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My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第2章 中編 研究所の深部
64/83

廃棄場

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【登場人物】

 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


 [バリス・スピア]

 元軍医で、毒の能力を持つ医者。

 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。

 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。


 [水王(スオウ) 涙流華(ルルカ)

 元名家・水王(スオウ)家の侍で、水の遺伝子能力者。

 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。


 [ラルト・ローズ]

 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。

 口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。

 政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。


 [レモン・ポンポン]

 褐色高身長、彫の深い濃い顔にアフロがトレンドマークの伝説のエンターテイナー。

 娯星テロ事件の後、プラズマと涙流華に強制的に同行させられる。ガタイの割にビビり。



殷獣(いんじゅう)討伐部隊


[アドルフ・グスタフ]

 政府直轄機関、通称十闘士(じゅっとうし)の一員。

 今回の殷獣討伐作戦の統括指揮を任されている。


(ウェイ) 月華(ユエホァ)

 政府直轄機関、通称十闘士(じゅっとうし)の一員。


Master(マスター) LIGHT(ライト)

 本名はレクス・テイル。元大元帥。


[アイリス・ローン]

 ピンク髪の政府軍中将。少女のような風体だが34歳。


[ジョン・マイヤード]

 政府軍少将。若い将校でラルトの元部下。


[ストリーム・アクアレギア]

 名家アクアレギア家からの討伐作戦参加者。

 黒いローブを着ておりフードをかぶって素顔を見せようとしない。テンションが高い。


四暮(シボ)(ダン)

 大道芸人集団を率いる男。

 金髪アフロにサングラスをかけている。

 テンションが高い。


▼知能型殷獣

[アリシア]

 赤黒い肌をした人間の少女のような姿の知能型殷獣。

 人との争いを望んでおらず、停戦のため動く。


[“見えない”殷獣]

 トカゲのような四足歩行の殷獣。声は高く口調は女性寄り。透明化する能力を持つ。


[“速い”殷獣]

 鳥型殷獣。風の能力を持つ。


[“硬い”殷獣]

 ジパニカビートル系の昆虫型殷獣。ストリーム・アクアレギアに一撃で葬り去られた。


▼危険人物

[マリア・ヴァージニア]

 前回の殷獣調査で行方不明となった元政府軍少将。

 殷獣汚染により、凶暴化している可能性がある。


[元四帝(よんてい)

 一神(いっしん)四帝(よんてい)から離反した元四帝の一人、“女帝”。


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


「でっけぇ!!!」

 20メートルはあるコンクリート製の壁。

 それを見上げ、プラズマは感嘆の声を漏らした。


 これが殷獣研究所を囲む壁。かなり厳重に守られていることが分かる。見渡す限り壁で、数十メートル先は暗闇だった。


「アリシア、見る限り壁だけど入口どこ?」

 プラズマはアリシアに問うた。


「真反対だよ」

 その答えにプラズマの顔は青くなる。


「嘘だろ…? どんだけ歩かなきゃいけねぇんだよ……」


「まぁ普通に行くなら全力で走っても40分はかかるかな? 私が本気で走っても30分はかかるもん」


「また走んのかよ…」

 プラズマは絶望したように肩を落とした。


「普通に行くなら…だよ?」

 アリシアのその言葉にプラズマは勢いよく顔を上げる。


「もう少し右に進むと、秘密の抜け道があるから」

 軽やかに駆けていくアリシアを追いかけること約3分。荒廃したコンクリートの道に金属製の床扉が現れた。


「ここだよ。これが研究所への近道」


 アリシアは目線を床扉に向けてそう説明した。

 床扉は錆びついており、心なしかカビ臭さが漂ってきている。


「っしゃぁ! とっとといこうぜ!」

 息巻いて床扉の取手を引いたプラズマだったが、びくともしなかった。

 それどころかバランスを大きく崩し、尻餅をついてしまう。


「プラズマ、貸して?」

 アリシアは細い両手で取っ手を掴むと、軽々床扉を()()()()()()


