神に仇なす者達
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【登場人物】
▼採掘場
［ルト・ウォール］
１９歳の女性。男勝り。髪はボサボサで鬱陶しいのでポニーテールにしている。基本的にタンクトップと作業衣ズボンで過ごしている。
▼国際教団
［胤減］
ソラル教を信仰する国際教団の教祖。
［神儡］
胤減の弟子。
［神途］
胤減の弟子。鉱山での労働を仕切っている。
殷獣を放って自分が討伐するという自作自演でこの星の英雄になろうと画策する。
［サヨ・キヌガサ］
１９歳の女性。ルトと共に過ごしていたが、実は国際教団の高位幹部だった。
▼四帝直轄惑星間遊撃捜査隊
［サンダー・パーマー＝ウラズマリー］
薄金髪の青年。ルトを度々助ける謎の青年。
明るい性格。電撃を操る。
［バリス・スピア］
紫髪で天を衝くようなツンツン頭。
元医者で毒の遺伝子能力を持つ。
［水王 涙流華］
没落した名家、水王家の次期当主となる女性の侍。
青い髪色でポニーテールにしている。性格はキツめ。
水の遺伝子能力者。
［ラルト・ローズ］
没落した名家、ローズ家の出自。元政府軍中佐。
白い長髪に黒のスーツを着ている。炎の遺伝子能力者。
水王涙流華とは犬猿の仲。
［レモン・ポンポン］
濃いピンク色のアフロをした褐色の巨漢。元々は芸能界に身を置いていた。
伝説のエンターテイナーと呼ばれる。体格のわりに超ビビりで戦闘経験もほぼない。
遺伝子能力も発現していない。
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【お知らせ】
一章最終話！
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〜崇神星都市部・国際教団本部前〜
「ご迷惑をかけてすみませんでした。捜査隊の皆さん」
深々と頭を下げる教祖の胤減。
自身の弟子が起こした大量虐殺未遂を止めたのだから、プラズマ達には感謝してもしきれないはずだ。
もし神途の計画が実行されていれば、多くの命が失われるだけでなく、国際教団の名誉や権威は地に堕ちていたことだろう。
今回の件は、高齢により判断力や理解力が低下した胤減にはもう教団を任せることができないと考えた神途が引き起こした。
内部事情はプラズマ達には関係ないが、今後どうなっていくのかは気になるところであった。
「破門だけとは御寛大な処分だな。私ならその場で打首にするが」
我慢できなかったのか、涙流華は胤減を皮肉った。
「人ひとりの命を奪ったところで、何も世界は変わりませんよ」
対する胤減は穏やかに諭そうとするが涙流華はそれにも反論した。
「その１人の積み重ねが世界を変えると思うが」
「個人ではなく、大勢でなければ世界は変わりません。世界とはそういうものなのですよ、お嬢ちゃん」
「貴様……！ 舐めよって……！」
「涙流華！ 抑えろバカ！！」
ラルトが涙流華を羽交い絞めにして押さえるが、彼女は負けじと足をバタバタと動かしている。
暴れて感情を露わにする涙流華を見て、胤減は独言つ。
「水王家のサムライ………あなたは彼女と似ていますね」
「彼女……？」
「そうか、あなたは彼女ではなく彼の系譜でしたね………いや、なんでもありません。忘れてください」
その時、胤減の前に黒ローブの人物が突然何もない空間から現れた。
胤減は驚く様子もなくその人物に声をかけた。
「【斬首の帝王】ですか………」
【斬首の帝王】は一神四帝という銀河統治機関の構成員である四帝に数えられる人物だった。
「一神の命で来た。秩序を乱すな」
【斬首の帝王】と呼ばれる男は、低く威圧感のある声でそう告げた。
「またこのようなことが起こるならお前を潰すぞ」
「私は………平和のため、神の御為に存在しています。私を潰すということは、つまり神に背くということです」
【斬首の帝王】は嘲笑している。
「そんな綺麗事がよく吐けるな。嘲笑を通り越して感服さえするよ」
胤減はポリポリと頭を掻いた。
「ただまぁ、一神がそう仰っているのなら従いましょう」
「それでいい」
【斬首の帝王】はそう言い残すと空間に霧散するように消えていく。
「私もそろそろ……では、また会いましょう。太陽のようなウラズマリー君」
胤減はプラズマに笑顔を浮かべると、再度深々と頭を下げた。
「ロッキン」
そう言い残すと、弟子の神儡を連れて教団本部の中へと入っていった。
すると本部入口の前に立っている教団員数十人が口々に“ロッキン”と呟き始める。
