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My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第1章 前編 カゴの中でもがく虫
4/82

悪意に蝕まれる者

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【登場人物】


 ▼採掘場


 [ルト・ウォール]

 19歳の女性。男勝り。髪はボサボサで鬱陶しいのでポニーテールにしている。基本的にタンクトップと作業衣ズボンで過ごしている。


 [サヨ・キヌガサ]

 19歳の女性。おっとりしている。ルトよりは身なりに気をつけている。

 ルトの良き理解者。


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【お知らせ】

 いつもの通り滑り出しは

好調ではない。


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挿絵(By みてみん)




「来週の“神への祈り”に志願してくれた方がいます。第21区在住のサヨ・キヌガサさんです」


 結局サヨは志願した。

 残りの数日間、サヨは高待遇を受けることとなる。

 教会の地下にある豪華絢爛な居室。そこで好きなものを食べ、飲み、好きなように過ごすことができる。


 確かに慰み者として生涯を終えるよりは幸せなのかもしれない。


「キヌガサさんは20年前にこの星に生まれ……」


 話は頭に入ってこなかった。

 元々知っていたのもあったが、この星の制度、体制について考えていた。


 どうして私達はこんなに苦労しているの?

 どうしてこんなに差があるの?

 産まれた場所が…境遇が悪かった?



 その日私は初めてサヨ以外の人と組んだ。

 32歳の太った男と、35歳の歯のない痩せた男。


 本当に視線が気持ち悪かった。恐怖さえ感じた。

 あいつらは常に私の胸や下半身を見ていた。


 二人が結託して、というような感じではなかったが、それぞれが私を狙っているような目つき。

 

 休憩時間私に隠れて二人とも別々に自分で()()()()()のは知っている。


 今日は私がツルハシを使っていたため襲われることはなかったが、今後はどうかはわからない。


 今までサヨとペアだったため作業中は軽装だったが、これからは考えなければならない。



 早く次のペアが決まって欲しい。

 基本的に男女でペアを組むことはない。

 採鉱中に()()()()()()()からだ。

 まぁもちろん同性同士もあるが。



 次の日は、ジャケットを着て作業を行なった。

 半ば強引に今日も採鉱を名乗り出た。


 私が上を着てきたことに、男たちはあからさまに苛立ちを見せている。


 

 採掘中はよく女性が襲われる。

 別の女性ペアのところに行って、工具で攻撃。縄などで監禁して暴行する。


 襲う者の多くは慰み者を使いたがらない連中だ。




 こいつらも、その可能性がある。

 基本的にここの労働者は採掘終わりに、行列を作って慰み者と戯れる。

 とは言っても戯れとは程遠い独りよがりのものらしいが。


 この2人は昨日の帰りに寄っていなかった。


 注意しなければ。



「食料取ってきて」

 男にそう言われて、私は逃げるように配給所へと向かった。


 配給はパン一つと豆数粒。1人分じゃない。1班でだ。



 食料を持って帰ると、採掘していた洞窟に男たちの姿はなかった。


 それに武器になりそうな工具も……

 

 そのことに気づいた私は慌てて洞窟の外に向けて駆け出したが…


 洞窟の入り口には逆光によって黒く形取られた人影が二つ立っていた。

 ツルハシを手に持って。


「な、なによ…!」

 引いちゃダメ……

 弱気なところを見せたら奴らのいいようにされる…!


 相打ちにでもしてやるって雰囲気を出さなきゃ…!


「なにって、わかるだろ…? 俺たちはもう1ヶ月本物の女としてねぇんだ」

 男たちは鼻息荒く近づいてくる。


「大人しくしてくれんなら、片付けたりはしない…! こう見えても俺たちは…しん、紳士なんだ!」


「けど、暴れたり反抗するならそれなりの対応を取らせてもらう…!」


 こいつらは“1ヶ月も”と言った。

 つまり1ヶ月前にはそういうことをしているということ。


 今もその女性が生きているのならこいつらのことだ。毎晩盛った獣のようにしているはず。

 自分でせずともいいはずだ。


 だがそうじゃない。


 つまりそれは…こいつらは1ヶ月前、同じように女性を襲いそのまま殺した可能性が高い。



 とにかく武器のない今の状況は芳しくない。

 何とかして武器になるものを…


 隙を作らなきゃ…!



