殷獣の星、深星
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【登場人物】
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
[水王 涙流華]
元名家・水王家の侍で、水の遺伝子能力者。
プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。
[ラルト・ローズ]
白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。
口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。
政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。
[レモン・ポンポン]
褐色高身長、彫の深い濃い顔にアフロがトレンドマークの伝説のエンターテイナー。
娯星テロ事件の後、プラズマと涙流華に強制的に同行させられる。ガタイの割にビビり。
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【お知らせ】
第二部は血生臭い。
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「あっ! 私、魏月華といいます! 私も一応十闘士です!」
「こんな普通の女の子がゲキ強の一人なのか…」
プラズマが疑いの目を月華に向けると、彼女は両手で自身の体を隠した。
「何言ってんだプラズマ。この人は武術名家の魏家だぞ? 涙流華も知ってるだろ?」
ラルトの問いに涙流華は頷いている。
「体術を基本とした戦闘。接近戦に合った煉術。そしてなにより脅威なのが…」
涙流華が説明していると、同じ十闘士の巨漢、アドルフ・グスタフが彼女の話を遮った。
「魏。遊んでないで資料を確認しろ」
楽しそうに話す月華は一瞬にして表情を崩すと、“ぶー”と唇を鳴らしした。
「はーい。すいませーん」
月華はわざとらしく気の抜けた表情を浮かべている。
そんな彼女の空返事にアドルフは怒りを表した。
「魏、お前空返事するな」
「はーい。すいませーん」
~深星~
「暗っ!!」
プラズマは降りるやいなやそう叫んだ。
「周りの物質自体が赤黒いんだ」
ラルトは地面から土を掬い上げてプラズマに示している。
「それに他の星の公転の関係で恒星の光が直に当たらないからな」
そう言って空を見上げるバリス。一年中夜のような深星は、殷獣と戦うには非常に厄介な環境だった。
宇宙船から降りた一行は、血のような色に染まるその星の不気味さに驚いている。
「木や土まで赤黒いなんて……」
まさか本物の血なのでは…?
そう考えたレモンはすでに腰が引けていた。
宇宙船から降りたアドルフはそのまま先頭へと歩みでた。
「では各方面でブースを建設してくれ。何かあれば報告を」
オール大元帥はこの作戦の指揮を取る立場だったが、研星で待機して指示を出すことになっていたため、現場での指揮官はアドルフだった。
アドルフの指示で、各部隊長を先頭にそれぞれの方向へと進んでいく。
そして捜査隊もプラズマを先頭に自分達の管轄へと向かうため、政府軍の輸送機に乗り込んだ。
「俺たちは南だ。行こう」
そうして輸送機は不気味な森の中へと入っていった。
出発から約50分。
後数分で目的地に着くが殷獣と出くわすこともなく、今のところ順調だ。
「不気味なほど何も出てこないな」
バリスは独り呟くと、プラズマが答えた。
「いいじゃねぇか。ベースにはもってこいだな」
「あれを見ろ」
涙流華が指差す方向には、開けた土地の真ん中に木製の建物跡のような残骸があった。
「ありゃ前の調査作戦の残りだな。オールさんがまだ大元帥になる前の話だが」
ラルトが説明した通り、4年前に行われた殷獣調査作戦時の拠点の残骸だった。
一行は輸送機から降りると辺りを観察する。
森に囲まれたその開けた土地。その中心に建物があった。
簡易的な木製の骨組みのみのその建物には、以前の作戦で使われたテントがボロボロになって引っかかっている。
「ここが俺たちのベースだ。2班に分かれて、1班はブース建設、もう1班は警戒ってなってるから」
プラズマがそう言うとラルトが警戒を買って出た。
「わかった、警戒は俺とこのクソ侍だけで十分だ。お前らと兵士はブース建設を進めてくれ」
いつもの如くラルトは涙流華から刀の柄で腹を突かれる。
そして涙流華は森の方へと歩みを進めた。
「わかった、警戒頼むぜ。何かあればホログラムで座標を伝えてくれ」
薄暗い森の中を涙流華とラルトは歩いていた。
赤黒い土。黒い幹に赤黒い葉。
まるで血を養分としているようだった。
「おい、ラルト。なぜお前が私と警戒なのだ。さては私と一緒にいたいのか、このむっつりめ」
早口でそう言いながら先を歩く涙流華。
一向に振り向く気配はない。
「てめえ燃やすぞ……」
一瞬怒りが頂点に達しそうになったが、それを通り越して呆れに変わる。
「お前は絶対に自分から警戒に名乗り出るようなバカだから俺が付い……」
ラルトの視界の右側で一瞬何かが反射したように光る。
その瞬間ラルトは前を歩く涙流華に駆け寄ると、ダイブするように彼女の背中を押した。
彼女は前のめりに倒れると地に伏した。
「ラル…」
彼女がラルトを呼ぼうとした時、左後方から木々が倒れる轟音が響く。
ラルトも涙流華も何が起きたか分からなかった。
2人は素早く立ち上がり、周囲を警戒した。
ラルトは右頬から生暖かい液体が流れているのを感じとる。
「ラルト!」
血を流すラルトを見た涙流華が駆け寄った。
「何か飛んできやがった…途轍もない速さの何かが……!」
To be continued.....




