↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛮族女王の情夫《ジゴロ》 第二部【クローディアの章】  作者: 枕崎 純之助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/100

第147話 『黒き魔女の再来』

 砂漠島。

 島の大半が砂と岩で覆《おお》われた実り少なきその島には古来より赤毛に褐色《かっしょく》肌の女たちが住んでいた。

 女ばかりが生まれるその一族は、過酷な環境で生き続けられるように屈強《くっきょう》な肉体を持つようになった。

 わずかに生まれる男児は女たちが子供を増やすための情夫となり、その一生を生殖行為に捧《ささ》げるという。

 それでも男が足りない時は、近くを航行する船を襲って男をさらって来るのだ。


 そうした理由から砂漠島は蛮族《ばんぞく》の島と恐れられるようになった。

 だがある時、1人の女がその島を訪れた時に島の歴史が大きく変わった。

 金色の髪と白い肌、そして翡翠《ひすい》のような緑色の瞳を持つその女の名はダニアと言った。

 ダニアは圧倒的な身体能力で時の族長たちを打ち倒し、その圧倒的なカリスマ性で複数の部族をまとめあげ、島を統一すると初代の長となったのだ。


 当時その島には以前にさらわれて来た男たちがいたが、その中に1人だけ黒髪の男がいた。

 ダニアは美しい顔立ちのその男をいたく気に入り、自分の夫としたのだ。

 やがてダニアは3人の子を生んだ。

 金色の髪の娘と銀色の髪の娘、そして黒髪の息子だ。


 以来、時は流れて砂漠島には多くの赤毛の民と、それを統《す》べる金髪銀髪の長が代々続いていった。

 不思議《ふしぎ》なことに金髪と銀髪で生まれる子は必ず女児だった。

 彼女たちは皆、赤毛の女たちよりも圧倒的に身体能力が高かったが、その反面で短命だった。


 一方、黒髪で生まれる子はほとんどが男児だったのだが、彼らは女たちのように体は強くなかった。

 だが、彼らには他の者にはない不思議な力があったという。

 そのひとつが天候や天災の予知だった。

 そうした力を駆使して黒髪の男児らは一族のために尽くしたという。


 しかし時折、黒髪の女児が生まれることがあった。

 彼女たちは呪いの子と呼ばれ、一族から忌避《きひ》されることが多かった。

 黒髪の女児たちも男児たちと同じく不思議な力を持っていたが、一定の割合で肉体的にも驚《おどろ》くほど強い力を持つ者が生まれて来たのだ。

 そうして生まれた女児は必ずと言っていいほど人格が破綻《はたん》し、体が成長して大人になると同族殺しなどの事件を起こした。


 そうしたことが続き、ダニアの子孫たちは黒髪の子が生まれた時に男児であるとホッと胸を撫《な》で下ろし、女児であると嘆き悲しんだという。

 中には赤子のうちに間引きをしてしまう場合もあった。

 それゆえ、島には徐々に成人する黒髪の女が少なくなっていた。


 だがある時、恐ろしい力を持つ黒髪の女が島の外から現れたのだ。

 黒き魔女と恐れられたその黒髪の女は、時の族長であったダニア直系の金髪の女王を圧倒し、激しい戦いの果てに女王を討ち取った。

 そして黒き魔女は金髪の一族を根絶やしにしようとしたのだ。

 だが、その混乱から助け出され、島を出て大陸へと渡った姉妹がいた。

 殺された時の女王の娘であった金髪のブリジットと銀髪のクローディアだった。

 後の初代ブリジットと初代クローディアである。


 この時から砂漠島には金髪銀髪の統治者がいなくなった。

 黒き魔女は自分の後継者を増やそうと黒髪の子らを幾人も生んだが、彼女の力を受け継ぐ者は1人も現れなかった。

 それどころか病弱で早世してしまう子がほとんどだった。

