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My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第1章 後編 神に仇なす者たち
20/83

レモン・ポンポン

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【登場人物】


 ▼採掘場


 [ルト・ウォール]

 19歳の女性。男勝り。髪はボサボサで鬱陶しいのでポニーテールにしている。基本的にタンクトップと作業衣ズボンで過ごしている。


 ▼国際教団

 [胤減(インゲン)

  ソラル教を信仰する国際教団の教祖。


 [神儡(シンライ)

  胤減(インゲン)の弟子。


 [神途(シント)

  胤減(インゲン)の弟子。鉱山での労働を仕切っている。

  殷獣を放って自分が討伐するという自作自演でこの星の英雄になろうと画策する。


 [サヨ・キヌガサ]

 19歳の女性。ルトと共に過ごしていたが、実は国際教団の高位幹部だった。


 [ジュイス・ブランドー]

 低ランク労働者集団のリーダー。暴力をもって他の労働者を支配している。

 女性を襲ったり、物資を奪ったりと悪行を尽くす。


 [モウラ・ムケシュ]

 背が高く恰幅の良い国際教団の高官。自信家で豪快な性格。


 [ハウラ・ロラン]

 前回の生贄として捧げられたはずの中年女性。実際は死んでおらず、国際教団の一員だった。


 ▼四帝直轄惑星間遊撃捜査隊

 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 薄金髪の青年。ルトを度々助ける謎の青年。

 明るい性格。電撃を操る。


 [バリス・スピア]

 紫髪で天を衝くようなツンツン頭。

 元医者で毒の遺伝子能力を持つ。


 [水王 涙流華]

 没落した名家、水王家の次期当主となる女性の侍。

 青い髪色でポニーテールにしている。性格はキツめ。

 水の遺伝子能力者。


 [ラルト・ローズ]

 没落した名家、ローズ家の出自。元政府軍中佐。

 白い長髪に黒のスーツを着ている。炎の遺伝子能力者。

 水王涙流華とは犬猿の仲。 


 [レモン・ポンポン]

 濃いピンク色のアフロをした褐色の巨漢。元々は芸能界に身を置いていた。

 伝説のエンターテイナーと呼ばれる。体格のわりに超ビビりで戦闘経験もほぼない。

 遺伝子能力も発現していない。

 

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【お知らせ】

 ボディは痛いです。


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挿絵(By みてみん)



「私はエンターテイナーだからね…!」

 レモンは額から血を流しながらもファイティングポーズを取っている。


 その光景を見たモウラはこれ以上ないくらい心躍っていた。

 自分よりも技術的には劣るが、鉄の拳を頭に受けても立っていられるほどのタフさ。荒削りながらも速い反応速度。


 エンターテイナーという二つ名の通り、モウラはレモンとの戦いを楽しんでいた。

 

 モウラはまだ攻撃を受けていないにも関わらず、この戦いに手応えを感じていたのだ。

 自分が負けるかもしれない。そんな気にまでなるくらいだった。

 レモンの言うとおり、彼がヒーローで自分がヒールになったかのような感覚に陥った。

「遺伝子能力使ってもいいんだぜ?」


「私は遺伝子能力は使わない」

 そう言い切るレモンにモウラは興奮の笑みを浮かべた。


 しかし正しくは遺伝子能力を使わないのではなく、使えないのだった。

 幼い頃から芸能一筋で生きてきた彼は、本来なら皆が通う遺伝子能力養成学校に通っていなかったのだ。

 そのため彼はどのように遺伝子能力を使うのか、さらには自分の遺伝子能力すら知らなかった。


「ゾクゾクさせてくれるねぇ! エンターテイナー!!」

 レモンは反応することなくモウラへと間合いを詰めた。


 レモンは両手で顔面をガードしながらモウラの間合いへと入っていく。

 モウラも鉄化した両腕で顔面を守り、どこから攻撃がくるのかを窺っていた。

 しかしレモンは打ち合いの近距離となっても一向に攻撃してこない。

 

