電撃との再会
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【登場人物】
▼採掘場
[ルト・ウォール]
19歳の女性。男勝り。髪はボサボサで鬱陶しいのでポニーテールにしている。基本的にタンクトップと作業衣ズボンで過ごしている。
▼国際教団
[胤減]
ソラル教を信仰する国際教団の教祖。
[神儡]
胤減の弟子。
[神途]
胤減の弟子。鉱山での労働を仕切っている。
[サヨ・キヌガサ]
19歳の女性。ルトと共に過ごしていたが、実は国際教団の高位幹部だった。
[ジュイス・ブランドー]
低ランク労働者集団のリーダー。暴力をもって他の労働者を支配している。
女性を襲ったり、物資を奪ったりと悪行を尽くす。
▼その他
[薄金髪の青年]
ルトを度々助ける謎の青年。名前は頑なに言わない。
明るい性格。
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【お知らせ】
やっとこさ。
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「サヨ……なんで…」
私は蔦に縛られ地に伏していた。
さっきサヨが言っていた言葉は全て私に重くのしかかった。
サヨは…国際教団だった。私と会う前からずっと。
それにここ10年はそのほとんどが幻覚だったと。
でも何のために私とペアを組んでたのかは分からなかった。
――自分のことばかり
そうかもしれない。私はサヨ、サヨと言いながらも一人になるのが怖かっただけなのかもしれない。自分を一番大事に思っていたのかもしれない。
だからこそ、私は大事にしてきたものを捨ててでも無様にも生にしがみついていたのだろう。
でも……
「サヨを追いかけなきゃ……!」
私はまだサヨに聞きたいことがある。
それを聞きにいかないと。
「どういうことだ?」
光とともに現れたのは薄金髪の青年だった。
「またあなた…?」
「それはこっちのセリフだ。突然レーザーみたいなのが教会から空に向かって上がったし何かと思えば……」
青年は私を縛る蔦を解いてくれている。
「で、サヨってお前の親友だろ?」
「…………えぇ…」
「サヨちゃんを追いかけなきゃってことは、ここにいたんだな? 攫われたのか?」
「いや……サヨは国際教団の一員だった…」
私の返答に彼は目を見開いた。
「まじか……神途の弟子で最後まで分かってなかったのってそのサヨちゃんだったのかよ…」
彼は“しまった”と頭を掻いている。
「ならお前の言う通り追わなきゃな。恐らく神途や他の弟子のところに向かったはずだ」
「お前はここに残っててくれ。俺がこの先に行ってくる」
「私も連れて行って。どうせここにいたって殷獣に襲われる」
「そこまで情報聞いてんのか。でも遺伝子能力も煉術も使えないお前が来たって危ないだけだ」
確かに彼の言う通りだった。私はこの腕輪がある限り遺伝子能力が使えない。そもそも腕輪が無かったとしても遺伝子能力を一度も使ったことのない私では役に立つことはできないだろう。
でも…
「お願いします……! 私も連れて行ってください……もしかしたらサヨは私を大事だなんて思ってなかったのかもしれない…でも私はサヨがやっぱり大事だって感じるから…!」
「だからもう一度サヨと会って話をしたいんです…!」
「分かったよ。でも戦闘になったら離れておくのは約束してくれ」
「分かりました。ありがとうございます…!」
私は立ち上がって彼に頭を下げた。
「とにかく行こう」
青年は私を先導するように奥の扉へと向かう。
扉の奥は長さ10メートルほどの廊下だった。
蝋燭が数本しか立っていないため暗い。
奥には金網の壁のようなものが見える。
扉の前まで辿り着くと、鉄で縁取られた金網製の扉があった。中は何もなく暗闇が広がっていた。
「エレベーターか」
そう言って彼は上向きの矢印のボタンを押した。
おそらくさっきサヨが上がって行ったからないのだろう。
エレベーターを待つ間、私と彼の間には静寂が流れた。
私はずっと気になっていたことを彼に尋ねることにした。
「あなたはなんで国際教団を探ってるんですか?」
「殷獣に繋がってると思うからだ」
彼は少し顔を引き攣らせた。
私は聞くのを少し躊躇ったが、どうしても聞きたい欲が勝ってしまった。
「どうして殷獣を?」
「大事な人を探すために…」
その言葉に私はサヨを思い浮かべた。
「羨ましいです…あなたには大事な人がいて…」
しかしそのサヨは私をずっと騙していた。私の信頼を裏切ったのだ。
「何言ってんだよ! お前もいるだろ!」
「そのサヨってのが大事な人だろ?」
「でも裏切られたし…」
「それでも会いに行くんだろ!?」
彼の目は真っ直ぐだった。その視線はまたも私の負の感情を蝕んだ。
また静寂が流れたところでちょうどエレベーターが到着する。
私は返事をすることなく、足早に乗り込んだ。
彼も乗り込むとホログラムを起動させる。
私達労働者が持っているのとは比べ物にならないほど動きもスムーズであからさまに新式だ。
あまり見るのも悪いと思ったが、何やらメッセージを打っているようだ。
金網戸から外を見るに、エレベーターは斜め上方に移動しているようだった。
教会の位置や方角から考えて、エレベーターは鉱山を登っていっている。
何か触れてはいけないものに近づいている気がして、今更ながら不安が込み上げてくる。
おそらくこの先にあるのは国際教団の闇。色々な憶測が私の頭を駆け巡った。
“神への祈り”は?
胤減様は?
神儡様は?
神途様は?
私の生まれた意味は…?
殷獣に殺された私の両親は?
今まで生きてきた私の全てがひっくり返りそうになっていた。
私が深い闇へと引きづり込まれそうになったとき、エレベーターがガコンと音を立てて止まった。
「着いたな…行くぜ」
ーそれでも会いに行くんだろ!?
考えても仕方がない。サヨにもう一度会って聞きたいことがある。
「はい…!」
エレベーターから出ると、そこは洞窟のようなところだった。
山の中をくり抜いて作った廊下のような空間。両側の上方の壁には数メートル間隔で照明がついている。
眩しくはないが、辺りはよく見えるほどだった。
そして1分ほど歩くと、洞窟のような廊下は終わりを迎える。
「国際教団の奴らがいるかもしれねぇから気をつけろよ」
彼の忠告に、私は拳を握った。
これから何が待ち受けているのだろうか。
良いことではないのは確かだ。
そして私達は大きく開けた空間へと出る。
そこには二種類の色のローブをきた数人の影。
国際教団での最高位が胤減様。土色のローブだ。
次いでその弟子の神儡、神途様。紅色のローブ。
そしてこの2人の弟子たちが暗赤色のローブ。これが位で言うと三番目。
私たちの前には1人の紅色のローブと、4人の暗赤色のローブが立っていた。
そしてその中には…
「サヨ…!」
暗赤色のローブを着たサヨが立っていた。
「ルト。なぜ来たの? あそこで獣に喰われていた方がまだ幾分楽だったというのに」
サヨから発せられたとは思えないほどの冷たさだった。
そしてサヨ達暗赤色のローブ4人の奥に立つ人物。
紅色のローブを着ている。端正な顔立ちに後ろで結んだ黒い髪。
胤減の弟子、神途様だ。
神途様は4人の前へと歩み出ると、低く響く声を発した。
「君はルト・ウォールだな」
「そして…」
神途様は私の隣の青年に顔を向けた。
「サンダー・パーマー=ウラズマリー」
To be continued.....




