表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第2章 中編 研究所の深部
71/83

マリア・ヴァージニア

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


【登場人物】

 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


 [バリス・スピア]

 元軍医で、毒の能力を持つ医者。

 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。

 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。


 [水王(スオウ) 涙流華(ルルカ)

 元名家・水王(スオウ)家の侍で、水の遺伝子能力者。

 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。


 [ラルト・ローズ]

 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。

 口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。

 政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。


 [レモン・ポンポン]

 褐色高身長、彫の深い濃い顔にアフロがトレンドマークの伝説のエンターテイナー。

 娯星テロ事件の後、プラズマと涙流華に強制的に同行させられる。ガタイの割にビビり。



殷獣(いんじゅう)討伐部隊


[アドルフ・グスタフ]

 政府直轄機関、通称十闘士(じゅっとうし)の一員。

 今回の殷獣討伐作戦の統括指揮を任されている。


(ウェイ) 月華(ユエホァ)

 政府直轄機関、通称十闘士(じゅっとうし)の一員。


Master(マスター) LIGHT(ライト)

 本名はレクス・テイル。元大元帥。


[アイリス・ローン]

 ピンク髪の政府軍中将。少女のような風体だが34歳。


[ジョン・マイヤード]

 政府軍少将。若い将校でラルトの元部下。


[ストリーム・アクアレギア]

 名家アクアレギア家からの討伐作戦参加者。

 黒いローブを着ておりフードをかぶって素顔を見せようとしない。テンションが高い。


四暮(シボ)(ダン)

 大道芸人集団を率いる男。

 金髪アフロにサングラスをかけている。

 テンションが高い。


▼知能型殷獣

[アリシア]

 赤黒い肌をした人間の少女のような姿の知能型殷獣。

 人との争いを望んでおらず、停戦のため動く。


[“見えない”殷獣]

 トカゲのような四足歩行の殷獣。声は高く口調は女性寄り。透明化する能力を持つ。


[“速い”殷獣]

 鳥型殷獣。風の能力を持つ。


[“硬い”殷獣]

 ジパニカビートル系の昆虫型殷獣。ストリーム・アクアレギアに一撃で葬り去られた。


▼危険人物

[マリア・ヴァージニア]

 前回の殷獣調査で行方不明となった元政府軍少将。

 殷獣汚染により、凶暴化している可能性がある。


[元四帝(よんてい)

 一神(いっしん)四帝(よんてい)から離反した元四帝の一人、“女帝”。


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

挿絵(By みてみん)



「私を始末しに来たのがテイルさんで運が良かったです」


「あなたの能力も、戦闘スタイルも知っていますから…!」


「待て…! 俺はお前を討つつもりは…」


轟唱(ごうしょう)黒瑠璃(フォトンベール)!」

 マリアは轟唱を発動させて目元の辺りに黒いバイザーのようなものを作り出した。


 さらに彼女は地に手をつくと、畳み掛けるように技を繰り出す。

「轟唱・岩鉄箱(がんてつそう)!」

 鉄の混ざった岩壁が箱のように彼らを囲んだ。


 マリアは徹底的にテイルの能力、“光”を封じる策を講じたのだ。


 暗闇に包まれたテイルはマリアに呼びかけた。

「話し合う間は貰えないようだな?」


「反撃の間も与えませんよ」

 次にマリアは天に向けて両手を広げた。

「轟唱・打雨うちあめ

 岩でできた箱の内側から雨が降り始める。


「光のないこの場所で、あなたの得意な煉術も使えず光は生み出せない」


「あなたの視界は真っ暗。私は殷獣の力であなたの位置が気配でわかる」


「詰みですよ? テイルさん」

 暗闇の中、マリアは不敵に微笑んでいる。


「私を見捨てたこと…後悔しなさい!」

 マリアは素早くテイルの背後へと回ると、鋭い打撃を繰り出した。


AGIS(エイジス)光の衝撃波(ヴァロン・ソキアルト)


