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My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第2章 前編 殷獣調査・討伐作戦
36/83

作戦前夜


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【登場人物】

 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


 [バリス・スピア]

 元軍医で、毒の能力を持つ医者。

 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。

 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。


 [水王(スオウ) 涙流華(ルルカ)

 元名家・水王(スオウ)家の侍で、水の遺伝子能力者。

 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。


 [ラルト・ローズ]

 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。

 口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。

 政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。


 [レモン・ポンポン]

 褐色高身長、彫の深い濃い顔にアフロがトレンドマークの伝説のエンターテイナー。

 娯星テロ事件の後、プラズマと涙流華に強制的に同行させられる。ガタイの割にビビり。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

【お知らせ】

 ペースいい感じ。


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挿絵(By みてみん)




~宇宙港前研星立ホテル・最上階レストラン

   ルミナシオン・ドゥ・ラ・リュヌ~


 

 約20人は座れる豪勢な長テーブル。

 そのど真ん中に捜査隊の一行が座っていた。


「お前涙流華(ルルカ)! それ俺が頼んだやつだろ!」

 そう諫めるラルトだったが、涙流華はすでにスパゲッティを啜っている。

はまえへも(名前でも)はいていたはか(書いていたのか)?」


「てめぇ…! この食い意地侍が!!」

 涙流華の隣に座るラルトは怒りで拳を震わせた。


 そのやり取りを見ながら、涙流華の反対隣に座るバリス、その向かいに座るレモンはそれぞれの料理を食べている。


「それにしても遅いね、プラズマ。もう2時間経つ…」

 レモンはバリスに向いてそう言った。

 プラズマが部隊長会議に参加して2時間余り。一向に戻ってこないためレモンは心配していたのだ。

「あいつが要らねぇチャチャ入れてなきゃいいが」


 午後4時半ころにレストランに入って早2時間。このホテルが貸し切りだからか客は未だ捜査隊の一行だけだった。


「あいつがちゃんと作戦を俺たちに説明できるか不安だがな」

 バリスはそう言ってフライドチキンを頬張った。


 部隊長に伝えられるのは、殷獣討伐作戦での各ベースの役割と基本的な展開方法。

 恐らく資料もあるのだろうが、それをプラズマが説明できるとは思えない。


 バリスはプラズマが返ってきた後、ラルトと共に資料を読み込まなければと考えていた。


 その時バリスの背後から女性の声が響く。

「お隣いいかしら?」


 彼が振り返ると、そこにはピンク髪の女性軍人が可愛らしくピースをして立っていた。

 その横には若い男性軍人も立っている。


「ラルトさん! やっぱお熱いっすね!」

 ラルトの元部下であったマイヤードは、ラルトと涙流華のやり取りを見て“おめでとうございます”と拍手している。


「マイヤード…! だから違えって言ってんだろ!」


 中将であるアイリス・ローンはバリスの横に、少将のマイヤードはラルトの向かい側に座った。

「ローン中将は部隊長会議に参加しなくていいんすか?」

 バリスはアイリスに一応敬語で尋ねる。


「うちら政府軍は事前に大元帥から聞いてるからね。参加してもしなくてもいいって言われたらしないでしょ?」


 注文を聞きに来た店員にアイリスは“パフェで”と可愛く伝えると、おっさんのように右足を左の太腿に乗せ頬杖をついた。

「でもなんでアンタたちみたいな小さい組織も招集かかったんでしょうね? 名家も来てるし」


「しかも名家ですらない、ただの大道芸人集団にも今回の件がいってるみたいよ。なんでも既に現地入りしてるって」

 アイリスの言葉に反応したのは元エンターテイナーのレモンだった。 

「大道芸人集団!? なんて人たちですか?」