 後継者のないまま黒き魔女は老いて死に、島はダニアが現れる以前のように赤毛の者たちがいくつもの部族に分裂して争い合う群雄割拠《ぐんゆうかっきょ》の時代となった。


 そしてさらに時は流れ、その砂漠島には黒髪の2人姉妹が生まれていた。

 姉のアビゲイルは黒髪の者たちに受け継がれた不思議な力を持っていたが、分別を弁《わきま》えた良き娘だった。

 だが妹のアメーリアはそうではなかった。

 アメーリアは幼き頃から異常に力が強く、さらには残忍な性格であり、小動物や家畜などを何の理由もなく殺したのだ。

 呪いの子だと恐れられたアメーリアはわずか5歳の頃、両足に重い枷《かせ》をはめられて、海に沈められたのだった。


 だが、彼女は生きていた。

 生きたいという生物としての原始的な本能がアメーリアの力を大きく開花させ、彼女は海面へと浮上した。

 そこから彼女は近くを航行する漁船に拾われ、他の島の小さな漁村で保護された。

 島民が100名ほどしかいない小さな漁村だ。

 そして一度失敗したアメーリアは学習していた。


 自分の力を見せることなく、従順な子を演じて善良な漁村の老夫婦に育てられたのだ。

 彼女が15歳を迎えて成人になる頃に老夫婦は順番に病でこの世を去った。

 その後は生きるために漁村の村長の息子の嫁となったが、ここで彼女はずっと温めていた計画を実行した。

 村人全員が出席した結婚式が開かれた夜に、数人の優秀な船乗り以外の村人全員を殺したのだ。


 地獄のような光景に震える船乗りたちを脅《おど》して船を出させると、アメーリアは一路、砂漠島へと向かった。

 そして生まれ故郷である島に10年ぶりに上陸したのだ。

 それからたった1年でアメーリアは島の有力部族をいくつも支配下に治め、黒き魔女の再来として恐れられた。

 かつて彼女を捨てた者たちは一族郎党、口にするのも憚《はばか》られるほどの残酷な方法で皆殺しにされ、その恐ろしさに島民たちは皆、震え上がった。


 それからアメーリアは1年、2年と時間をかけて島内の部族を吸収していき、恐怖による圧政を強めていく。

 その中でアメーリアの復讐《ふくしゅう》は実の姉であるアビゲイルにも向かった。

 5歳年上であった姉のアビゲイルは、ある族長の妻となり、息子を2人と娘を1人生んでいた。 

 姉の夫は残されたわずかな部族の族長の1人で、アメーリアに対して必死に抵抗をしていた。

 だが、熾烈《しれつ》な戦いの中でアメーリアに殺されてしまった。


 復讐鬼《ふくしゅうき》と化した妹に夫を殺され、さらには息子2人も殺されたアビゲイルは残された末娘を連れて必死の思いで大陸へと逃げたのだった。

 だがアメーリアは姉を許さなかった。

 自分は殺されかけたというのに、その後も安穏《あんのん》と生き続けていた姉に地獄を見せてやりたいと思ったのだ。


 自分を信奉する狂信者たちに島を任せ、アメーリアは数名の部下を伴《ともな》って姉を追った。

 だが、この燃え盛る復讐《ふくしゅう》心を自制出来なかったことによって、彼女は再び失敗してしまう。

 大陸に渡ったアメーリアは数名の部下と共に伝染病にかかり、彼女以外の全員が命を落とした。

 そして自分も死にかけたのだ。


 屈強《くっきょう》な肉体を持つ黒き魔女も未知の病には勝てなかった。

 だが、山間の粗末な小屋で最後の時を迎えようとしていたその時、運命はまたしても彼女の命を繋《つな》いだのだ。

 その小屋の前を通りかかった1人の男が、偶然にも彼女の呻《うめ》き声を聞いた。

 まだ若いのに真っ白な頭髪を持つその男が目の前に現れたその時、瀕死《ひんし》のアメーリアは死神とはこんなにも美しいのかと思ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。