 テイルがAGISを発動させるとともに、彼の体から四方八方に光が広がった。


 そしてその光がマリアに接触した途端、彼女は幾多もの爆発に見舞われ、大きく吹き飛び、再度光に飲まれたマリはまたも爆発した。


 数秒すると光はテイルから発せられなくなり、暗闇へと戻った。


 立ち上がるマリア。

 彼女にとっては大きな誤算だった。

 テイルの能力は光を吸収して放つもの。彼の通常の能力を封じることに成功したため、AGISも同様に光がなければ発動できないと踏んでいたのだが…


「今まで吸収して溜め込んだものも使えるというわけね…!」


「知らなくても無理はない。今まで暗闇に放り込まれて遺伝子能力を封じられるだけじゃなく、煉術の電撃も炎までも封じられたことはなかったからな」


「今のお前に逃げ場はないぞ。一旦矛を納めろ。ヴァージニア」

 テイルの言葉にマリアは奥歯を噛み締めた。


「なら! あなたの中にある光が切れるまでの我慢比べといきましょうか!」

 彼女は胸の前で両手を握ると、祈るように目を閉じる。そして静かに呟いた。


「AGIS。信じる者は救われるフェイス・セイヴィーズ


 殷獣化している彼女のAGISはいわゆる殷性(いんせい)AGISと呼ばれるものだった。

 普通のAGISと比べて力の密度が高く、能力の上昇幅も大きい。


 彼女のAGISは段階的な身体強化の中でも、特に防御力を著しく上昇させるもの。


「俺のAGISを受け切ろうというわけか…!」

 マリアが飛びかかると同時に、テイルは光を放った。

 マリアを包む幾重もの爆発。

 テイルは光を消しては放ち、を繰り返している。


 爆発音がどんどんとテイルへと近づいていくが、止まる気配はない。

「私は…絶対に……セシリアの仇を…」


 あと数メートルまで迫ったマリアに対し、テイルは全ての光を放った。


 これまでで一番大きな爆発音が響く。


 爆発音がこだまする暗闇の中、テイルはマリアの拳を手で受け止めていた。


 あれだけの爆発に見舞われてもなお、マリアは鋭い眼光でテイルを見つめている。

 そしてテイルも暗闇であるにも関わらず、それに答えるかのように真っ直ぐ彼女を見ている。


 一瞬流れる静寂。

 先に言葉を発したのはテイルだった。

「なぜAGRY(アグリー)を使わなかった?」


 その問いに彼女は鼻で笑った。

「この状態でAGRYを使うと…殷獣の力に飲まれるのが分かるから…ですよ」


「そちらこそ…なぜAGRYを使わなかったんですか…? あと少しであなたを打ち抜いていましたよ…?」


 その問いに対する答えはない。


「手加減ですか…私はあなたを殺そうとしたんですよ…? テイルさん」


 テイルは包み込んだ彼女の手をゆっくりと下げた。


「今更来て…今更こんなことを言っても信じてもらえないだろうが…」


「俺はお前を探しに来た…救うために…!」


 テイルは彼女の拳を優しく握った。

「遅くなってすまなかった」


 再度流れる静寂。

 彼女は何かを誤魔化すように咳払いをすると、震えた声で話し始めた。


「遅いですよっ…! 遅いから私…殷獣になっちゃったんですよ…?」


「すまない……遅くなったが、今から君の話を聞いてもいいか…?」


「はい……」


 するとテイルは彼女とは逆方向を向き、座りこんだ。

「この岩の箱を解除したら軍服を羽織れ。それまでここで目を瞑っている」


「…信じてますよ」

 マリアは岩の壁を解除すると、レクスの横を通り過ぎた。

 そして軍服の上衣を取ると、それを羽織る。


「テイルさん、拠点の中で待ってます」


 テイルはゆっくりと目を開けると、立ち上がる。

「いててっ…懺悔するにはこれくらいじゃ足りないな」

 腹部を押さえながら立ち上がると、彼女の後を追って拠点へと向かった。


To be continued.....

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