第2話 吹奏楽部の今後を決めます
吹奏楽部の入部は、無事に受理された。
水曜日には、もう活動してもよいと倉田先生から言われた。
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その日の放課後になった。
私は、音楽室へ向かう。
音楽室へ入ると、志穂子の姿があった。
「そこの机に、座って貰えるかしら」
そう志穂子が言い、私は席に着く。
「改めまして、吹奏楽部顧問の鈴木志穂子です。よろしくね」
「私は、1年2組の佐々川華帆と言います。よろしくお願いします」
「さてと。挨拶は済ませたし、今日は吹奏楽部の今後を考えましょうか」
(適当にやる訳にも、いかないよねぇ)
いざ入ってみたのは良いものの、今後についてあまり深く考えていなかった。
「とりあえずは、どこか発表が出来る場が欲しいわね。活動をやっている、という宣伝も兼ねて」
私の表情を読み取った志穂子が、そう言う。
「そうなれば……手っ取り早いのは、文化祭である『野谷祭』ですかね?」
その言葉に、志穂子は頷く。
(そうなれば)
もう一つの問題が出てきた。
二人だけで演奏は十分に出来ない為、『人数合わせ』が必要になる。
その旨を、志穂子に伝える。
「そうね……とりあえず今回はここまでにして、お互いに演奏が出来る人物を確保する必要があるわね」
その言葉に、私は頷いた。
▪▪▪
翌日の休憩時間。
「……なつさん、この通り!」
私は、同級生の樹縞なつさんに頭を下げていた。
中学生の時の同級生であり、中学の部活は吹奏楽部に所属していたのを知っていた。
私が唯一、頼める存在だったのだ。
「あ、頭を上げてください、華帆さん」
慌てた様子で、なつは言う。
「私、なつさんにしか頼めなくて」
頭を少し上げて、申し訳無さそうに私は返す。
その言葉に、なつは考える。
「分かりました、私で良ければ請け負います。ただ、私は茶道同好会に所属しているから、そっちの顧問の先生に話を通してからになるけど、いいかな」
「……うん、ありがとう……!」
その時、授業前の鐘が鳴った。
▫▫▫
授業が終わり、教室の移動をしようと思った時だ。
「……あ、あのぉ」
誰かが、話しかけた。
振り向くと、小柄の子が居る。
「確か、3組の網瀬さん?」
私がそう言うと、彼女は頷く。
彼女は、網瀬智尋という子だ。
3組の子だが、クラス混合の授業でたまに顔を合わす。
「吹奏楽部の話を、ちょっと耳に挟みました。私、趣味で楽器を演奏しています……手助けが出来ると、思いましたので……声を、かけました」
「良いんですか?」
私がそう返すと、智尋は頷く。
「ありがとうございます、網瀬さん……!」
▪▪▪
放課後、私は音楽室へ向かう。
中に入ると、志穂子が生徒二人と話しているのが見えた。
「あら、お疲れさま」
私に気が付いた志穂子が、言う。
「貴女が吹部のぶちょーさんねっ!頼もしそうっ!」
生徒の一人が、そう言ってくる。
「は、はあ」
「ちょっと、ちょっと……みえりん?後輩が困惑しているじゃないの」
もう一人がツッコミを入れる。
「……おっと、ごめんごめん。あたい、3年1組の棚辺みえりと言いますよん。以後よろしくっ!」
みえりが言う。
「で、私はみえりんと同じクラスの水谷羽胡と言います。吹部に新入部員が入ったと聞いて、私達に出来ることが無いかって、先生に聞いていたところです」
羽胡が、続いて言う。
「二人共、元々演奏をやっていた経験があるらしくてね。華帆さんが良ければ、二人に協力をって思っていてね」
志穂子が後ろから言う。
「じ、じゃあ……よろしくお願いします」
二人は頷いた。
「それじゃあ、練習が決まったらまた声をかけるわね」
志穂子が言う。
「ほんじゃ、またお邪魔しますね」
みえりが言い、先輩二人は音楽室を出た。
▫▫▫
「あ、そうだ」
二人を見届けた後、志穂子に演奏を手伝える人物を見つけたと伝える。
「そう、分かったわ。6人ならやれそうね」
志穂子の言葉に、私は頷く。
「さて、今日お話したいのが……部費の件なんだけどね」
どうやら、部費として1万円を配給されるとの事だ。
「この部費は、どうするんですか?」
私は気になって、聞いてみる。
「楽曲の楽譜に充てようと考えているわ。部室にある楽譜は、数年前の物だから……最近の楽曲にした方がと思っていてね」
そう言いつつ、志穂子は楽譜の資料を取り出す。
私は中を覗くと、楽譜は一つ3000円程度で買えるみたいだ。
「楽曲の選別は、部長である華帆さんに頼みたいのよ」
その言葉に、私は目を見開く。
「私で……良いんですか?」
「ええ、貴女の方がこのご時世の音楽を分かっている、そう思っているからね。部費を全部楽譜に充てる事は可能だから、三曲分お願い出来るかしら」
「……は、はいっ!」
「それじゃあ、明日から本格的な練習をしましょうか」
志穂子の言葉に、私は頷いた。