02 魔法
「今日は魔法について、お勉強しましょう」
今日の先生は、フナエさん。
訓練生時代の私の担当メイドだったササエさんが紹介してくれた、大先輩メイドさんにしてとても素敵なお姉さまです。
王城のメイドだったフナエさんも、今は引退して悠々自適。
快く、先生を引き受けていただけました。
「魔法というのは、とても扱いが難しいものなのです」
「魔法力がとても高い魔法使い系冒険者が、普通の戦士や低ランクな魔物にあっさり負けたりもします」
「強力な魔法を唱えられる魔法使いが、必ずしも優秀な魔法使いとは限らないからです」
「なぜだと思いますか、モノカさん」
どんなに強力な魔法でも、知識や経験が不足していては効果的に使いこなせないから、です。
「はい、良くできました」
「ふたりの魔法使いが全く同じ魔法を使っても、習熟度や才能や体調などで驚くほど効果に差が出るものなのです」
「その効果の揺らぎは、実戦では命とりとなることすらあるのです」
つまり、魔法使いが弱いのでは無く、強い魔法使いになるまで経験を積むのがとても大変だと。
「そう、その通りです」
「そして魔法使いが専門職として選ばれにくい理由が、もうひとつ」
「これも、分かりますね」
魔導具や特殊アイテムなどで効果を代用出来るから、です。
「はい、とても良くできました」
「この世界の技術発展は、魔法効果の人為的再現の進捗と共にあったと言っても、過言ではありません」
「ひとりの魔法使いが生涯をかけて生み出した新魔法が、魔導具職人たちの手であっさりと再現されて、あっという間に世界中に広まってしまう」
「世界の発展のためとはいえ、魔法使いたちにとっては不遇な世の中なのかもしれませんね」
なるほど、剣と魔法の異世界なのに魔法専門の冒険者が少ない理由、ガッテンです。
「それでは、今日はここまで、です」
ありがとうございました、フナエさん。
それで、授業のお礼の件なのですが。
「ササエさんからいろいろと聞いておりますよ」
「こちらへいらして」
このあと、めちゃくちゃハグされました。