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My² Gene〜血を喰らう獣〜  作者: 泥色の卵
第1章 前編 カゴの中でもがく虫
10/83

小夜

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


【登場人物】


 ▼採掘場


 [ルト・ウォール]

 19歳の女性。男勝り。髪はボサボサで鬱陶しいのでポニーテールにしている。基本的にタンクトップと作業衣ズボンで過ごしている。


 [サヨ・キヌガサ]

 19歳の女性。おっとりしている。ルトよりは身なりに気をつけている。

 ルトの良き理解者。


 [ジュイス・ブランドー]

 低ランク労働者集団のリーダー。暴力をもって他の労働者を支配している。

 女性を襲ったり、物資を奪ったりと悪行を尽くす。


 ▼国際教団

 [胤減(インゲン)

  ソラル教を信仰する国際教団の教祖。


 [神儡(シンライ)

  胤減(インゲン)の弟子。


 [神途(シント)

  胤減(インゲン)の弟子。鉱山での労働を仕切っている。


 ▼その他

 [薄金髪の青年]

  ルトを度々助ける謎の青年。名前は頑なに言わない。

  明るい性格。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

【お知らせ】

 R18の内容に及んでしまって書き直す

ことしばしば……


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


「サヨ…! サヨ…!!」

 私は月明りの下をただひたすらに駆けていた。


 さっきブランドーが言っていたこと。

 殷獣(いんじゅう)が労働者を襲って皆殺しにする。国際教団の団員以外は生き残れない。


 サヨは生贄として今教会の地下にいるはず。

 けど国際教団が殷獣を使って労働者を皆殺しにするなら、殷獣を鎮めるための生贄も必要ないということになる。


「早く……! 早くいかなきゃ…!!」

 道から外れて森の中へと入っていく。

 森の中を突っ切ればショートカットできる上に、先に出たブランド―達とも出くわす可能性は低い。




 3、40分は走っただろうか。蜘蛛の巣や草葉に塗れながらも村まであと1分程のところまでたどり着いた。ブランド―達とも出くわさずにここまで来れたのは運が良かった。

「サヨ…サヨ…!!」


 村の入口に入ると、いつもと同じように“慰み者”の小屋に老若男女が列を為していた。

 教会の辺りには珍しく人が少ない。


 私は教会の扉を勢いよく引いて中に入った。


 教会の中は…普段ならいるはずの国際教団の団員が一人もいなかった。

 いるのは数人の労働者のみ。


 扉の開いた音に驚いた労働者たちは私の方を振り向いたが、すぐに祈りを再開した。


 明らかにいつもと違う。

 教会の左奥に設置されている階段の前にも見張りの団員がいない。


 私はその奥の階段へと急いだ。“神への祈り”が生贄に捧げられるまで生活をするのがその階段を下りた先の地下のはずだ。


 長い階段だ。石造りで掃除はされておらず頭上には蜘蛛が糸を張っていた。


 階段を下りていくと遥か下の方に薄っすらと灯りがともっているのが見える。

 さらに階段を下りていくとその灯りが蝋燭(ろうそく)だと分かる。


 そこから奥までずっと蝋燭が置かれていた。最奥には扉のようなものが見える。

「あそこにサヨが……!」


 そして私は最奥の木製の仰々しい扉の前へと辿り着いた。

 私は一つ大きく深呼吸して、扉を両手で押し開けた。

「サヨ! いる!?」


 部屋の中は明るかったが、蝋燭とシャンデリアで照らされていたためか少し不気味な雰囲気だった。

 私は部屋の中を見渡す。すると斜め左前に一つの影が立っていた。


 それは私が求めていたものだった。

「サヨ!!」


 私は嬉しくて、安心して、懐かしくて、すぐに近寄っていった。

「サヨ! いきなりで混乱するかもしれないけど、早く逃げよう!!」

 私はサヨの左手を掴んだ。


「サヨ…?」



「離せ」



 突然私の手は振り払われた。

 私は思いもしていなかったサヨの行動に後退った。


「サヨ…! もう生贄なんて意味がないの! 国際教団の奴らは自分達以外は殺すって…!」


 サヨはゆっくりと、不気味に振り返った。

「そう。()()国際教団以外は死んでもらう。悪いわね、ルト」


「え……サヨ……? 何言ってるの……?」


「言葉の通りよ」

 口調はさることながらサヨの目も冷たかった。これまで私が見たことのない、強く、冷酷な眼差しだ。


「どういうことなのサ…」

 私がもう一度サヨに迫ったときだった。


「近寄るな! 縛唱(ばくしょう)!」

 サヨの手から発せられた(ツル)のような植物が私の身体に巻き付いた。

 私は身動きが取れなくなってバランスを崩しその場に倒れてしまった。


「な……なんで……」

 これは煉術(れんじゅつ)の一種……初等部の時に煉術の教科書で見たことがある。

 サヨも一緒に初等部に行っていた。煉術の訓練はしていなかったはずだ。


 なんで……

 どうして……

 一体なにが……


 そんなことが頭の中を支配していた。


「サヨ…どうして能力を……? これ、何かの冗談だよね…?」


 サヨは表情を一切変えず、右手を上にあげ人差し指を立てた。

 

 サヨの人差し指が発光すると同時に細いレーザーのようなものが天井を貫いた。


「これが私の遺伝子能力の一つ。分かったでしょう? 私はあなたとは違うの。ルト」


「サヨ、あなた国際教団……なの?」


「そうよ。もうあなた達は用済みになったから私達以外は排除することにしたの」

 言葉から冷酷さのみが溢れていた。私の知るサヨはいなかった。


「いつから……? いつから国際教団に入ったの…? なんで私に相談してくれなかったの…!」


「あなた何か勘違いしてるみたいだけど、()()()()よ?」


「最初から……?」


「あなたと会ったときからすでに私は国際教団だった。神途(シント)様の御為(おんため)に動いていた」


「じゃぁ…ずっと騙してたの?」

 私はめまいに襲われてた。それに吐き気も。今まで信じていた全てが崩れ落ちた感覚に陥っていた。


「騙してた…か。10歳まではね。でもそれからはあなたもあなたでしょ?」


「どういうこと…?」


「10歳まではあなたとずっと一緒にいた。けど10歳を超えてからは私はたまにしかあなたといなかった」


「いや、え…? どういうことよ? ずっと一緒にいたでしょ?」


「10歳を過ぎてから、あなたの見ていた私の殆どは幻覚よ」

 何を言ってているのか理解できなかった。次々と頭を混乱させることが私を襲う。


「でも気づかなかったでしょ? あなたは自分のことばかり見てたからね。私が幻覚になったってその違和感には気づいてなかった」


「この前だってそう。私の日焼けが不自然に早く抜けてたことにも何の違和感も抱いてなかったでしょ? 足もあんなに早く治ると思う?」


「ルトはいつも自分のことしか見てなかった。自分の殻に籠ってばかりだった」


 サヨは部屋の奥の扉へと歩いていく。

 私は何も言い返せずに、放心状態になって地面に横たわっていた。


「じゃぁね。さよならルト」


 そう言ってサヨは奥の部屋へと消えていった。



To be continued.....

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