「うそだろ!? なんかコツでもあんのか!?」


 アリシアは外見で言うと10歳前後。手足は細く、顔も幼い。どこからどう見てもか弱い少女だった。

 そのためプラズマが驚くのも無理はなかった。


「コツなんてないよ。ただ引っ張るだけだもん」

 無邪気な笑顔でそう告げるアリシア。

 なぜ開けられないのかが不思議だと言わんばかりだ。


「行こう、プラズマ!」

 アリシアは梯子を伝って穴の奥へと降りていく。


 約2分ほど降りていくと、自動で電気が点灯し、地面が見えてくる。


 アリシアが先に地面に降り、次いでプラズマがジャンプして着地した。

 すると着地とともに大量の小枝が折れるような音が響く。


「これ…」

 梯子を降りている時はアリシアで見えなかったが、地面は白い小枝で覆い尽くされていた。


 プラズマはその白い小枝に目を凝らす。

「骨か…? 人間じゃなないのも混ざってんのか?」


「多分だけど、研究されてた殷獣がここから逃げようとしたんじゃないかな…? でも梯子の下ににたくさんの骨があるってことは…」

 言いづらそうに口をつぐんだアリシアに代わり、プラズマが続けた。


「逃がしてもらえなかったってことか」

 アリシアは悲しそうに俯いている。


「アリシアはここに何度も来たことあるのか?」


「うん。何度もってわけじゃないけど、何回かは」


「ここは政府軍の施設なのか?」


「うーん…どうなんだろう…政府軍の施設かは分からないけど、政府軍が関係してるのは確かだよ」


 プラズマは両拳を打ちつけた。

「ラルトのやつとっちめねぇと…!」


「ここから先は()()()()()よ…ここは実験体の廃棄場だから…」


「実験体……」

 その言葉にプラズマは頭を打ちつけられたような衝撃に襲われた。

 吐き気を催し、胸が苦しくなる。そんな負の感情だ。


「プラズマ…大丈夫?」

 アリシアが優しくプラズマに寄り添う。


「実験体って響き…嫌な感じだな…」


「ごめっ…ごめんなさい…そういうつもりで言ったんじゃないの…」

 アリシアは同胞に酷いことを言ってしまったと泣きそうになっている。


「悪い…アリシアの事を言ってるんじゃない…この研究施設の奴らが嫌な感じってことだ」

 プラズマは自身の頬を両手で叩き、気合いを入れた。


「行こう…! ここの闇を暴いてやろうぜ!」


「う、うん…!」

 そう言ってプラズマとアリシアが奥に進み始めた時だった。


 獣のような低い唸り声が響くと同時に、施設のどこかが破壊されたような轟音と揺れが発生した。


「ガァァァァァァァァァァァ!!!」




〜少し前のこと・プラズマベース〜


「遺伝子能力抑制機器をつけといてくれ。今は俺の麻痺毒で動けねぇから安心しな」

 バリスは拠点の兵士にそう指示する。


 バリス、ラルトの目の前には鎖で縛られた知能型の鳥型殷獣が横たわっていた。


ひひゃまら(貴様ら)ほうはいふふほ(後悔するぞ)


 縛られてもなお凄む鳥型殷獣だったが…


「ぶははは! 格好つかねぇな!?」

 バリスとラルトは大爆笑している。


「そんなに笑っちゃだめですよ、相手だって自分を大きく見せたいんですから」

 横からそうたしなめたのは政府軍少将のマイヤードだった。


ひひゃまら(貴様ら)…!!」


 麻痺によって上手く喋れない鳥型殷獣を晒し者にして精神面でも叩き折ろう、というバリスの提案だったのだが、効果はテキメンだ。


「で、殷獣には“中枢となるもの”があるらしいんだが、それは何なんだ? どこにある?」

 バリスは鳥型殷獣に対し、鋭い口調で問い詰める。


ひうはへはいぁろ(言うわけないだろ)…!」


「なんかよくわかんねぇけど、多分否定したな」

 ラルトはそう言いながら殷獣の前まで歩み出た。


「マイヤード、お前情報収集課程は出たか?」


「えぇ、ついこの間行かしてもらいましたよ」


「実戦は?」


「まだありません」

 ラルトとマイヤードのみで進んでいく会話。

 “情報収集課程”という言葉については、元軍医のバリスも知っていた。


 情報収集課程。

 それは政府軍将校や一部兵士にあらゆる情報収集方法を叩き込む教養課程のことだ。


 一口に情報収集と言ってもいろいろな方法がある。

 協力者と接触して情報を得る。

 敵対組織に潜り込み内情を探る。

 栄えた都市星を回り広く情報を拾う。

 得た情報から敵を捕える。


 そして…


「お前の能力は“拷問”には向いてないからな」

 ラルトは深く重たい雰囲気を放ち始めた。


 その冷たい雰囲気にバリスは不安を抱く。

「ラルト、お前……」


「バリス、お前も一応軍に身を置いてたんなら分かるだろ。俺達は聖人じゃねぇ。大義のためなら非情な手もとれる野郎の集まりだ」


「俺の能力は“炎”。じわじわ炙ってくのに丁度いい能力だろ。だが…」


 ラルトは右足に仕込んでいたナイフを取り出すと、マイヤードに示した。


「ほらマイヤード。お前がやれ。少将なんだ、経験しとけ」


 マイヤードはラルトからナイフを手に取ると、冷酷な顔で鳥型殷獣に近づいていく。


「痛ぶるのは苦手なんですけどねぇ。やってみますか」



▼▼▼


 15分にわたって痛ぶられた鳥型殷獣は、血に塗れ、虫の息だった。

「全然根性なかったっすね」


 マイヤードはナイフの血を手拭いで拭いている。

 ラルトはその手を差し出し、そのナイフを受け取った。

「獣なんだ。人間より生存本能が高いんだろ」


 引き出した情報をメモしていたバリスがその内容を改めて読み上げる。

「お前らと他の殷獣を繋ぐ“軸”みたいな存在がいると」


「で、そいつは全ての殷獣に、任意で情報を流したり指示を出したりできると」


「その“軸”はここから北の方角にある研究所跡にいると」


「ってことだな」

 バリスは鳥型殷獣にそう尋ねるが反応はない。


「つまり、こいつの今の状況もその“軸”にはバレてんのか。それでこいつを救うために雑魚殷獣が向かってくると?」


 マイヤードは渋い表情を浮かべる。

「こんなやつのために助けを向けるんですかね?」


 その問いに答えたのはタバコをふかし始めたラルトだった。

「さぁな。まぁとにかくこいつを生かしとくのは得策じゃねぇ。一応アドルフさんに聞いてみるが」



To be continued.....

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