 モウラは左ジャブ、右ストレート、左アッパーと細かく繋ぎ、右フックの強打を放った。

 モウラの右フックはレモンの左耳付近にヒットした。

「(捉えた!)」


 しかしレモンはそのままモウラへと突き進む。

「なっ!?」


 レモンはタックルするようにモウラの腰を掴むとそのまま持ち上げた。そして担ぎ上げたまま猛スピードで走る。

「ヤケになったか!?」


 抱えられたモウラは鉄の拳でレモンの顔面を何度も殴打する。

 しかしびくともしないレモンにモウラは嬉しそうに声を上げた。

「効いてないのか!? どれだけ硬いんだ!!」


 そしてレモンはそのままモウラを岩壁へと叩きつけると、すかさず左のボディストレート、右のボディアッパーを放つ。


 強烈な打撃にさすがのモウラも胃液を吹き出した。


 しかしその後なんとか前蹴りを繰り出してレモンを遠ざけその場を回避した。

 十分な間合いをとったモウラは服をめくり、激痛のはしる腹部を確認する。

「おいおい…鉄化してたのにこれかよ…?」


 打撃を受けた彼の腹は赤紫に変色していた。

 これはレモンの打撃が鉄をも打ち抜く威力だということを表していた。


「なんだ…さっきよりも威力上がってんじゃねぇか…? お前も極限の戦いで上がってくるタイプか?」

 なおもモウラは狂気じみた様子で嬉々としている。


神途(シント)様ほどじゃねぇが、お前もヒーローってのは認めてやるよ…!」


「認めてくれてありがたいけど、君のいうヒーローと言われても嬉しくはないね…!」


「なんだと?」


「なぜ君はその神途(シント)さんに付き従うんだ?」


神途(シント)様は、こんな殴り合うしか能のない死にぞこないの俺を拾ってくれた。そして世界を変える役割を与えてくださった。漢ならこの恩に報いるべきだろ」


「それが大勢の人を殺すことになってもかい…?」


「必要な犠牲だ。それ以上の人を助けることができる」


「私にはそうとは思えない。大勢の命を利用して得るカリスマなんて本当のカリスマじゃない」

 レモンはさらに声を強める。

「そんなのはヒーローじゃない」


「なに?」

 モウラの表情は分かりやすく歪んだ。憎悪と殺意が入り混じった表情だった。

 しかしレモンも引くことはなく、堂々とした様子で言い切った。

()()はヒーローの器じゃないって言ったんだ」


神途(シント)様を侮辱するとは……ただで死ねると思うなよ…!」

 怒りとともに全身を黒く染めて鉄化したモウラはレモンに向かって駆けた。

「俺の出せる最高硬度だ!! 風穴開かねえようにせいぜい気張れよ!」


 今まで以上のスピードでレモンの懐へと間合いを詰めるモウラ。途轍もない速さで打撃を繰り出した。

 レモンはというとただひたすら顔面を中心にガードすることしかできなかった。

「オラオラオラ!! 守ってるだけじゃいずれ穴開くぜえ!!?」


 約500キログラムの威力を持つモウラのパンチは確実にレモンの顔面やボディを捉えている。

 しかも鉄の拳で打っているのだからその衝撃は計り知れない。


 連打するモウラはその手を休めることなく、さらに速く鋭くレモンを打ち抜いていく。

 一向に反撃も回避もしないレモン。モウラはレモンがダメージによって動くことができなくなっていると悟り、ガードから攻撃に全振りして連打を続けた。


 何度も手ごたえのあるクリーンヒットを打ち込んだモウラは、鬱憤が晴れていくかのように笑みを浮かべ始めた。


 しかしその時だった。


 両手で顔面をガードしていたレモンが突然体を左に捻る。

 そして目にも止まらぬ速さで左拳をモウラの右わき腹に叩き込んだ。


「ごっはっ……」

 レモンはモウラの体を押し上げるように空中へと殴り飛ばすと、空中に飛ばされたモウラの顔面…鼻付近に左のストレートを打ち込んだ。


 モウラは派手に吹き飛ぶと地面を滑りながら壁にぶち当たる。

 彼は天を仰いだまま大きく咳き込むと血を吹きだした。


 モウラは血にむせながらも呼吸を整えようとしている。

 彼の感触ではあばら骨が折れていた。鉄化したにも関わらず素手の打撃で折られたのだ。


 一瞬の何が起こったのか分からなかったが、レモンの拳によって鉄が打ち抜かれたのだと確信していた。


「いきなり……強い…じゃね……か」

 モウラは声を出すのもやっとという状態だったが、それでも言葉を発した。


「君の拳には…信念がない」

 レモンはいつも稽古をつけてくれている仲間を思い浮かべていた。

 みな信念を持った芯のある打撃を放ってくる。力だけではない。そう思わされるような打撃だ。


 それに比べればモウラの拳は軽かった。ただ殴る。それだけだからだ。

 レモンは最後の一撃に自分の信念を乗せた。


 銀河の人々が安心できるような力強いヒーローになる。

 それが彼の信念だった。


「だからこそ私は耐えることができたし、一撃で君をノックアウトできた」


「何度でも言うよ。神途はヒーロなんかじゃない。今のままじゃ君もヒーローにはなれない」


「私を見ていろ。必ず銀河に名を轟かせるヒーローになる」

 レモンは堂々とした(たたず)まいでそう宣言した。


 宣言する姿を見届けたモウラは、微かに笑みを浮かべて意識を失った。


 その様子を見たレモンはハッと我に返り、腰を抜かす。

「か……勝った……生きてる……」


 そして尻餅をつくと震えた声で力なく言った。

「このレモン・ポンポン……悪には…負けない……」


To be continued.....


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