08 候補地
「皆さんのお手元にメモ用紙と筆記用具を配りまーす」
ほいほいっと。
「それでは皆さん、本拠地候補の場所をメモ用紙にお書きくださーい」
書き書きっと。
そこっシジミさん、隣の人を覗かない。
「はーい、それじゃあこの箱にメモ用紙を入れてくださーい」
ほいほいっと。
「それでは、今から引いたメモに書かれている場所が、チームモノカの本拠地候補になりまーす」
「くじ引きの神さまが決めてくれた場所なので、皆さん真剣に考えましょうね」
「それでは!」
もぞもぞっと。
「じゃーん!」
『王都のツァイシャ女王様のお城に住んじゃおう!』
うーん、どうかなコレ。
駄目ですよマクラさん、上目遣いしたって。
確かにツァイシャ女王様には、とってもお世話になってます。
もしお願いしたら、きっと叶えてもらえるでしょうね。
ただね、私って自由が売りの特使勇者なんですよ。
特定の国のお城を本拠地にしちゃうと、
よその国からアレコレ言われて、
結局女王様にもこの国にもご迷惑になっちゃうんですよね。
分かりましたね、マクラさん。
お母さんの微妙な立ち位置、
ちょっとだけ考えてもらえるとうれしいです。
はい、気を取り直して、
引きますよー。
もぞもぞっと。
「じゃじゃーん!」
『アランさんのおうちのそばで、みんなで仲良く暮らしましょう、ですっ!』
うーん、どうかなコレ。
駄目ですよノルシェさん、お目目をうるうるさせたって。
ご存知ですよね、今、アランさんの奥さまが何人かって。
この間結婚のお知らせでお呼ばれされた時に、ハルミスタさんの素敵な新妻照れ笑顔、見ましたよね。
お隣さんが新婚さんでしかも奥さまが四人、ご近所付き合いにどんだけ気をつかうと思いますか。
しばらくは、あちらからお呼ばれされるまで、アランさんたちには近づいちゃ駄目ですよ。
チームモノカから五人目が出ちゃったりしちゃったら、どうするんですか。
はい、気を取り直して、
引きますよー。
もぞもぞっと。
「じゃじゃじゃーん!」
『ミスキさんのおうちのそばで、みんなで仲良く暮らしましょう、なの!』
なるほど、あそこですか。
シジミさん、キメポーズはまだ早いですよ。
まあ、条件的にはなかなかよろしいかと思いますよ。
ミスキさんのところはお庭がとっても広いですから、私たちのおうちを新しく建てる時にもスペース的には充分ですね。
しかも配達魔導車システマの『転送』のおかげで、いざという時の遠隔地での緊急事態への即応性も完璧。
ほとんど同い年の娘さんの集まりになるので、気をつかうこともほぼ無しって、あれ?
これってもしかして、思ってた以上の好条件?
この候補地はひとまず保留、ってことで。
はい、それじゃ次、行きますね。
引きますよー。
もぞもぞっと。
「じゃじゃじゃじゃーん!」
『お父さんのお家のそばで、みんなで仲良く暮らしましょっ!』
うーんなるほど、ロイさんのおそばに……
なんていいますか、私的にはとっても魅惑的なご提案。
癒しの女神にしてハグ名人な素敵お母さん、リノアさん、
完璧メイドと名高い麗しのお姉さま、セシエリアさん、
天才魔導具技師にしてナイスバディネコミミメイド、アリシエラさん、
気高き女騎士にして超絶わがままボディ、ヴァニシアさん、
そしてなにより、渋カッコいい事この上無しの優しいパパ、ロイさん。
お近くに住むことになっちゃったりしちゃったら、
このモノカ、良い意味での乙女のピンチ間違い無し!
「やっぱりやめましょっ」
なんでですかアイネさん、
そんなに私をお母さんとは呼びたくないってか。
「こんな駄目駄目モードのモノカなんて、みんなに見せられないよっ」
ひどいよアイネ。
いくら武人モノカだって、たまには乙女モードで甘えたくなる時だってあるってもんなんだよ。
まあいいでしょう、ここも保留ってことで。
それじゃ、気を取り直して、
引きますよー。
もぞもぞっと。
「じゃじゃじゃじゃじゃーん!」