現実人生ゲームへの誘い
というわけでここからが一話になります
「あーだりぃ」
今日も今日とてやることもなく一日を過ごすんだろうな。
もう30が近いというのに定職にも就かずだらだらと一日が終わるのを待つ。
高校を中退、その後近場の工場に勤めるが続かず1カ月で退職しあとは日雇いの仕事をたまにするぐらいだ。生活していくために俺は闇金から金を借りて暮らしている。
俺は自分でも屑だと認識している。
「はぁ。簡単に金が入る話でもねえかな」
今は事故物件な上にボロボロのアパートに住んでいる。闇金のやつらが紹介してくれたアパートだ。家賃はいらねえから最低でも一年は住めとのことだ。
事故物件では前の人が1年すんでいたら事故物件として紹介しなくていいらしい。いわゆる不動産のお荷物案件を消費したいのだろう。そうじゃなくてもボロボロのアパートに住みたいとは思わないが...ちなみにここで3軒目である
「居るんでしょ、宮田さん。居留守はいけませんよー」
野太い男の声と共にドンドンドンとドアが叩かれる。俺を訪ねてくるのなんか見なくても誰かわかる。闇金で俺の担当をしている黒田を家に入れる。一緒にスーツの男も入ってくるが部下だろう
「まだ一年たっていませんが移動ですか?」
この連中は一年に一度引っ越しをするときにだけ来る。しかしまだここに移り住んでから4ヶ月しかたっていない。
「いや、移動の話じゃない。確かに別のところに移って貰うかもしれんが。お前、結局金は用意できる見込みはねえよな。」
「ええ、まぁ。日雇いの仕事だけでは400万はとても。」
「アホゥ。利子があるからそれ以上だ。だがお前には返せる見込みがない。うちとしても仕方ないねで済ませていい話じゃねえのよ。そこで話がある。お前の借金をチャラにしてもいい。」
「え、ほんとですか。」
「だがあくまで俺たちがお前に貸している金がなくなるっていうだけだ」
「それはどういう?」
「簡単に言えば借金を肩代わりするお人が現れたって話だ、いいかどうかはお前が決めろ。相手はその代わり参加してほしい物があるらしい」
「その参加してほしいものとは?」
「そこまでは知らん。本人に聞くんだな。」
そういうとスーツの男ズイッと前に出てくる
「お話は簡潔ですがその通りです。宮田様が抱えている400万の借金さらに利息の76万、全額こちらで負担しても構いませんが条件が一つあります」
「それがさっき黒田さんが言ってた参加してほしいものですか。」
「はい、しかし部外者に話すつもりはありませんので今決めてもらえますか。ちなみに参加し、クリアする大金が手に入りますよ。それこそ遊んで暮らせるような。やるか、やらないか、今決めていただきたい。」
「・・・黒田さん、どう思います?」
「なんで俺に聞くんだ。」
「いや、だってここ数年で話をしたの黒田さんだけだし。」
「・・俺からすれば胡散臭いことこの上ないな。だが昔同じようにして参加したやつと会ったことあったんだがいい暮らしをしていたぞ。精神的な寿命は減ったといっていたが何をしていたかは教えてもらえんかったが。」
「当然です。勝利者として報酬は渡しますが守秘義務を約束させていますので洩らした場合はその時点で報酬没収とも伝えていますし」
「だから俺からしたらもうやることもねえしいつ死んでもいいやってやつは参加するんじゃねえのか。まぁ俺としちゃあお前がうなずいて金を返してもらったらそれでいいからな。」
「・・・わかりました。参加します。黒田さんの言うようにどうせ何もないですから」
「おお、それでは詳しい話に移りましょう。その前に黒田様コレを。」
スーツの男は小切手にさらさらと書き手渡す。
「たしかに。ではこちらも。宮田の借用書です。では俺は帰ります。宮田、また会えたら飯でも食いに行こうぜ。なんだかんだ事故物件に気にせず住んでくれる奴もなかなか居ねえからな。」
「黒田さんお世話になりました。」
「とりあえず来月いっぱいまではお前の荷物も置いとくがそのあとに取りに来ても知らんからな。全部捨てるから要るもんは持って出ていけよ。じゃあな」
「分かりました。」
玄関で見送ってから部屋に戻る。さて、どんな話があるのやら
「では話に移りましょう。宮田様にやってほしいのは現実人生ゲームです。」
「人生ゲーム?子供の時に遊んだ」
「遊び用の人生ゲームではありません。『現実』人生ゲームです。例えばマスに止まってそのマスに何か書いてある場合は実際にそれをしてもらいます。」
「ああ、だからリアル」
「そうです。ルールは人生ゲームと同様、ルーレットではなくサイコロになりますがスタート位置からゴールまでは200マスとなっています。勝負方法はほかの参加者様より早くゴールすれば勝ちです。一着は100億が報酬となっています」
「・・100億円?」
「はい、もちろん2着3着でも億という報酬が約束されます。」
「この誓約書を読みサインしていただければ会場にご案内します。」
一緒に持ってきていた鞄から封筒を取り出す。中から一枚の紙を取って見せてくる。
~誓約書~
1 なにがあっても自分の意思で契約したと認識し相手には一切の責はない、全ての責は契約者本人にあることを理解しています。
2 現実人生ゲームの話を聞き理解をしたうえでサインしました。
3 現実人生ゲームのことを外部に話した場合報酬は相手に没収されることに同意します。
4 以上を持って自分の意思でサインいたします。
「簡単ですね。」
「複雑にしても互いに困りますから」
「確かに。・・・マスにあることを実際に行うだけで他は普通の人生ゲームと同じなんですよね。」
「そうですね。ただ、職業は存在しません。警察官のマスやパイロットのマスに止まっても実際にさせるわけにはいきませんからね。そう言ったマスや給料日マスは変えておりますがそれ以外は基本的に同じでしょう。実際に家を買うこともできますよ。すぐに終わらないので拘束期間があります。その間家で寝泊まりしながらゲームに参加したりと。自分の番が来るまでも自由にして構いません。」
「結構すごいんですね。」
「参加者は400人です。これを100人で一グループとし会場を4つ、それぞれのグループで分けさせてもらいます。自分の番が来るまで99人待たないといけませんからね。その間は手持無沙汰となりますから」
「すっげ」
「ご理解いただけたら誓約書にサインをお願いします。これ以上は詳しく話すことができません。」
「・・・最下位の100位になっても報酬はあるのか?」
「50位以下は一律となりますが最下位だろうとあります。数万円ですが。」
「いいだろう、やってやるさ。どうせ失うもんはねえ」
渡されたボールペンでさらさらとサインしていく。西暦、月日もだ。
「ありがとうございます 宮田 詩音様。よろしくお願いします。
早速ですが退居の手続きをお願いできますか?いったとおり拘束期間は長いので」
「わかった。そういえばあんたの名前は?」
「忘れてもらって構いませんが菊地です。」
俺はすぐに黒田に連絡を取った。電気や水道への連絡は自分がやっておくから必要なものを忘れずに持ち出すように言われた。
「荷物は車で運びましょうこちらへ。」
菊地も最初から分かっていたのかスムーズに動いた。もしかしたら俺が参加することを悟っていたのかもしれないな、借金のことを知っていたようだしな。
俺は少ない私服を詰め込んだバッグを車に乗せそのまま乗り込んだ。
どこに連れていかれるかわからないが、さて吉と出るか凶と出るか。