「分かった。私口が好きなの。まずはそれから始めてもいい?」


 私はそれらしく口を開いて誘惑してみせた。

 乗ってこい…!


 男たちは気持ち悪い笑みを浮かべて顔を見合わせると、ズボンを下ろし出した。


「他のグループやリーダーに見つかるとマズいから、もっと洞窟の奥でしましょ?」


 そう言って私は奥へと進んでいく。

 洞窟の奥…採掘をしていたところなら、鋭い鉱石が落ちているはず。


 私は採掘場の目の前まで行き着くとそこで、ジャケットを脱いだ。

 そしてタンクトップ一枚となった私は男たちの方に振り返り口を開け、左手を口元に艶かしく当てがった。


 男たちは心底嬉しそうにこちらに向かって歩き始めた。

 

 私は右手で背後の地面を探り、鉱石が落ちていないかを必死に探した。


 けど、見つからない。

 破片のようなものはあるが、それでは武器にはならない。


 このままでは本当に口に入れなければならなくなる…

 なんとか時間を稼がなければ…!


「どちらが先?」


 私の読み通り、男たちはどちらが先に私を楽しむかで揉め始めた。


 その間私は、座っても痛くないようにとジャケットを取って地面を掃く振りをしながら、破片を探した。


 頼む…!


 あって…!


 

 すると私がいたところよりもさらに数歩奥に鋭い鉱石を見つけた。


 数歩の距離だが少し遠い。

 この場で数歩奥に行くのは不自然だ。


 けど、あいつらが揉めている今がチャンス。


 私は意を決して鉱石の破片に飛びついた。


「何をしてるんだお前!」

 男の声が洞窟にこだまする。


 私は咄嗟にタンクトップの背中側を引っ張り、ボディラインを強調させると、ポニーテールを解き長い髪を下ろした。


 そして作業衣のズボンを脱いで下着となり四つん這いになると、口を開けたままゆっくりと男たちに近づいていく。


 これなら暗さと相まって手に持っている鉱石はバレない。


「チッ、仕方ねぇ。お前からでいい…!」

 太った男がそう言うと、その言葉を聞いた痩せた男が前に歩み出る。


 彼が近づくにつれ、腐った生魚のような臭いが鼻をつく。

 そしてそれが極限になったとき…私の目の前に位置したとき、私は顔を近づけると、一呼吸置いて右手に持っていた鉱石の破片を振り上げた。


 チャンスは一瞬。


 痩せた男が悲鳴をあげ、太った男がこっちに寄ってきた瞬間に痩せた男を押してぶつける。


 そして逃げる。



 私は思い切り振り下ろした。



 案の定痩せた男は大声で悲鳴を上げた。

 その時生暖かい液体…血が私の顔にかかったが、気持ち悪いとかそれどころじゃなかった。



 私はすぐに立ち上がって、痩せた男を押す。

 痩せた男は私の作戦通り、寄ってくる太った男に激突した。

 私はさらに手に持っていた鉱石を太った男に投げつける。


 逃げなきゃ!


 男たちの横を走り過ぎ、薄っすら光る外へと急ぐ。


 逃げ…



 そのとき、私の頭は痛みと共に後ろに引っ張られた。


 太った男が私の髪を掴んでいたのだ。


「この野郎!! 舐めやがって!! やりやがったな!!!」


「いやだ!! やだ!! 助けて!! 誰か!!」

 大声を上げるが、助けなんてこない。


 隣の採掘場とは100メートル近く離れている。

 私の声はおろか、男の悲鳴も怒号も聞こえるはずがない。



「騒ぐな! 無駄だ!! この落とし前はつけてもらうからな!!」

 私は太った男に思い切り顔面を張り手をされると、大きく吹っ飛び壁に打ち付けられた。


 

 終わった。

 このまま私は犯されて、殺される。


 もっと警戒すべきだった……



 でもサヨもあと少しで逝くんだ。

 私が先に待っていてあげるのも、いいのかもしれない。



 私はこれから起こることに絶望しないよう、なんとかそう言い聞かせた。





 その時、糸のような光が私の前を通ると、太った男にぶつかり大きな光を放った。



To be continued.....


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