際教団

 [胤減(インゲン)

  ソラル教を信仰する国際教団の教祖。


 [神儡(シンライ)

  胤減(インゲン)の弟子。


 [神途(シント)

  胤減(インゲン)の弟子。鉱山での労働を仕切っている。


 ▼その他

 [薄金髪の青年]

  ルトを度々助ける謎の青年。名前は頑なに言わない。

  明るい性格。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

【お知らせ】

 胸糞系とかダーク系は書いててめちゃ進む。


 追記:ごめんなさい!訂正があります!

    黒ローブの色→暗赤色


    直し損ねてました!


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


 その声は私があてもなく求めていたものだった。

 死のうと言いつつも、私はいつも生にしがみつく。また薄金髪の彼に止めて欲しかった。


「また…何かあったのか…?」


「私にはもう…何も残ってません。親友も、心も、希望も、未来も……全て失いました」

 彼の目は優しく私を見守っている。

「だから…死のうと思って…」


 その目は私を優しく包み込み、中に抑えられた感情を吐き出させた。


「でも……」


 つっかえが取れたように目からは涙がボロボロと溢れた。

「死ぬのはっ……怖いんです…!」


「今の状況は地獄なのに……それでも生きていない状況になるのがたまらなく怖いんです…!」

 私の涙は止まらなかった。一気に噴き出したように悲しみと絶望が私を襲う。

 私は(むせ)び泣きながら、その場に膝から崩れ落ちた。

 

 でも……やはり彼が私を受け止めてくれていた。

「助けてください……」


「悪い……俺達が早く解決しねぇから……」

 彼の手は温かい。彼に触れていると、絶望が希望に少しずつ変わっていく…そんな気持ちにさせられた。


 しかし…


「ウォール!!」

 聞き慣れた男の人の言葉に私は涙を拭って顔を向けた。


 道の先…私の背後から歩いて来る者達。先頭は見慣れた顔、私達の区画のリーダー。

 その後ろを歩いていたのは、ベージュのローブを着た国際教団の団員達。さらにその中には、暗赤色のローブ……国際教団の中でも高い地位を持つ団員もいた。


 私は頭をフル回転させて状況を把握していた。

 

 リーダーはこの薄金髪の青年のことを気にかけていた。

 恐らく教団の上層部からこの青年について調べるように指示を受けていただろう。

 だからこそ前にこの青年について根掘り葉掘り問いかけてきたのだ。


 リーダーは鬼のような形相で勢いよく近づいて来る。彼の左腕は木の棒で固定されて、衣類の切れ端のようなものが巻きつけられていた。

 私がこの青年のことを報告しなかったことで、上層部から罰を受けたのだろう。


「ウォール!! お前っ!! 薄金髪の男のことで知ったことがあれば報告するよう言っただろう!!」

 さらに近づいて来るリーダーの前に青年が立ちはだかると、リーダーを押し返した。


「ご本人だ。なんでも聞けよ」

 威圧感のあるその言葉にリーダーは助けを求めるように後ろに振り返った。


 すると、後ろに立っていた暗赤色ローブの団員がドシドシと荒々しく前に歩み出た。

 その団員の背は高く、恰幅も良かった。顔はフードで隠れておりよく見えない。


「お前、我々を探っているな。何の用だ?」

 低く重たい声。それでいて野獣という表現がぴったりなほど刺々しかった。


「さぁ? 何のことだ? 俺らは観光しに来ただけなんだけど?」

 青年は分かりやすくとぼけている。むしろ挑発しているようだった。

「まぁでも、教団のことを教えてくれるんなら聞いてやってもいいぜ?」


「ふざけるな。誰がお前のような不審者に言うか」


「インゲンが教祖、シンライ、シントがその弟子……この3人が大きく仕切ってる奴らだろ? 殷獣を使って山掘って金儲けして、労働者は使い捨て。ただのヤバい会社じゃねぇか!」


 青年の言葉に恰幅の良い団員は拳を握り込んだ。傍から見てもかなり怒っているのが分かる。

「貴様、胤減(インゲン)様、神儡(シンライ)様、神途(シント)様を馬鹿にするとは良い度胸だ。特に……」


「俺の師、神途(シント)様を侮辱するのは許さん!! あの方は俺の英雄(ヒーロー)だ!! そしてこの星を救う……銀河を救う英雄(ヒーロー)となるお方だ!!」

 団員は咆哮のように怒りの言葉を吐いた。


「俺が知ってるヒーローとは程遠いけどな」

 青年は自身の拳を手のひらで受けると、パチパチと音を立て始めた。


 彼の体からは電気のようなものが発せられている。光を放っていたのはやはり彼の遺伝子能力だった。電撃…の能力だろうか?

「ルト、こっから逃げろ。後で追っかけるから」


「え…? でも、この人数……」


「いいから早く行けって。こう見えても俺、そこそこできるから」

 彼の表情は自信に満ちているが、この人数……流石に相手をできるとは思えない。

 しかも暗赤色ローブの団員もいる。暗赤色ローブの団員は皆強力な遺伝子能力持ちで力によって支配していると噂の絶えない者達だ。


「ほら行け!」


「う、うん…」

 私は彼の言葉に押されるようにこの場から逃げだした。




▼▼▼



「お前誰か知らんが、俺もいるのにこの人数を一人で相手できると思ってるのか?」

 暗赤色のローブの団員は鼻で嗤った。それもそうだろう。この星で仕切っているのは国際教団。彼はその団員の中でも能力、位ともに高く、彼らに敵う者どころか逆らう者すらいなかった。

 そのため彼はこのように傲慢な態度だったのだ。


「お前こそ誰か知らねぇけど、誰だよ」


「俺は神途(シント)様が弟子の1人。モウラ・ムケシュ!! お前も名乗れ!!」


「やだよ」


「きっさまぁ!!!」

 ムケシュは白目を剥き、血管を浮かび上がらせて怒りを露わにした。


「やれ!! お前ら!! この不遜な輩を血祭りにあげろ!」

 彼の指示と共に、下級団員達が光を放った。


「なんだ!?」

 ムケシュが下級団員の方に振り向くと、団員たちは痙攣しながら倒れていた。


 すると薄金髪の青年がムケシュに問いかけた。彼の体からは電撃の糸がパチパチと発せられている。

「この人数を1人で相手に……何だっけか?」


 ムケシュはさらに怒りのボルテージを上げると、両拳を音を立てて打ち付けた。

「お前!! 舐めよって!! 俺の能力は……!!」

 

 その瞬間に発せられた大きな閃光。一瞬にしてムケシュ視界を奪った。

「目くらましか!? こんな小細工っ!!」


 ムケシュが間合いを取りながら目を開けると、目の前から青年は消えていた。


「くそっ……神途(シント)様に報告せねば……!」



To be continued.....

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