皆の顔を順々に見ていくプラズマ。
「ここ、気味悪いし早く行こうぜ」
皆プラズマの言葉に納得した様に足早に去っていく。
〜政府軍崇神星駐屯所・受付前待合室〜
「やっと帰ってきた」
待合室で紙パックのココアをすする政府軍中将のアイリス。
待ちくたびれたと言わんばかりに伸びをしている。
「ラルトさん！」
ラルトに声をかけたのは、彼の部下だったマイヤードだった。
「おうマイヤード！ 元気してたか！？」
ラルトとマイヤードが盛り上がる中、アイリスはルトを示しながらプラズマに尋ねた。
「この子なんだけど、どうしようかと思ってね。あんた達連れていく？」
「お！ それでもいいぜ！ な！？ いいだろお前ら？」
プラズマは仲間にそう尋ねると皆頷いている。
特に涙流華は嬉しそうに大きく頷いていた。
おそらく女性陣が一人しかいないため、嬉しがっているのだろう。
「ルトもそれでいいか？」
「……ありがとうございます。嬉しいです」
ルトは穏やかな笑顔を浮かべて両手を胸の前で握った。
「でも…私はもう少しここで…一人で頑張ってみます」
予想外の答えにプラズマは少し狼狽えている。
「頑張るったって、あんなところで…」
「一応、あの鉱山には政府の手が入るからまともな労働環境になるはずよ」
アイリスはそう補足した。
「いや、でも…せっかく自由になったんだし…」
「私は今まで自分で生きてきていませんでした。自分の頭で考えて生きてなかった」
「あなたに会って、自分で考えて生きていかなきゃって思ったんです」
ルトの眼差しは力強い。少し前とは違う、自信に満ちた表情だった。
「それでいつかサヨに変わった姿を見せに行きます」
「サヨ・キヌガサは今後どうなるか分からないけど、一応あなた達と一緒に神途を止めたからね。監獄には入らない可能性もある」
アイリスは再度補足している。
「衣笠小夜は全てを償ったら、水王家で引き取ることになっている。父上にも連絡済みだ」
涙流華はサヨと戦った後にそう約束した。
サヨはルトに合わせる顔がないとして、水王家に世話になることになったのだ。
「何ならお前も水王家に来るか？」
涙流華はルトに尋ねる。
「気を遣ってもらってありがとうございます。でも大丈夫です。サヨと一緒にいたら、私また依存しちゃうから」
ルトは涙声になりながらも、頭を下げた。
「いつか、サヨに依存しなくても生きていけるようになったら私から会いに行きます」
「そっか…！ じゃあ、元気でな。ルト」
プラズマの優しい声を聞いて、ルトの目から涙がこぼれ落ちた。
何度も死にたいと思ったこの一週間。
酷い目にも遭ったし、プラズマ以外の男性を怖いと思うほどに精神的に傷ついた。
様々なことが起こり、今までの生活が、友情が、価値観が大きく変わった。
そして大事な存在を再認識し、自分に足りないものにも目を向ける勇気を得ることができた。
彼のおかげで。
彼の名前は神途や他の仲間達が言っていたからすでに知っている。
けれど、どうしても彼の口から聞きたかった。
ルトは涙を拭うと、強い眼差しでプラズマを見つめた。
「あなたのお名前を聞いていいですか？」
「サンダー・パーマー＝ウラズマリー、みんなからはプラズマって呼ばれてる！ よろしくな！」
「プラズマさん！」
「私、いつか恩返しします！ だから生きます！」
ルトはプラズマに向けて右手を出した。
プラズマは優しい表情で彼女に応えるように、握手した。
「できるだけゆっくりでな」
▼▼▼
〜宇宙船内〜
「結局殷獣の情報は得られなかったなあ〜」
ソファに座るプラズマは深くため息をついた。
ラルトはプラズマの背後から両肩に手を置いた。
「まだ分かんねえぞ。ローン中将が神途の取調べ結果をこっそり教えてくれるってよ。それで何かが分かるかもしれねぇ」
するとプラズマの隣に涙流華がドスンと腰を下ろす。
「お前の幼馴染や師匠達なら大丈夫だ。そうだろう？」
「まぁそうだけど…」
「プラズマ、私と踊るかい？」
落ち込むプラズマを励ますためレモンは“Shall we dance?”とキメている。
「お前ひと段落ついたらすぐ踊ろうとすんのやめろよ。うるせぇんだＢＧＭが」
バリスは“しっし”とレモンを追い払う素振りをしている。
「ふぅ…あと２、３日したら違う星に行くかぁ…」
プラズマはそう言ってソファに寝転ぶと、足を涙流華の太ももの上に投げ出した。
「貴様！！ いい度胸だ！」
涙流華は空のコップでプラズマの脛を思い切り叩く。
「痛ってぇぇぇぇぇぇ！！！」
To be continued.....