「私もあんまり知らないんだけど、リーダーは“シグレハズミ”とかいう人らしくて、ニホン族なんですって」


「ニホン族の大道芸人……聞いたことがあるような、ないような…」

 レモンは首を傾げている。


「ニホン族ならルルカが知ってるかも知れねぇな。おいルルカ!」

 バリスは、ラルトと言い合っている涙流華を呼んだ。


「なんだ! 今こいつを成敗するので忙しいんだ私は!!」

 彼女はラルトの頬を摘まみながらそう言い返した。


「“シグレハズミ”ってニホン族知らないか? ジパン族と大体おんなじ民族だろ?」


 涙流華は眉間に(しわ)を寄せると、ラルトの頬から手を離した。

「“シグレハズミ”? 聞いたことはないな。シグレ……時雨…葉澄…か?」


時雨(シグレ)家は聞いたことはないが、名前からして女性だろうな」

 同じ系統の種族、ジパン族である涙流華は名前からそう推測した。


「ふぅん…まぁでもこの作戦に呼ばれるくらいだから、ただの大道芸人じゃないでしょうね」


「大道芸って楽しみだな!!」

 そう言ったのは会議を終えたプラズマだった。


「プラズマ、お前ちゃんと聞いて来たんだろうな」

 バリスはジト目で彼を見る。


「まぁ、一応……」

 プラズマは小声でそう答えた。


 その様子を見たマイヤードはラルトに小声で尋ねた。

「先輩、なんであんな何にも考えてなさそうなガキに付き従ってるんですか?」


「ガキって…お前と3つ、4つくらいしか変わらねぇだろ」


「いや、ガキっすよ。それに水王家の次期当主や、レモン・ポンポンまで」

 マイヤードは鼻息荒くプラズマを睨んだ。

 尊敬する先輩にタメ口どころか、従えているのだから面白くなかったのだろう。


 ラルトはそんなマイヤードの心を見透かしたのか、優しくほほ笑んだ。

「確かにプラズマはバカで単純な思考回路だが、なんやかんや俺たちのチームはアイツを中心に回ってる」


「なんだろうな……医星(いせい)でも、央星(おうせい)でも……あいつは周りを巻き込んで何かを変える力を持ってる気がしたんだ」

 ラルトが初めてプラズマに会ったのは医星という医療の星……バリスの出身星だった。

 

 当時医星で医薬品強盗事件が多発していたこともあり、ラルトは政府軍中佐として出向いていた。

 そこで当時はまだ小さな診療所の医師だったバリスと、そこで養生していたプラズマに出会った。


 後で知ったことだったが、その時プラズマは医星に密入星しており、その際何者かに宇宙船を堕とされてバリスの診療所に厄介になっていたのだった。


 そしてラルトがプラズマ達の仲間に加わることとなった央星での事件。

 上級大将のジェイク・デーモンと大将のグラズ・ボルボンという尊敬する上司がヴァンガルド・キルという犯罪者の部下だったことが発覚した。


 今は壊滅状態であるが、当時は政府軍が掃討に力を入れていた犯罪組織、殷生(いんせい)師団。

 

 殷生師団とは、違法である殷獣の力……凶暴性や身体能力上昇などの力を取り入れる技術を用いてMy Gene(万能遺伝子)を求める犯罪者集団だった。


 集団とは言っても、その実は4人の強者から構成されていた。


 その内頭領を含む2人は既に逮捕、1人は死亡、もう1人は現在行方をくらましており、それこそがヴァンガルド・キルという男だった。


 その男と繋がっていた政府軍高官…ラルトの尊敬する上司が離反したこともあり、彼は政府軍を辞職し、プラズマ達と共に銀河を回ることにした。



 なぜプラズマについて行こうと思ったのか…ラルトは改めてその理由を考えた。


「なんていうか…人の心に入り込んでくるんだよな」


 いつもプラズマの能天気さに影響され、楽観的になってしまうことがよくあった。

 重い考えや心境を吹き飛ばしてしまうような…それは彼だけではなく涙流華にも同じ影響が現れていると言っていたことだ。

「いや、あいつの場合は(むしば)むか………?」


「あいつといると不思議なんだ。心の奥底にあいつの楽観的な適当さが植え付けられるというか……」


 その言葉を聞いたマイヤードは若干引いていた。

「やばそうっすね……」


「あぁ、バカになりそうで恐ろしい」


「それにアイツは戦闘面じゃ意外とやるからな。結構戦闘IQ高いんだ。慣れてるっていうか」


「へぇ~。じゃぁ俺の思ってる以上にやるんすね」

 マイヤードは半信半疑でラルトの言葉を聞いている。


「まぁ今回の作戦楽しみにしてろよ。あいつは結構やるぞ。予想だにしないことをしてくるからな」

 ラルトは腕を組むと自信満々にそう宣言した。



「あぁ~~!! アンタなにやってんのよ!!」

 アイリスの怒声が響く。


 はしゃいだプラズマが店員とぶつかり、アイリスの頼んだパフェが地面で逆立ちしていた。


「このバカ電気野郎!!」

 アイリスは泣きながらプラズマの首を絞めている。


「な……? 結構やるだろ……」


To be continued.....

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